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2007-12-26

カンバセイション・ピース : 保坂和志

 かなり長い小説なのに、見事に事件・・・というか、イレギュラーなことが起きない。この話の語り手である、世田谷の古い家に住む小説家の男は、横浜に野球の試合を観に行く以外は、ず~と家の中で猫を相手に過ごしていて、唯一起きる事件と言えば、ローズの引退? あと、昔この家に出たのかもしれない幽霊?の話。

 何種類もの木や草花の植わった庭のある世田谷の古い家で、男は窓の外の音を聞き、庭に部屋に差す日の光を感じ、部屋の隅の暗がりを見、一緒に暮らす妻や姪や、彼の家に間借りして会社を経営する友人とその社員たちと会話を交わし、3匹の愛猫と遊び、この家の持ち主だった叔父一家・・・かつてこの家で暮らした人、猫、過ごした時間を思い、形而上の存在、形而下の者達に思いを漂わせる。

 句読点で何度も区切られつつ長く長く長く続く文章は、語り手である男の超主観的なところで綴られるているために、読んでいるうちにだんだんと主語も、目的語も時制もわからなくなって、軽いトランス状態に落ちてしまう。

 ・・・で、そういう状態で読んでいると、その長い長い文章は、“~は~である”式の一つの意味を伝える言葉としてではなく、全体として時の流れや、感情の揺れや、空気感、その他五感を刺激する感覚的な言葉として、ある印象をもって沁みこんで来る。

 感覚的なところを刺激してくれる言葉や会話の中に、そうやってゆったりと漂っているうちに、窓の外を通る車やバイクの音、通りを歩く人たちの話し声、秋の夜の虫の声、窓辺に射す日差し、庭の木の枝を揺らして吹いてくる風の匂い、廊下をト・ト・トと走る猫の姿、居間で寝転がっている叔父、毎日拭き掃除をする叔母、庭の木に登る少年時代の男の姿・・・この家につながる人々の肖像が、私の目にも耳にも肌にも感じられてくるような気がする。

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