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2008-08-06

蘆屋家の崩壊 : 津原泰水

 三十路を過ぎて定職にも就かず、何やら酒の周辺をふらふらしている胡乱な男・猿渡は不思議を呼び込む人物らしい。猿渡の行くところ、決まって怪異が口をあけて待っている。

 猿渡と行動を共にする怪奇作家・・・長身を黒衣に包んだ通称「伯爵」 - 時に怪異の謎解き役となるこの人物・・・その風体は“いかにも”な感じがするが、意外にも飄々として軽やかなキャラクター。

 そんな迷コンビ・猿渡と「伯爵」が、行く先々で巻き込まれる世にも奇妙で怖ろしいお話七編。

 トンネル、狐、女、狛犬、甲羅に人の顔を持つ蟹、寄生する虫・・・日常といつの間にかすりかわり展開するホラーな世界は、そこに棲む人の念とからみあって生理的な怖ろしさをかき立てるのだが、その怪異にまみえる猿渡と「伯爵」のキャラクターが醸す可笑みが、どろどろとした怪奇な話に、軽やかでさらりとした感触を残す。

 怖ろしさと軽やかさの絶妙なバランスが、この作品の魅力の一つであろうと思われるが、都市伝説のようなもの、神話、伝承などを織り込んで構築された怪異の世界や、そこに「伯爵」のようなキャラクターをからませてきたことに、作者の技巧が臭う気がしないでもない。幻想・怪奇小説というよりも、「怪異の意匠をちりばめた、軽やかで洒落た知的ゲーム」と感じられてしまう。ちょっと、そのあたりの臭いが鼻について、心から楽しむことはできなかった。

 ・・・とはいっても、互いに無類の豆腐好きで、嬉々として全国豆腐食べ歩きの旅などしてしまう猿渡と「伯爵」のキャラクターが、この作品の味わいになっているのは確かで、この二人が小説界の名コンビの一つであるのは間違いないと思う。

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theme : 読書メモ
genre : 本・雑誌

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