2017-05-27

風の如く 久坂玄瑞篇 : 富樫倫太郎

『風の如く 久坂玄瑞篇』 富樫倫太郎

 先日読んだ『風の如く 高杉晋作篇』の前にあたる作品。松陰の処刑後から蛤御門の変まで。「久坂篇」とはなっているが、前半はむしろ高杉晋作の言動の方が目立つし、久坂の目線、主観でストーリーがすすむわけではなく、シリーズを通して配された風倉平九郎という人物の目を通して語られる群像劇という趣。

 登場人物たちの心情にあまり踏み込まず、作者の解釈や思い入れをたっぷりと織り込むこともなく、淡々と起きた出来事と人々の行動を語る書きぶりは少し物足らないとも思えたが、そのさらりとしたところが嫌味のない読みやすさとなっているのかもしれない。よけいな味付けなしに素材を自分なりの楽しみ方で味わえる・・・という。

 しかし最後の「蛤御門の変」ではさすがに濃い色が滲みだす。周囲で繰り広げられる戦闘の銃撃、砲撃、剣戟、燃え盛る炎の音を背景に、戦には向かない玄瑞の人となり、それでも内裏に進撃し何かを成さねばと足掻く姿が鮮烈に描かれる。無惨な敗戦の中から生き残ろうと歯を食いしばる平九郎たちの志は「高杉晋作篇」へとつづく。

『風の如く 高杉晋作篇』・・・http://neconohitai.blog71.fc2.com/blog-entry-768.html



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tag : 高杉晋作

2017-05-06

厭な小説 : 京極夏彦

『厭な小説』 京極夏彦

 京極さんが「厭な小説」と言うからには本当に厭なモノなんだろうと思った。ならば、わざわざ「厭な」とことわってあるものを、読まなきゃいけないだろうか? さらには、京極さんが「厭な」と言ってるモノを受けとめる気力、体力が私にあるんだろうか? そんなわけでずっと読むのをためらってきたのだが、京極さんの書くものだから「厭」だけではないだろう、と意を決して読んでみた。

 はたして・・・厭だ。これは厭だ。しんどい。でも、ちゃんとエンターテイメントとして成立してた。もっとも、エンターテイメントであるかどうかなんて受けとめる人次第ではあるけれど。例えば、世の中では歴としたエンターテイメントとして通ってるホラー映画や絶叫マシンは、私にとってはただただ腹立たしいまでに嫌なものでしかないし・・・。

 でもねぇ、見返し、目次・・・と頁を捲っていくと、ご丁寧なことに第一篇「厭な子供」の扉頁のノドのあたりに、読書中にまぎれこんだらしい蚊の死骸がぺしゃんこになって貼りついているのだ。目にした途端、「ああ・・・」と、がっかりするというか、哀しいというか、萎えるというか、それでいて懐かしい、何とも言えぬ気持ちになる。これはやっぱりエンターテイメントだろう。

 ただ、二つだけエンターテイメントとして受け入れるにはきついものがあった。一つは「厭な子供」の中で、語り手の妻にふりかかる出来事。女性としてはやはり辛い、受け入れ難い。もう一つは作中に登場する嫌な上司・亀井部長。最後の一篇「厭な小説」での彼の言動のまあ不愉快なこと! あまりのヒドさに、あやうく読むのやめてしまうとこだった(苦笑)。冷静になって考えてみれば、それだけ感情をゆさぶられたってこと。



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