2008-05-31

神様のボート : 江國香織

 「昔、あたしのママは、骨ごと溶けるような恋をした。その結果あたしが生まれたのだ。」


 「必ず戻ってくる。」と言って消えたあのひとを、ママは待ち続けている。

 「私はあのひとに慣れちゃったんだもの。他のものにはなじめないわ。」 


 「神様のボート」に乗った母娘は、馴染める土地を作らず、引越しを繰り返す。

 「パパの約束はね、それが口にだされた瞬間に、もうかなえられているの。」
 「ママはイカレている。パパに関して、あの人は完全にイカレている。」



 「恋はするものじゃなく、おちるもの」とは言うけれど、あることに関して、完全にダメになってしまう・・・自らのコントロールを手放してしまうことは、気持ちの良いことだろうか?

 「ダメになる」・・・決して否定的な意味で言っているのではなくて・・・あることに関して、全く何の妥協も、疑問も、折衷案も受け入れられなくなる ~ ただ、その“あること”は完全に美しく、完全に間違いのないことなのだと信じていられる、というのは幸せなことなのか、不幸せなことなのか? ・・・やっぱり幸せ・・・なのかなぁ。

 私はそういう・・・なんというか・・・恋愛に限らず、自分が自分のコントロールを離れてしまうっていうことが漠然と怖いので、そういう事態からはなるべく遠いところに自分を置いているようなとこがあります。(そんなことしなくても、恋におちるとか、おちられるとか・・・そんな事態が私を襲うとは思えませんが・・・)


 「神様のボート」に乗ってしまった母と、産まれた時から乗らされてしまっていた娘。二人の時間は静かに過ぎ、いつか別々の流れへと分かれていく。先へと流れて行く時間と、他に交わることなく閉じて充足した時間。別々の時間を刻むようになっても、互いに想いをかけあう母娘の情愛は少し切ない。

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『神様のボート』

江國香織 『神様のボート』(新潮文庫)、読了。 狂気をなんて清々しく描く作家さんなんだろうと感嘆。 そして、サラッとした描写の中で...

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