2008-02-16

弱法師 : 中山可穂

 難病に冒された美しい少年と、何ものにも代え難く少年を愛した義父の姿を描く・・・『弱法師』

 どこか知性と美しさを漂わせるホームレスの老女が語る-女しか愛さない美しい編集者と、彼女に破滅的な恋をして、身を削るように九十九の小説を捧げた若き小説家の物語・・・『卒塔婆小町』

 母・文音は二人の人から深く愛され、二人の人を同じように愛していた。一人は同性の恋人・薫子、もうひとりは薫子の弟である夫・香丞。母の死後、少女・碧生が知る秘められた激しい愛・・・『浮船』

 
 中山可穂さんの描く恋って、切実で、どうしようもなくて、涙も鼻水も唾液も血も流れるだけ流れて、身体が破れる痛みを味わいながらも伸ばした手を、その人を掴もうとする手を引っ込めることができない・・・そんな怖ろしさと陶酔と切羽詰った苦しさが満ちていて、激しい恋を経験したことのない私でも、くずれおちてしまいそうな感覚に囚われてしまう。

 ここに収められた三編も深い、深い恋の物語だが、それぞれ能の演目の中の印象的なエピソードがモチーフとして織り込まれたこれらの話は、どこか夢幻の物語・・・生々しい感情・関係を濾過して、蒸留して、物語として美しく精製した感じがある。

 そうして精製された物語の中からも、しかしまだ血の滴るような言葉がはっとこちらの胸を衝く。

 「不思議だなあ。柳原さんと一緒にいると、自分にも食欲があるんだってことを思い出すんです。そして世の中にはおいしい食べ物がいっぱいあるっていうこともね」(『卒塔婆小町』)


 孤独のために肺の中が透きとおり、あばら骨のあいだからこらえきれずに漏れるためいきのような曲だ。(『浮舟』)


 その人がいなければ、何も感じることができない自分。身を捩って恋する人を求める言葉。私は経験したことがない想いなのに、なぜこの言葉を読むと勝手に涙が溢れてくるんだろう。

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