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2019-06-22

シューマンの指 : 奥泉光

『シューマンの指』 奥泉光

 指を失ったはずのピアニストがシューマンの故郷の町の小さなホールでピアノを弾いていたことを報せる手紙と、それにつづいて綴られる「私」の手記。長いあいだ封印されていた天才ピアニスト永嶺修人をめぐる記憶が、何事かを秘めた言葉で語りだされる。

 何が語られようとしているのか、語られる言葉は何を隠しているのか・・・。懐かしさと愛しさと不吉さが混ざり合う(それは、手記に記される『永嶺修人の語るシューマン論』と並行するような)語りの先に仄見える決定的な出来事。何かがおかしい。その不穏さに緊張しながら、導かれるままに読み進める。

 シューマンが聴き、表現しようとしたもの、修人が奏でるビアノの音、この世に遍く存在する「音楽」の姿、その「音楽」に撃たれる体験 ~ 五感に触れてイメージを溢れさせる言葉の渦まく流れ。その流れに巻かれ陶然となりながら、「私」の体験と感覚を共有する。やがて静かに終息していく感覚の渦。最後の音の余韻の中で天才ピアニスト永嶺修人をめぐるミステリーのページを閉じた。


 歌人・穂村弘氏の読書日記『きっとあの人は眠っているんだよ』の中で、【天才ピアニストの悪魔的魅力】と題されて、永井するみの『大いなる聴衆』、飛浩隆の「デュオ」とともに紹介されていた一冊。


 

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