2008-06-18

イケズの構造 : 入江敦彦

 京都人のイケズについて考える。

 京都人を訪ね、帰り際に「ぶぶづけでも、あがっておいきやす。」と引き止められたので厚意を受けることにしたら礼儀知らずと誹られた。



 イケズの典型として全国に広まり、京都人を大和民族における悪役に仕立て上げてしまったという、この『ぶぶづけ神話』。(恥ずかしながら私は知らんかったけど、そうなんですか?)。

 この神話から想像される、“心にもない優しげな言葉で、いたいけな他人を罠にかけ、まんまと罠にはまった様を陰で冷笑する怪物”の姿は、イケズに免疫のない“よそさん”を震え上がらせるのだが、これを京都のイケズと思い込むのは浅墓すぎる。『ぶぶづけ神話』はひとつの都市伝説であり、イケズの真の姿を伝えるものとは少し違うらしい。

 一方で、広く人の口に上る都市伝説の中には、イケズの文脈で成り立っているものも見受けられ、その代表格が『転生する子ども』のモチーフなんだそうだ。

 かつて、ある事情から我が子を死なせて(殺して)しまった夫婦。今は、次に産まれた子と幸せに暮らしているが、ある日親子は、最初の子を殺したときと同じような場面に出くわす。その時、何も知らないはずの我が子が振り返って言う。 「今度は殺さないでね。」


 ふぉぉぉ!これか! 何かズォ・・・ンと、雷に打たれるように、イケズの悲しい攻撃性が伝わった! ・・・っていうのは大袈裟だけど・・・。本書の中で一番“イケズの何たるか”が感じられたのが、この「今度は殺さないでね。」のくだり。
 
 イケズが放たれるには、それが発動されてしかるべき成り行きが存在する。傷つけられた者は、じっとうかがっている、イケズ発動の為の絶好のシチュエーションがおとずれるのを。機をとらえた彼らがぶつけてくるのは、熱くたぎる感情ではない。怨みや怒りを削ぎ落とし、クールに相手の心の臓を抉るべく研ぎ澄ませた言葉の一撃。かくして、イケズ爆弾は炸裂する。

 悲しいのは、イケズ爆弾炸裂!に到った成り行きが、爆弾を放った本人にしか了解されていない時。放った本人にしてみれば、渾身の一撃が不発。放たれた方には“???”という、どこに収めて良いのか解らぬ気持ちが残る。

 発動の原理もわからず、遭遇する時も場所も予測不可能な京のイケズに、“よそさん”は全身の毛を逆立てている。そんな“よそさん”に著者は近づいてきて言うのだ。

 『ああ、そんなに怯えないで。イケズはもともと陰険な意地悪や、皮肉じゃなくて、人と人との衝突を避けるための言葉のテクニックです。まあ、多少の攻撃性はあるかもしれませんがね。あ、いえ大丈夫ですよ。バカには効きませんから。』

 押さば引け、引かば押せのイケズの呼吸で繰り出されるイケズ論。愚か者には見えない・効かないイケズの爆弾。

 やっぱり、コワい。

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