2007-09-08

芳年冥府彷徨 : 島村匠

 薩長との戦いに幕府軍は敗走。江戸になだれ込んだ官軍に城も明け渡された。上野の山に立てこもった彰義隊と官軍が小競り合いを繰り返す不穏な日々。終わりを迎えようとする江戸の断末魔の気配の中で、残酷絵で名を馳せた絵師・月岡芳年が彷徨い追い求めたものは・・・。

 夜道で偶然に二人の侍の斬り合いの場面に遭遇した芳年。静かな殺気を纏って相手の男を無惨に切り捨てる黒頭巾の男を目の当たりにした芳年は強く思った。

(-あの男を描いてみたい)

 人が人を殺す・・・その殺気に取り憑かれた芳年は、殺しの現場に落ちていた簪を手がかりに黒頭巾の男の正体を追う。


 簪に隠されていた密書、官軍の謀、世間を憚る趣向を楽しむ為の秘密の会合、侍を殺した過去をひた隠しにする版元の主人・・・色々な挿話を挟みながら物語は大詰めへ・・・。


 “最後の浮世絵師”“血まみれ芳年”と言われる月岡芳年を主役に据え、そしてこのタイトル! もうドロドロ、ぐっちゃぐっちゃの情念の世界!!!・・・かと思ったら、意外にもあっさり目・・・と言うより、少々物足りなさすら感じてしまう。いくつかある話の流れがどれも絡みあって深くなっていかず、上滑りしてる感じ。

 全体的に読みやすいし、江戸の退廃的な空気、幕末の江戸の気分のようなものは楽しめて、そういう点では良いです。ただ、黒頭巾の男の正体をめぐるサスペンスの面でも、“殺気”というものをつきつめる観念的な面でも最後まで何を描きたいのか煮え切らず、ラストに提示される“殺気”云々はどうも無理やりなこじつけに見えてしまう。ちょっと内容がタイトル負けしてるかな~という感あり。

 芳年が実際どういう人物だったのかは置いておくとして、“殺気”というキーワードをからめてくるなら、皆川博子の『花闇』で描かれていた芳年の方が、読み手を震え上がらさるような殺気に満ちている。

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theme : 読書メモ
genre : 本・雑誌

comment

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どろどろ、ぐちゃぐちゃもなんだか真面目

歴史物って島村さん得意なのか、気づいたら
食い入るように読み込んだりしてます。
キツイ表現もあるんですけどね・・・。
殺気に関してはちょっと煮え切らないなと思いましたが、
何か制約があって、その中で割り切った気もします・・・?

最近出た「マドモアゼル」はかなり没頭しました。
緻密ですし、島村さんの真摯な仕事ぶりを十二分に感じました。
そんな島村さんの評論をしてるサイト、あんまり無いんですが、
見つけたので貼っておきます。
http://www.birthday-energy.co.jp/

「マドモアゼル」に関しては極上の国際サスペンスだそうで。
これからも期待できそうですね!!

コメントありがとうございます

「芳年」の名前が目についてたまたま手に取った一冊だったのですが、幕末の江戸の雰囲気には緊張感がありました。

作者の島村氏はまた雰囲気の違うサスペンスも書かれているのですね。機会があればまた・・・
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