2008-07-02

フラッタ・リンツ・ライフ : 森博嗣

 イメージは鮮明に焼きつけられているのに、ディティールはいつの間にかぼんやりして思い出すことができない。

 空を飛び、バイクを走らせ、タバコを吸い、コーヒーやソーダを飲む、クサナギ、カンナミ、トキノ、クリタ、ササクラたちの姿は、写真かビデオの映像を見るように、この目にはっきり見ることができる。彼らの美しさ、痛々しさ、清々しさ、空へと上がっていく軽さは、忘れられない印象となって胸にある。

 それなのに、その姿が、彼らの見せた表情が、いつ、どこで、誰と居る時の、何をしているときのものだったのか・・・それを思い出そうとすると途端に目の前に靄がかかったようになってしまう。

 シリーズの新作を読む度に、それまでの作品も繰り返して読んでいるのに、生身の彼らが体験した現実のディティールをうまく憶えておくことができない。

 「スカイ・クロラ」では、理解されることを拒絶し、最小の抵抗・摩擦の中で軽々と空へと飛び上がっていったカンナミの姿が、「ナ・バ・テア」「ダウン・ツ・ヘヴン」では、空で生きることを強く望みながら、地上へ地上へと落ちていくクサナギの姿だけが、ただ一つの印象として強く強く刻まれている。

 シリーズ4作目の本作はクリタ・ジンロウとクサナギ・スイトの物語。例によって、ページを閉じるとクリタが口にしたこと、彼がとった行動、そのディティールは、早くもぼんやりと遠くにいってしまう。ただ、クサナギの存在によって、「憧れ」(空への、自由への、美しさへの・・)を自分の中に灯していたクリタと、クリタにとって「憧れ」を呼び起こす存在そのものであったクサナギの姿が、また強く私の中に焼き付けられる。

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