2006-09-23

外科室 : 泉鏡花

「麻酔剤(ねむりぐすり)は譫言を謂うと申すから、それが恐くってなりません。」

 坂東玉三郎監督・吉永小百合主演で映画化され、その宣伝文句にも使われていたこの台詞・・・色んな想像を掻き立てられずにはいられない名文句です。

 決して想いを告げることなく心に秘めて、麻酔なしの手術に臨もうとする美しい伯爵夫人と若き医学士の穢れなく崇高な愛 ~ 映画を見たときは、そんな清らかで静かな・・・、印象に残った色でいうなら外科室のシーツの白のイメージ。伯爵夫人を演じた吉永小百合さんが楚々として、物静かで、控えめな女性に見え、そしてやはり年齢を重ねていらっしゃる分、落ち着きをまとっていらっしゃったので、若い外科医を想う情熱はしっかりと理性で封印されているように見えました。

 一方、小説の方の伯爵夫人は落ち着いた清楚な女性というよりも、まだ若さと華やかな美しさを持った情の強いところも見える女性のようです。口にこそ出さないけれど、その胸の情熱は激しく、妥協するところがありません。イメージする色はメスに裂かれた夫人の胸からあふれ出す血の赤。 一度顔を見交わしただけの男性を9年間もその美しさと情熱でからめとり虜にしているとは、プラトニックな愛どころか、たいした妖婦ではないですか。

 私は気高く美しい吉永小百合主演の「外科室」よりも、色気と死の臭いのする小説「外科室」の方が好きです。

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genre : 本・雑誌

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外科室

明治時代、手術を受けなければ命のない貴船伯爵夫人は、麻酔をかけられるとうわ言で秘密を漏らすからと麻酔を拒み、2人だけの秘密を持った仲である青年医・高峰に執刀を依頼する。周囲の者が心配する中、麻酔なしの手術が始まる…。泉鏡花の短編小説を坂東玉三郎が監督を務

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