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2019-07-20

ののはな通信 : 三浦しをん

『ののはな通信』 三浦しをん

 無邪気でふわふわした(だけではない)はなと、クールで思索的な(もちろんそれだけではない)のの。文字には乗せきれない沢山の思いを込めて交わされる二十数年間にわたる往復書簡。

 先日、『あの家に暮らす四人の女』を読んだときには、もっと共感できても良いはずの登場人物たちを、いまひとつありありと感じられない自分に戸惑ったりしたのだが・・・。あれは、描かれているのが「大人の諸問題」~ほぼ頭で考えて処理しちゃうような事柄だったからなのかもしれない。しかし、こと青春時代のあれこれとなると、頭で考えることなど何ほどのものでもなくなるくらい圧倒的に吸引力が違うのだということを身をもって味わった。巻き込まれすぎてぐったりだ。

 第一章と第二章は、ののとはなの高校~大学時代。ああ、これは! 私が10代から20代の初めに過ごした時間そのもの。

 私が過ごした10代も、丘の上に建つカトリックの女子校に通い(作中同様、近くにはカトリックの男子校もあった)、休み時間の教室や自習中の図書室で、『日出処の天子』や、『ネバーエンディングストーリー』のおっさん顔のドラゴンや、『ミツバチのささやき』のアナ・トレントについて語り合う毎日だった。それに昭和六十三年、四月初めの東京に雪が降った日のことも鮮明に覚えている。あの日、私たちはお花見に行く予定で、手作りのお弁当なんか用意していたんだよなぁ。

 そして何より・・・、昭和が終わろうとするその頃、自分の中の愛すべき大切な何かをもうすぐ失うのだろうと感じていたこと。これから自分が失ってしまうものたちに、それでもいつか『また会えるといいね』と願っていたこと。ああ、あまりに似ている。


 第三章・第四章は第二章から二十年ほどが過ぎ、それぞれの場所で生きるののとはなの再会とその後。

 青春時代に育まれた自分の芯となるものをしっかりと抱いて、自分の居場所、在りよう、進むべき道を模索しながら生きていく二人の姿に、若かった頃の私にも、守り、支え、寄り添い、指針となってくれたものがあったことを思い出し、これまでも折に触れて頭をよぎることのあった問い~「私は少しでも良い大人になれているだろうか」ということを考えた。

 
 
 ところで、第二章の残酷なまでに無邪気なはなと、その無邪気な甘やかさに抗えないのの・・・。「なんだか甘ったれの蓑原くんにいいように振り回される諸戸道雄みたいだ」と思ってしまったのだけど、『孤島の鬼』はきっと二人も中学か高校の頃に読んでて、諸戸道雄の哀しい恋と献身について熱く語りあったことなんかもあっただろうね。




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genre : 本・雑誌

2019-07-06

グッド・バイ : 太宰治

『グッド・バイ』 太宰治

 数年前に読んだ森見登美彦『四畳半王国見聞録』「グッド・バイ」で胸の奥に埋めた古傷から血の吹く思いをして以来、いつか本家太宰の「グッド・バイ」を読もうと思っていたんである。

 太宰最晩年の作品5篇が収録されたこの文庫、今更、あえて感想なんて言うのも何だ・・・という気もするけれど・・・。

 もうヤバさしかない「トカトントン」はおいといて、「パンドラの匣」「ヴィヨンの妻」「眉山」「グッド・バイ」・・・。災厄いっぱいの世の中で匣の隅にわずかに残された明るみの如き療養生活を送る青年や、酒に溺れてダメの極みを行く男、その傍で妙に逞しい女たち。「・・・もうダメだぁ」という叫びや、つぶやきや、呻き、視界の端に見え隠れどころか、がっつり姿現しちゃってる死の気配を、もう眉毛を困ったな~の形にして情けなく笑うしかない滑稽さでくるんだこれらの小説を、いったい私はどんな顔をして読んで、読んじゃったあとのこの気持ちをいったいどこに収めればいいんだろう?


 
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