2008-08-09

怪しの世界 : 橋本治・夢枕獏・いとうせいこう他

 平成12年8月に国立劇場で行われた公演「新しい伝統芸能-怪しの世界」の台本を収録。

 薩摩琵琶  白鷺譚 上之巻「天守夫人」 下之巻「白峯」
  友吉鶴心 他/橋本治 作

 講談  ものいふ髑髏
  宝井馬琴/夢枕獏 作

 狂言  鏡冠者  野村萬斎 他/いとうせいこう 作

 
 伝統芸能において「新作」を試みることの意味、価値、面白さとは? 明快な答えの見つかりにくい、なかなか結果の出にくい、簡単には報われないことなのかもしれない。その「伝統芸能の新作」に、薩摩琵琶、講談、狂言の芸能者と、現代の人気作家が挑んだ。
  
 各台本の後には、それぞれの演者と作者による対談も収録されている。対談での言葉から察するに(というより、対談の言葉から察するまでもなく)、新作を手がけた作家は伝統芸能に対する愛も敬意も見識も十分にお持ちの、しかもとびぬけてクレバーな方々なのだ。そういう方々が書かれる「新作」なら、無用な懸念も猜疑心も持つことなく、全幅の信頼をもって身を委ねることができる気がする。

 演者と作者の対談部分では、それぞれが伝統芸能に関して持っている考えや想いやノウハウを確認しあうようなやり取りが見えて(その先に、次のステップへとつながっている道もうっすら見えるような気がする)、その刺激的な会話にワクワクするような興奮を覚えると同時に、この公演でのそれぞれの幸せな出会いに、清々しい余韻を感じることができる。

 
 巻頭には、橋本治氏による伝統芸能考「あるいは『風』について」が付されている。

 見る者・聴く者にとって伝統芸能とは、鑑賞し理解するものではなく、自然の中にあるときのように、一体化し、感じるもの。花や月を眺めるように、風を感じるように。

 そして、芸能者は月であり、花であり、風でなければいけない。自ら表現するものではなく、そこに在ることによって、見る者の中にある感情・感覚を呼び起こすものであること・・・それが芸能者の役目。このくだりは、いとうせいこう氏が何かの折に語っておられた「卑しくない表現」ということにも関わってくるのかな、と思う。

 短くて平易な文章で、日本人の身体感覚、感情の流れというものに沿って伝統芸能の見方を示してくれる橋本氏のこの伝統芸能考・・・ついつい、がさつな日常生活の中で忘れている自分の身体感覚をとりもどすためにも、折に触れて読み返したい文章だ。

FC2 Blog Ranking
スポンサーサイト

theme : 読書メモ
genre : 本・雑誌

comment

管理者にだけメッセージを送る

プロフィール

やぶからねこ

Author:やぶからねこ

FC2ブログランキング

FC2ブログランキング

ブログランキング
にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村 漫画ブログへ
カテゴリー
最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
検索フォーム
カレンダー
06 | 2017/07 | 08
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
魂に喰い込んでます
月別アーカイブ
Powered By FC2ブログ

Powered By FC2ブログ
ブログやるならFC2ブログ