2006-09-09

一房の葡萄 : 有島武郎

 小学生の時、「読書シート」なる副読本を与えられておりました。夏目漱石「文鳥」、芥川龍之介「蜘蛛の糸」、新美南吉の童話、O.ヘンリー「最後の一葉」などなど名作短編を1編ずつシートにして綴ったもので、その中の一作品として「一房の葡萄」が入っていました。作中に登場する絵の具や、校舎の壁に蔓を這わせる葡萄の色合いが鮮やかに記憶に焼きついています。

 横浜山の手の学校に通う少年が主人公。絵を描くのが好きな「ぼく」は西洋人のクラスメイトが持つ西洋絵の具の美しさに心を奪われる。あのびっくりするように美しい藍と洋紅の絵の具があれば、いつも見ている海の絵を本物のように描くことができるのに・・・。クラスメイトの目を盗んで絵の具をポケットにおしこむが、まもなく見つかり、「ぼく」の大好きな先生のもとにつれて行かれる。悪い事をしたと泣きじゃくる「ぼく」に、先生は窓の外の蔓から一房の西洋葡萄を取り渡してくれた。

 有島武郎の数少ない童話の中の一つということですが、私は童話というよりも、少年の日の痛みの中にも甘いもののある記憶や憧れを、異国情緒と美しい色彩の中に描いた叙情小説といったふうに感じています。童話という形の中に「悪いことをした時の後悔の念」や「罪を犯した隣人を許す」といったことを子供たちへのメッセージとしておさめているという側面もあるのでしょうが、私はそういった教訓的なことよりもひたすら、美しい色彩の描写に心を奪われました。

 「先生は真白なリンネルの着物につつまれたからだを窓からのび出させて、葡萄の一房をもぎとって、真っ白い左の手の上に粉のふいたむらさき色の房を乗せて、細長い銀色のはさみでまん中からぷつりと二つに切って~」 

 女教師の手の上の宝石のような葡萄・・・切なくなるような、記憶の中の色彩が目の前に見えます。

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