2008-09-17

無意味なものと不気味なもの : 春日武彦

 読後に何ともおさまりの悪い、落ち着かない思いが残る書物がある。読者にそのような感覚を与えることを意図して書かれたものもあるが、著者の意図しないところで、また作品の本質とはずれたところで、割り切れない気持ち悪さ・正体不明の違和感を醸してしまう作品・・・そういう作品・書物に出会ったことのある方は多いと思う。そして後者の方が読者にとっては、よりぼんやりとした不安を掻き立てる、気になる作品になるんじゃないだろうか? どこかグロテスクなものにひっかかってしまう人の心理とはどうしたものなのか?

 本書はそういう「不気味な」ものとして著者に記憶されている15の小説についての、論評というか、覚書。それぞれの作品について想起される極々個人的な体験・記憶が付記されている。記されるエピソードは、題材となる小説とキーワードを共有するものもあれば、にわかには関連性がわからないようなものもある。


 書物を読むというのは個人的な体験なんだなぁ、と改めて思う。作中の「無意味なもの」は読み手の体験や感受性、気分その他諸々と反応して「不気味なもの」に姿を変えるわけだ。もし読み手の中に反応するものがなければ、書物は『紙に印刷されたインクのしみの集積』(奥泉光・いとうせいこう両氏による「文芸漫談―笑うブンガク入門」にそんな表現があったと思う。)以上のものにならない。

 そう思ってみると、ある書物・読書体験と共に想起される個人的な記憶・体験が、第三者から見るとどこでどう結びついているのかわからないものであればあるほど、そこに読み手の個人的世界の豊かさ(または計り知れなさ)を見せつけられるようで興味深い。

 本書や、久世光彦氏の「花迷宮 」「怖い絵」を読むと、“何と豊かに本を読み、絵を見ることが出来る人たちのいることよ”と、自分がしている不毛な読書に肩を落とさずにいられない。

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