2008-12-06

秋の牢獄 : 恒川光太郎

 際限なく繰り返す11月7日に閉じ込められた者たちの苦闘と、それでもそれなりに過ごす日々『秋の牢獄』は、自分の力と思惑の及ばない世界でも、仲間を作り、考え、悲しみ、楽しみを見つけ、感情を揺らめかせる人たちの姿と、それとは全く関係無く自らのルールを刻む異界との対比が痛い。


 日本各地を移動しながら、ある場所に決められた時間にだけ現れる「家」。神域のようなその「家」に取りこまれた青年の話『神家没落』は、その穏やかな青年の「家」での不思議で静かな体験が、グルリと醜悪なものに姿を変える。その瞬間の嫌ぁな味わいがいつまでも皮膚から離れない。


 描いた幻を現実として見せることのできる能力を持った少女・リオの数奇でグロテスクな境遇を語る『幻は夜に成長する』は、額面どおりに読んでも、やるせなさと膨らんでいく恐怖に満ちた話なのだが、“やはりこれは、リオの心の中だけの闇の物語なのではないか?”とも読めて怖ろしい。


 日常を踏み外してしまった先の異世界。その異世界に捕まった人たちの異様な体験、苦悩、恐怖とも高揚感とも言えぬ心のあり様・・・。ストーリーにはまっていくうち、無意識に求め始めているラストでのカタルシス。・・・そいいう意識していなかったところでの欲求はことごとく裏切られる。
 
 恒川光太郎氏の描く異界は、どこか懐かしげな風景を持ち、時に日常からこぼれた者をその内に引き込みながら、その世界の理は人間界とはまったく関係の無いところにある。その「関係の無さ」が、私をざっくりと傷つける。

 その“傷つけられた感じ”が忘れられなくて、私は恒川光太郎の新作を心待ちにする・・・そういうことになりそうだなぁ。

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