2007-10-10

猛スピードで母は : 長嶋有

 父と別れた母との暮らしが、息子・慎の言葉で語られる。

 母・子・祖父母・母の恋人・母の職場・学校の級友・・・ほとんど生活の中での人間関係のことだけで構成される短い話。その人間関係のすべてがうまくいってるとか、希望が見えてるとかじゃないんだけど、極力、感情的でウェットな表現は排して書かれていて、それが主人公親子にとても潔い印象を与える。

 車のタイヤ交換は素晴らしく手際が良く、女手一つで息子を育てる忙しい生活の中でも、次々と恋人らしき人を連れてくる。職場である市役所では、皆が嫌がった生活一時金の返済督促の仕事をひるまず引き受け、仕事と父の介護両立の為に毎日往復三時間の距離を移動することも厭わない。慎の母はとても逞しく、エネルギーに溢れる女性のようだが、学校に通い資格まで取って就いた保母の仕事はあっさり諦めている。「子供って、全部あんた(慎)みたいなのかと思った。そしたら違ってた」という理由で。自分に出来ること・出来ないことをちゃんとわかって、区別できてた人なんだな。

 慎はそんな母の姿を見て、「サッカーゴールの前で両手を広げて立っている、PKの瞬間のゴールキーパー」を想像する。PKというゴールキーパーに圧倒的に不利なルールの下で、奮闘する母。もしゴールを守れなくても決して悔やむまいと決めている母。

 息子ともそういう潔い人間関係を持とうとする母はスカッとしているのかもしれないけれど、一つ素直には頷けない台詞がある。

 「あんたはなんでもやりな。私はなにも反対しないから」

 それって「あんたのする事には責任持たないよ」という、親が子供にかける言葉としてはとっても厳しい言葉にも取れる。

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