2006-09-05

ノリ・メ・タンゲレ~私にふれるな~ : 道原かつみ

 初めて読んだのはキリスト教系の中学校に通っていた頃のこと。SFコミックとして面白かったのはもとより、キリストを素材として取り込んで「神」とは何かというテーマに触れられていることが興味深かった作品です。道原かつみ氏の絵も最近のものより、この当時のごつごつした質感のある絵の方が好き。


 舞台は第三次世界大戦後、西暦を改め銀河暦の時代(思えば西暦というキリストの誕生を基準にした暦を私達も使っているのですよね)。大脳工学の発達により自らの脳を余すところ無く使えるようになった人類は、記憶・分析・計算能力を飛躍的に増大させるとともに、精神活動に革命を起こした。そこでは宗教や「神」の概念は失われている。

 この時代、「脳より分離した意識を一種の波動として過去の人間の脳に送り、その宿主の体と脳を借りて活動する」という形で時間を越える技術が開発され、この航時の技術を使い活動を行う歴史調査局が設けられているが、銀河暦以前の「前時代」に至るには正体不明の「壁」が存在した。

 歴史の流動性を証明するため一人の航時学者が「壁」を越え、イエス・キリストの身体をかりて自らの計画を発動させる。キリストの計画を阻止するため、歴史調査官ヴェアダルはイエスの使徒・ペテロの身体へ・・・。「神」のいない時代の人間が「神」を守るために時間を越える。

 キリストの計画は阻止され・歴史は守られるのだが・・・どのようにヴェアダルが関わろうと、そこはすでに失われてしまっている過去、そしてそこで生きていたのはヴェアダルではないペテロ。それを思うヴェアダルが切ない。私はこういう喪失感にとても弱い。



 このコミックの中で違和感を持った部分が一点。ペテロの身体に入ったヴェアダルが初めてイエスを目にする場面で、「イエス・キリスト 阻止し なおかつ守らねばならない ―― 」と書かれていることなのですが・・・。話の中ではイエス=「神の子」「救世主」と位置づけられているはず。キリスト教の考え方ではどうなのでしたっけ? イエスはあくまでも「神の子」なのか? 神とイコールだと考えても良いのか?


 ま、上の疑問は余談として・・・

 「前時代」には存在し、自分達には失われている「神」について、ヴェアダルは以下のように思い至る。

 精神革命を起こし、膨大な能力をもつ人間の脳のエネルギー…思考を一固体内で完全に処理できるようになったヴェアダルの時代に対し、「前時代」では人の思考エネルギーは常に不完全燃焼し、過剰に溢れている。過剰に溢れたエネルギーが集積され「壁」を形成し、人は固体内で処理しきれなかった思考エネルギーを「壁」に吸収されることで、また「壁」はそのエネルギーを吸収することで互いに安定するという共存関係が成り立っている。そして、その「壁」こそが「神」であると。

 人間の思考というものが、はたしてそういったエネルギー体の性質を持つのかということには素朴な疑問を感じましたが、宗教の授業でシスターから聞くお話よりは、こういう精神の安定を求める人と神のリンクの仕方って「神様」の正体に近い気がして感化されました。「八百万の神々」のようにまた異なった立場(来歴?)を持つ神もいますが・・・。

 タイトルの「ノリ・メ・タンゲレ」は「私に触れてはならない」の意。聖書の中で十字架上での死後、復活したキリストが言う言葉ですが、このコミックのなかで、罪を犯したユダがペテロ(ヴェアダル)に向かって言う言葉としても使われています。それでもユダに触れるヴェアダルですが、触れたのはペテロであってヴェアダルには触れることはできない。そして「神」である「壁」は銀河暦の人間が「前時代」に触れることを拒む。

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