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2007-07-14

沈黙博物館 : 小川洋子

 なんだろうこの居心地の悪さは。

 何処とも知れない村に着いた博物館技師の男。彼は荒れ果ててはいるが広大な屋敷に住む老婆の依頼で、死んだ村人たちの形見を集めた「沈黙博物館」づくりに携わる。

 庭師の剪定バサミ、娼婦の避妊リング、美術教師が死の間際までしぼり尽くした絵の具のチューブ、耳縮小手術専用メス、沈黙の伝道師が身につけていたシロイワバイソンの毛皮・・・。老婆と男の手によって“奇跡的な生の痕跡。その肉体が間違いなく存在しておったという証拠を、最も生々しく、最も忠実に記憶する品”が死者のもとから盗まれ、集められ、「沈黙博物館」の展示品として永遠に保管される。

 死者の「生」をこの地に留め続けるために蒐集された形見たち。博物館技師や、彼に仕事を依頼した老婆はその形見に、彼ら自身より雄弁に彼らの「生」を語る何かを感じているらしい。

 ---博物館技師の男はしばしば顕微鏡を覗き、カエルから切り取った細胞、タニシの殻を叩き割って採集した精子に「生命」を感じる。形見といい、この小動物の細胞といい、生きていることから切り離されたモノにより生々しい「生」を感じるなんて何だかグロテスクだ。 そして彼は、とても会いたがっていた兄夫婦に生まれた子供-今生きている生命には結局会えないまま村を出られない。

 彼を取り込んでしまった村は一見人々が普通に暮らす土地であり、色彩に溢れ、臭い、光、闇を感じさせる場面は沢山あるのだけど、不思議と「音」の印象が無い。

 気味の悪いアンバランスさに満ちた小説だった。


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