2008-03-08

村田エフェンディ滞土録 : 梨木香歩

 百年前の日本人留学生・・・土耳古の地で歴史文化研究に勤しむ村田氏の青春記。

 村田氏が身を寄せる、英国人のディクソン夫人が営む下宿屋の壁や中庭の敷石(古代遺跡からの発掘物が建築資材に使われている)からは、時折ビザンティンの衛兵や古代の神がぼんやりと姿を見せ、使用人ムハンマドが拾ってきた鸚鵡は「友よ」「いよいよ革命だ」「繁殖期に入ったのだな」「失敗だ」・・・と住人達の会話にけたたましくクチバシを挟む。


 大きな転換を経験したばかりの日本の国の人間として、多くの民族が交わる土耳古の地の異なる文化、異なる信仰、異なる暮らしがからみあう中で、時に自信を無くし、屈折した思いを味わいながらも、見聞を重ねていく村田氏。

 国、文化、信仰というものをどう受け止めるか?というメッセージの色も濃いが、百年前の青年の、少し幻想的でもある異国体験記としてわくわくしながら読める。

 同じくディクソン夫人の下宿に暮らす独逸人考古学者オットーのいかつい顔、理に勝った熱弁。遺跡を研究する希臘人ディミィトリスの何を考えているのか解らない物憂げな眼差しと、深い知性、思いやり。下宿の使用人ムハンマドのムスリムとしての誇り、やさしさ。

 居間でお茶を囲んで皆とおしゃべりをする他愛ないひと時。中庭で雪遊びをした日。遺跡で大きな発見をした喜び。馬での遠出。長旅で寝付いてしまった同朋の為に、鯵の塩焼きを作って食べさせたこと。

 国も育ちも、思考も、性質も異にする友人、隣人たちとの交流の中で、村田氏の中に積もり、育っていったもの。

 大きな時の流れの前に、進む道が変わってしまったとしても、日常の雑事にただ追われるだけの日々に埋もれるとしても、最後まで自分の芯となり、自分を養い、支えてくれるもの・・・大切な体験、大切な思い出・・・。

 思い返す毎にじわじわと胸が熱くなる。

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