2008-06-04

きみはポラリス : 三浦しをん

  「恋愛をテーマにした短編」を依頼されることが多いのだそうだ。依頼者から提示された「お題」、または自分で設定した「自分お題」に沿って書いた恋愛短編集 - 巻末の初出一覧には「ラブレター」「禁忌」「王道」「信仰」「あのころの宝物」「三角関係」「結婚して私は貧乏になった」「共同作業」「最後の恋」「年齢差」「初恋」というお題が並ぶ。

 11の短編の最初と最後に収められた「永遠に完成しない二通の手紙」「永遠につづく手紙の最初の一文」・・・これはもう甘~いお話なんだけど、それ以外の作品は「恋愛小説」とは言いながら、どれも少し毒を含んでいる。

 愛だ恋だと浮かれる世間への反発が、しをんさんに毒を吐かせてしまったっていうのもあるかもしれないけど、それだけじゃない。「別々な個人である人と人との繋がりの間には、良くも悪しくも欺瞞がひそんでいる。真の共感、完全な理解なんて在り得ない。」という確信を彼女は持っている、もしくはそういう思いをぬぐえないでいるのではないかなぁ。

 私がはっとさせられるのは、「復讐なんて、だれにもできない。」(「ペーパークラフト」)という言葉(しをんさん流に言うなら、読みながらガクガクと頷いてしまう)。復讐する側とされる側に、ある意識・価値観が共有されていないと復讐は成立しない。別々な個人と個人の間で、意識の共有なんて不可能である以上、「復讐なんて、だれにもできない。」 

 「私が語り始めた彼は」を読んだときにも感じたことだけれど、誰かの言動で自分が傷つけられたとして、自分についた傷を相手に理解させること、自分が傷ついたことをもって相手を傷つけること(復讐すること)は、きっと不可能なのだ。

 「将来の見通しなど紙にはいくらでも書けるけれど、ひとの心に書き記すことはできない。」(「森を歩く」)

 「俺の意思が大幅に無視されてるような気はするが、きみの気持ちはわかった。」(「優雅な生活」)

 「私は大人になるまでも、大人になってからも、星座を探すような歯がゆさを何度も味わった。『あの星とこの星を結んで』と説明しても、並んで夜空を見上げるひとに、正確に伝わっているのかどうかはわからない。確認する術もない。」(「冬の一等星」)


 他人はどうやったって、自分が思うように感じてくれることはない。自分の想いと相手の想い、そっくり共有することなんて不可能だ。そんな確信が書かせたのではないかと思われるこれらの言葉。

 それでもやっぱり、ちょびっと何かが伝わることはあるんだってことを、不機嫌とも照れ隠しともつかない憮然とした表情で書いているしをんさんの姿が見えるような気がするのだが・・・。


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