2008-02-02

魔王 : 伊坂幸太郎

 アメリカ・中国という大国に対する日本国民の心理的な鬱積や、明るい要素もなくくすぶり続ける日本社会への不満が高まる中、有能でカリスマ性もある一方、ファシズムに通じる匂いも感じさせる政治家・犬養が世間の注目を集めていた。

 『自分の考えた言葉を他人に語らせることができる能力』を身につけた男・安藤の視点で、そんな社会の状況と、その中での自分のスタンス、自分なりの戦いを語った「魔王」。

 普段どおりの日常の中に徐々に不穏なものが忍び寄ってくる・・・その緊張感の高まりが胸をしめつけ、動悸が激しくなってくる。さあ、どうするんだ安藤?!!!!

 これから大きく展開!!! と思った矢先に終わってしまった「魔王」。そうか、てっきりここから先が話のメインだと思っていたのに・・・。前フリだと思ってた部分に、すでに作者の言いたいことは書かれていたのか・・・。そうか、気が付かなかったけど、ボールはもうこちらの手に渡されていたか・・・と自分の思い込みを軌道修正しながら、続く「呼吸」を読む。


 考える男・安藤に対して、直感の男・・・安藤の弟で『1/10程度の確率の物事なら予想を的中させることができる力』を持った潤也が語る「魔王」から五年後の日本・・・「呼吸」。

 潤也やその妻・詩織ちゃんが語ることで、「魔王」を読んでいる時点ではピンとこなかったところがいくつか補完されていく感じはしたけど、結局こちらを読み終わっても、何だか知らないうちに渡されちゃってた気がするボールをどうすればいいのか判らなくて、もじもじしてしまう。

 社会の前線から距離を置くことで平穏を保とうとする考え、社会の渦に飛び込んで自分のとるべき行動を模索しようという考え、・・・のみならず、色んな立場での色んな人の思惑にそれぞれの正当性がある。正当性のある事同士がぶつかる。
 
 『考えろ、考えろ、考えろ、マクガイバー』(「冒険野郎マクガイバーというドラマの中で、困難にぶつかった時主人公が良く口にするのが『考えろ』ということだったらしい)・・・安藤は繰り返し『考えろ』って自分に言い聞かせてるし、そんな兄に『考えすぎだよ』って言ってた潤也も、後半随分『考える』ようになっているんだけど・・・考えれば考えるほど不穏な方に行ってるような気がするんですよねぇ。結局『良くなろう』とか『良くしよう』とか考えずに何もしないのが平穏なんだろうか?って思いがよぎります。

 それにしても・・・『考えろ』という言葉に『マクガイバー』と続けることでガス抜きしてるのかも知れないけど、こういう風にスカされるのは私は嫌だ。

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