2006-08-20

遠臣たちの翼 : 赤江瀑

 私に「赤江瀑」という名前を強烈に印象づけた作品。能の巨人・世阿弥に魅入られた人たちの美しくも悲劇的な、そして皮肉な行く末を描く連作。ある者は余人の窺い知ることのできぬ境地に至り、ある者は深い迷いの道に堕ち・・・。

「元清五衰」
 活躍を期待された中央演劇界を捨て、世阿弥と同じ「元清」という名を負って自らの芸の道を進む泉村元清。能の「砧」に材を取った彼の一人芝居「打てや打てこの砧」は日に日に研ぎ澄まされ、芸の高みを極めていくが・・・。

「踊れわが夜」
 文壇の古参・高任大汐に「世阿弥」を見た若き前衛舞踊家・泰朝。交流を深める高任の一家と泰朝だが、高任家に渦巻く悪意が語られた時、不可解な悲劇が。

「春眠る城」
 幼くして両親を失い、故郷を離れた邦秋は、生家の記憶を元に「平家蟹の棲む家」の童話を書く。童話作家になる気などなかった邦秋だが、平家蟹の童話発表後にふとしたきっかけで出会った「花伝書」。世阿弥の花を夢想する彼は、夢に迷う。

「しぐれ紅雪」
 人気の若手歌舞伎俳優、仲村七之助と芳沢君太郎には何人にももらさぬ秘密があった。君太郎・七之助が演じる「累」の怪しい魅力と、それによって運命を狂わせる一人の女性。

「日輪の濁り」
 ひたすらに世阿弥をあがめて生きる旧家の女性三代。いつしか萌す小さな悲劇の種。

 
 独特の香気と粘度を持つ赤江氏の言葉は、登場人物たちの狂おしい心理を濃密に描くかに見えて、実は深く踏み込みことはせず、表に表れた事象をなぞるに止まる。しかし、文字では書かれない、そのことによってこそ深い深い心の闇の幻想的な物語が眼前に浮かび上がってくる。姿を現すかと思うとするりと逃げ、色々な様相を見せるその書き記されない幻想譚こそがこの作品の本当の世界・恐ろしさであり、それを追うことが本作を読む真の楽しみであると思う。

FC2 Blog Ranking
スポンサーサイト

theme : 読書メモ
genre : 本・雑誌

comment

管理者にだけメッセージを送る

プロフィール

やぶからねこ

Author:やぶからねこ

FC2ブログランキング

FC2ブログランキング

ブログランキング
にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村 漫画ブログへ
カテゴリー
最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
検索フォーム
カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
魂に喰い込んでます
月別アーカイブ
Powered By FC2ブログ

Powered By FC2ブログ
ブログやるならFC2ブログ