2008-01-05

白いへび眠る島 : 三浦しをん

 十三年ぶりの大祭を控えた、古い因習の残る島・「拝島」に、島を離れていた一人の若い男が帰ってくる・・・横溝正史の世界か?というようなシーンで始まった物語は、おどろおどろしい謎をはらみつつ、闇と光の戦いを描くファンタジーへ。夏の日の冒険は少年に新しい扉を開き、大切な仲間との冒険の記憶は、しっかりと少年の心に刻まれる。

 『一つの石を分け持つ、強い絆で結ばれた義兄弟』『長い長い時を生きる荒ぶる神(物語の中では普通の青年の姿で登場します)と、その神を慰め鎮める役目を持って神宮家に生まれてくる「鱗付き」の子供』『闇に潜む魔物と、闇を切り裂く光』・・・美味しいモチーフを山盛りに盛り込んだ欲張りな小説ですねぇ、これは。

 『闇対光の戦い』『冒険と主人公の成長』という、物語のパターンとしてはすでにガッチリ出来上がっているものに沿って書かれてるので、最後まですんなり読めるのだけど、物語の求心力は充分でなくて、読みながらもどこか醒めてるとこありました。

 こういうファンタジーの要素のあるものって、読者に考えさせる間もなく、どれだけ一気に物語の世界に引きずり込めるか?っていうのが勝負で、現実より濃い物語の世界を構築する言葉のもの凄いパワーが必要なんだと思うけど、ちょっとその辺がパワー不足?

 「濃厚な」「濃密な」「空間にひずみができている」・・・できればこういう事は、ストレートに、安易に文字にしてしまうのではなく、言外に漂わせて欲しいなぁ。ただインパクトのある単語を単発で使うだけでは、世界を編む言葉の目が粗いというか、物語世界を覆っている結界発生装置の出力が弱いというか・・・漠然としててすみません。


 多くの冒険物語では、主人公がローティーンの少年・少女だったりすると思いますが、「白いへび~」で冒険をするのは高校卒業をひかえた18歳男子。『夏休みの冒険』には、ちょっとトウが立ってる気もします。漠然とした『少年の成長』ではなくて、微妙な齟齬を感じる家族との関わり方や、社会の中での自分の位置の決め方とかいったリアルな問題を話にからめてきたから、この年代の主人公になったのかな。

 魔物や神が登場するファンタジーと、18歳男子の抱える生な悩みが、テーマとしてうまく融合しなかったのも、物語の世界ががっちり固まらなかった要因の一つかも。


 文庫版書下ろしの掌編では、島に棲む荒神と「鱗付き」の青年との暖かいような、切ないような触れ合い(麻々原絵里依さんの『須臾楼閣』を少し思わせる・・・)を描くことにも色気をみせるしをん氏。欲張りすぎです(笑)。 

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