2008-10-11

マラケシュ心中 : 中山可穂

 気鋭の女流歌人・緒川絢彦の、恩師の若く美しい妻・小川泉への宿命的な恋と漂白の旅。

 ぼろぼろになりながら恋しい人を求めて、求めて、求めて・・・。中山可穂の小説を読むといつもその切実さにボロボロと泣けてしまうのだけど、やはり今回も・・・桜の樹の下で、絢彦が泉への恋を胸に秘めながら、おずおずと静かな会話を交わすシーンで堪らず涙がこぼれた。

 しかし、その後の絢彦は、これまで読んだ中山作品の主人公たちと少し違う。中山可穂の主人公たちは心身ともにぼろぼろになりながらも、中にはブレない芯があって、自分の行動、状況には自覚的であったように思うのだけど、報われない恋を前にした絢彦の行動はもう支離滅裂で、どこに行ってしまうのだ?とハラハラしてしまう。

 恋によってある意味どんどんスポイルされていく絢彦という人を見ながら、“そんなにまでして他人を必要としなきゃいけないって、どういうことなんだろう?”と考え込んでしまった。

 
 この激しい小説を読んだ直後にはわからなかったこと・・・ それが最近少しだけわかるような気がしてきた。激しすぎる情熱と恋情を内に抱きながらも、ある意味ストイックに自分の行動を律していた王寺ミチル(「猫背の王子」)のような主人公たちは、結局、自分と恋人とを隔てる薄いけれど絶対的な膜のようなものを破れなかった孤独な人だったのだ。孤独の中で恋しい人を求める声が、どうしようもなく私を泣かせたのだ。

 絢彦は決してそんな孤独に甘んじようとしない。自分と恋人とを隔てるものを壊しつくし、恋する人とひとつになろうとする。二人の人間がひとつになろうとしてぶつかりあった跡には、全てが焼き尽くされたあとの白い灰しか残っていない。

 二人の人間が魂までとけあう・・・ 人間には到底不可能なんじゃないかと思える。それが、絢彦が求めた、孤独を打ち消す「愛」なんだろうか。だとしたら、愛って何としんどいものなんだろう・・・。

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