2008-05-03

アラビアの夜の種族 : 古川日出男

 ナポレオン・ボナパルトの軍勢がエジプトの地を侵そうとしていた。“破壊する機械”としての近代的な戦法・兵器を備えた数万の侵略軍は、瞬く間にアレクサンドリアを征服、蹂躙し、刻一刻とカイロへと迫っている。

 迫り来る敗北とエジプト終焉の予感の中、カイロの実力者・イスマーイール・ベイの奸智に長けた美しい奴隷・アイユーブが一つの秘策を語る。

 侵略軍の将・ナポレオンに贈る「美しい献上品」~美しく装飾された稀代の物語集・・・物語は読む者を魅了し、読む者は全てを擲って物語に耽り、その書物と「特別な関係」を結んだものは地上から忽然と姿を消すという・・・「災厄の書」を創り出すため、カイロの夜の片隅で物語は語られ始める。

 語られ、書物に書き留められる物語。
 書物に封じられた物語を読み、解き放つ者。
 語られる物語の内部でさらに綴られる物語とそれを読む者。
 物語の外側にありながら、読むことで物語そのものへと変貌する者。
 読む者は、ある時には物語の主体であり、同時に語られる者でもある。

 複雑に絡み合う物語と書物と読む者の関係。その一部にいる我々。

 
 「災厄の書」に収められる物語は、長く因縁に満ちた恐るべき年代記であるが、それ単体で「災厄の書」と成り得る程魔的なものとは思えない。そこに、その書物を「災厄の書」たらしめるだけの背景を持った、まさに千載一遇の読み手がいなければ・・・。

 それを求める読み手の前で物語は力を振るい、また新たに物語は語られ始める。

FC2 Blog Ranking
スポンサーサイト

theme : 読書メモ
genre : 本・雑誌

comment

管理者にだけメッセージを送る

プロフィール

やぶからねこ

Author:やぶからねこ

FC2ブログランキング

FC2ブログランキング

ブログランキング
にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村 漫画ブログへ
カテゴリー
最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
検索フォーム
カレンダー
05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
魂に喰い込んでます
月別アーカイブ
Powered By FC2ブログ

Powered By FC2ブログ
ブログやるならFC2ブログ