2007-10-03

隠された十字架-法隆寺論 : 梅原猛

 一族を無惨に殺され、子孫の絶えた聖徳太子は強大なたたり神となった。法隆寺は太子の怨霊封じの寺である。
 
 死と舎利のイメージが付きまとう寺。仏像に残された瀆神行為の証拠。・・・大胆な仮説を基に展開される法隆寺論。

 古代史に関する著書の多い梅原猛氏だが、氏は歴史や古代文化の専門の研究者ではない。知を愛する哲学者としての目で真実にたどり着こうとするのが、氏の仕事であるようだ。

 本書でも、氏独自の研究というよりも、ばらばらに存在する各分野での専門家の研究、各種文献を、各々のピースがあるべき場所におさめ、それぞれの事象を結びつけていくという形で氏の法隆寺論が展開されていく。

 現存する歴史上の文献や、先人の研究では埋まらないピースは、氏の洞察力、想像力、創造力で補われていくのだが、その歴史上の人物達の心情、行動にまで想いをめぐらし描いて見せる仮説のドラマは、創作物としてもとても魅力的な小説的、映像的面白さを持っている。

 入鹿による山背大兄皇子、太子一族の虐殺、中大兄・鎌足による入鹿の暗殺・・・そこに見え隠れする中臣-藤原氏の政治的意図。・・・専門的知識に乏しい私には、氏の仮説の一つ一つを検証しながら・・・といった読み方はできない。いきおい、「権力者によって偽造された古代史の闇に迫るミステリ小説的面白さ」にひかれて読むことになる。このミステリとしての面白さは多くの読者を惹き付けるところだろう。

山岸凉子氏の「日出処の天子」は、この「隠された十字架」に刺激を受けて描かれたものだという話を聞いたことがある。有間皇子の悲劇を描いた、清原なつの氏の「飛鳥昔語り」にも、「隠された~」の記述とダブるところが見られ、もしかしたら本書にインスパイアされて生まれたものなのではないかと思う。

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