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2018-02-17

熱い読書 冷たい読書 : 辻原登

『熱い読書 冷たい読書』 辻原登

 書評集というよりも、質の良い美食エッセイを読んでいるような感覚だった。古今東西の珍味、佳肴、中には口にするには確かな知識と細心の注意が必要と思われる危なげなものまで・・・。

 その一皿(一冊)をいつ、どこで、どのように味わったのか。その舌触り、喉ごし、味わいは・・・。その匂い、温度、色合い、形状はどのようだったのか。ときにはそのレシピを明かしたり、その料理を育んだ風土や歴史に言及したり。〝僕”が味わい咀嚼し胃におさめた一皿がどのように消化され、どのように〝僕”の心身を養ったのかまでを思わせる文章。

 「本を読む」ということが、ものを食べるのと同様な生々しい生命の活動として感じられる。

 語られる一皿(一冊)について想いをめぐらせる楽しみとともに、その一皿を語る言葉自体を味わい楽しめる、刺激の強い一冊だった。



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2018-02-03

壺中の回廊 : 松井今朝子

『壺中の回廊』 松井今朝子

 昭和五年三月、『仮名手本忠臣蔵』を上演中の木挽座で人気、実力ともに兼ね備えた花形役者が殺害された。折から木挽座には「掌中の珠を砕く」との脅迫状が届いており・・・。

 これまで読んだ松井今朝子の小説の中には、陰惨な事件、無惨でやるせない現実の中でも強かに、あるいは健気に、またあるいは美しく生きる人たちの姿があったのだが・・・本作の読後感は少し重苦しいものになった。事件の様相が後味の悪いものであるのに加え、タイトルの通りに登場人物たちがぐねぐねとうねる出口の見えない回廊を廻っているような閉塞感が濃く漂う。

 封建的なしきたりが強くのこる『旧劇』の世界の城郭とみなされる木挽座と、その目と鼻の先で「旧劇」とは価値観を異にする芝居が演じられる築地小劇場。この二つの劇場に象徴される社会の階級間、世代間の齟齬、軋轢。それぞれにより良い先行きを望みながら、相和することなくすれ違う人の想いに、世相が暗く、重い影を落とす。

 その暗がりの中に及び腰ながら分け入っていく探偵役は、「旧劇」の世界に見切りはつけたものの何やら割り切れない気持ちを抱える江戸の狂言作者の末裔・桜木治郎。「旧劇」界の革命を目指した役者の命をうばったものは、果たして何だったのか・・・。



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