2017-04-23

天下一の軽口男 : 木下昌輝

『天下一の軽口男』 木下昌輝

 これ、芝居で見たいなぁ~。

 大坂難波村の漬物屋次男坊・彦八の笑いにかけた人生。

 手習い小屋を追い出されてばかりだが、村の子供相手の滑稽芝居では大人気をとり「難波村一の御伽衆」を自称していた少年時代。若くして江戸に出て踏み出した笑話の芸人としての第一歩と味わった大きな挫折。失意を抱いて舞い戻った大坂で、世間の人にもまれ支えられ、様々な縁を得て名人と呼ばれるまでになった日々。幼い日に誓った約束を果たすため「最高の舞台」の待つ名古屋へと旅立つ年老いた彦八。

 何だか歌舞伎の舞台で演じられてる様子が目に浮かぶんだぁ~。いっぱい笑わされて、いっぱい泣かされて、最後にはいろんなものが洗い流されてぽっかりと心と体が軽くなっている。そんな気持ちの良い芝居を見せてもらえるような気がするんだぁ~。

 それに、彦八をとりまく人々・・・

 太閤秀吉を抱腹絶倒させ「天下一のお伽衆」と呼ばれながら、「笑いで人を救う」という悲願を果たせぬまま世を去った初代安楽庵策伝和尚。策伝和尚の名と心を受け継ぎやがて彦八と出会うことになる飛騨高山藩士・田島藤五郎~笑いを愛する心に反して笑いの才はまったくないが文武に秀でた飛騨の麒麟児。彦八の大切な幼馴染であり心から笑わせたいと願う少女・里乃。彦八とは同郷の出である仕方咄の創始者・役者のように整った容姿をもつ鹿野武左衛門。嫌味な敵役・伽羅小左衛門と四郎斎。彦八が育てた弟子たち~訳ありの青年・梅春と、がさつで図々しいが師匠思いの彦蔵。

 色んな想いを抱えて生きるこの実に魅力的な人々を、いきいきと強かに爆ぜる彦八の生き様を、役者の生の肉体で見せてほしいんだぁ~。彦八の話す心地よい上方言葉を、役者の肉声で聴かせてほしいんだぁ~。そして、人々が暮らす町の賑わいと喧騒を舞台の上に見せてほしいんだぁ~。

 さて、彦八は誰が演ってくれるのかなぁ~。
 



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2017-04-08

ちくま日本文学7 江戸川乱歩

『ちくま日本文学7 江戸川乱歩』

 「火星の運河」という奇妙な小説があることを見聞きしたことがあったのだが未読であったので読んでみた。(が、もしかしたら以前読んだことがあったのかもしれない。)思わせぶりな書き出しと、ラストの視界を覆い尽くしていく女の顔というのは、目眩のするような歪んだ乱歩世界の香り充分なのだが、作品自体としてはちょっと拍子抜けだったか・・・。てっきり乱歩の妄想世界がついに宇宙にまで達したのかと思っていたので・・・。

 目当ての「火星の運河」はほんの数ページの短編だったので、「白昼夢」「百面相役者」「屋根裏の散歩者」「鏡地獄」「押絵と旅する男」・・・これまで何度も読んだことのある他作品も改めて読む。そしてどれも別世界の魅惑に満ちていることに少し若い頃を思い出す。

 生暖かい春の日の白昼夢の中に、友人にかつがれて信じた嘘の中に、常とは違う場所から眺める日常の中に、球体の鏡の内側に、遠眼鏡で覗き込んだのぞきからくりの中に・・・退屈で色のない自分のいるべき世界とも思えない現実の他に、極彩色の彩りをもって息づくもう一つの世界があるのだとしたら・・・。日々の生活にすっかり馴染んでしまった今の私でさえ、すこし心にさざ波がたつのを感じるのだから、「うつし世は夢」と思い暮らす人たちはどんなに胸をかきむしられる思いのすることだろう。

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