2008-07-26

物語消費論-「ビックリマン」の神話学- : 大塚英志

物語消費論-「ビックリマン」の神話学- / 大塚英志

 「物」の持つ使用価値を消費し尽した社会にあって、人は「物」の背後にある「物語」を消費し始めた。

 『複製される物語』『消費される物語』『再生する物語』の各章にまとめられた、「物語消費」の周辺を語るエッセイ集。

 ここに収録されたエッセイが発表されたのは、今から20年程前のことで、現在はもう「物語消費」っていう事態を超えているんだろうとは思いながら(「物語消滅論―キャラクター化する『私』、イデオロギー化する『物語』」というのも出てるし)、これを読んでいないことは何だか心残りだったので、今更ながら読んでみた。

  
 人が自分の為の「物語」を求め、創作し、消費していくという事態・・・
 
 「ビックリマンチョコレート」を買い、シールを手にすることで、それが背後に持つ神話的世界にアクセスしようとする子供たちと、お布施を払い教祖の言葉、霊験を得ることで神の世界に触れようとする宗教が、同じ構図を持つこと。

 「死」のイメージに過剰反応する子供たちと、病床の昭和天皇に心を寄せる少女たちについて。

 人気コミックから基本プログラムのみを抜き取り、そのプログラムの下、自分の物語を書き始めてしまった同人少女たちのこと。又、抜き取られた基本プログラム(=世界観)の下、原作コミックとアマチュア作家たちによる二次創作が、「ありうべき物語」として等価となってしまうこと(それぞれの作者の力量の差はあるとしても)。

 ・・・

 そして・・・本書には「少年ジャンプ」について言及した箇所がある。その中に、最近の私の気がかり

『私が夢中になって読んだ「少年ジャンプ」って、私にとって何だったのか? または、「ジャンプ」に夢中だった(今もちょっと夢中な)私って何?』

 という問題に一部ヒットする記述があったので、「さすが大塚先生! ついていきますぅ~」とか、思いそうになってしまった、ちょっとね。

 曰く、

 「少年ジャンプ」の作品は、それまでの<少年まんが>をより単純化して複製したものである。<少年まんが>の本質のみを抜き出し、デフォルメした奇妙な複製である「ジャンプ」作品は、当然のことながらすでに存在した<少年まんが>よりも<少年まんが>的である。


 「ジャンプ」が後発のブランドであるということは、つまりそういうことなのである、と。

 「複製」がオリジナルよりも本物らしいという逆説が成立する周辺事情については、本書の中にちりばめてある。

 「本物」よりも「本物」らしいマンガの「似姿」~私を含め多くのマンガ読者が「サンデー」でも「マガジン」でもなく「ジャンプ」を選んだ理由の一端がここにあるのは間違いないように思われる。

 もう一つ、私が是非見てみたかった数字~一般書店での「週刊少年ジャンプ」購買層の年代別、性別データが載せられているのも嬉しい。載せられているのはあくまで、一書店のある一時期のデータだが、参考にはなると思う。

 「少年ジャンプ」購入者のうち、小学生以下が20.6%、中学生が16.5%、高校・大学・専門学生が22.7%、それ以上の所謂大人が40.2%。男女比では92.8%が男、7.2%が女。

 この本の発行年からして、このデータはちょうど私がど真ん中で「ジャンプ」読者だった頃、そして「翼」「星矢」同人誌華やかなりし頃のものだと思われる。当時の私の位置がほんの少しわかった気がする。

 それにしても、大塚氏がまるごと一冊「ジャンプ」論を書いてくれたなら、私の気がかりはほとんど解決するような気がするのだが・・・。

 大塚氏の書くものは、どうにもこうにも私の嗜好を満足させる、又は抗い難く興味をそそるポイントを突いてくる上に、それが詭弁なのか、屁理屈なのか、それとも鋭い直感と綿密な検証によって裏付けられたものなのか考えさせない程、弁舌鮮やかに語られるので、ついつい私は無批判に、面白く、興奮気味に読み終えてしまうのだ。読む前はいつも警戒心を持って臨んでいるというのに・・・。

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