2008-07-09

夜は短し歩けよ乙女 : 森見登美彦

 ふはふはした存在への憧憬で頁が桃色に染まってしまいそう。

 白状すると、読み始める前は、“また、脳内世界に現実がついてこない男の妄想が書き連ねられるのだろう。”と侮っていたところがある。ところが、読んでみると、ほかほか可愛く、わくわく楽しいお話であったよ。はぁ~、はふはふ、はふはふ・・・

 黒髪の乙女が、己の心の欲するところに従ってふわふわと歩き回り、乙女を慕う男がそれを追いかけると、それに従って彼らの背景もくるくると動いていく~夜の街路を、古本の森を、奇妙な物体や団体が出現する学園祭最中の大学構内を、風邪の神がのし歩く師走の町を、彼らは歩く。現実と幻想(妄想?)をごちゃまぜにしながら、移り変わっていくその背景を眺めているのがなんとも楽しい。

 森見氏の小説については、ストーリー云々というよりも、登場人物たちの背景に舞台としてある街や路地の描写・・・そっちの方にどうも私は惹かれているんだなぁと気付いた。

 特に夜。人々は眠りにつき、わずかな人間だけが街を徘徊する夜。路地の先にぽつんと自動販売機の電気が点り、雑居ビルや民家がしん・・・と連なる町並の所々にネオンや街灯の明りが見えるリアルな風景の中を、すうっと気味悪いケモノや摩訶不思議な電車が走り抜ける、「きつねのはなし」や「太陽の塔」で描かれた夜。読んでいると、“ほぅっ”と胸に風が吹いて、ざわざわっと皮膚が興奮する。

 森見氏の描く風景には詩情が漂っている。ともするとそれは滑稽さに覆い隠されてしまうのだけど・・・。

 詩情を隠してしまおうとする滑稽、そこに男の含羞が見え隠れするのも好ましい。

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