2017-02-25

風の如く 高杉晋作篇 : 富樫倫太郎

『風の如く 高杉晋作篇』 富樫倫太郎

 梅の花が香るとやはり高杉晋作の面影がちらつく。「久しぶりに高杉晋作モノを読もうか」と思っていたところにちょうど目についたこの小説、読んでみたのだが・・・。

 あくまでもこれまで読んだことのある作品の中での話なのだけど、こと高杉晋作に関しては小説よりも評伝などを読む方がよほど面白いというのはどういう訳だろう。

 高杉晋作という複雑奇妙な人物をじっくり見つめ描き出した司馬遼太郎の『世に棲む日日』や、晋作に近しかった人物たちに追憶という形で語らせ、晋作と妻マサの絆を浮かび上がらせた竹田真砂子の『三千世界の烏を殺し―高杉晋作と妻政子』など魅力的な小説もあったが、中には夭逝した天才的革命児のストーリーとして単純化されすぎて「味気ない」と感じてしまう小説もある。

 その一方で評伝にはハズレがないというか、そこに記された晋作の長くはない一生は「小説より奇」なることの連続だし、遺された日記や手紙は、折り目正しいかと思えば破れかぶれ、激情家かと思えば非常にはにかみ屋の気遣い屋、面倒くさいが猛烈に愛しい晋作の人物像を妄想させてくれるのである。

 本作は四国連合艦隊との講和から功山寺決起~四境戦争の勝利までをコンパクトに描く。圧倒的に不利な状況をくつがえし連戦連勝の神がかり的活躍をみせながら身体は病に蝕まれていく晋作の悲壮な姿、そこに滲む誰とも分かちえない孤独は切ないが、「評伝には及ばない」という類かもしれない。

 とはいえ、同シリーズの『吉田松陰篇』『久坂玄瑞篇』も読んでみようかなという気にはなっている。

【過去記事】
『三千世界の烏を殺し-高杉晋作と妻政子』http://neconohitai.blog71.fc2.com/blog-entry-439.html

『世に棲む日日』http://neconohitai.blog71.fc2.com/blog-entry-629.html




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tag : 高杉晋作

2017-02-11

天地明察 : 冲方丁

『天地明察』 冲方丁

 気持ちの良いものを読んだ。

 この世に遍く満ちる神気。驚きと感動と畏敬の念をもって世界に相対する若者の清新な姿。自らの情熱と才能の全てをもって天地に触れる幸福。

 算術と星に魅せられた煌めく才能を持つ若者・渋川春海。城の碁打ち=安井算哲としての自分に飽き足らず、真の己の発露の場を願う春海が戦うことになる生涯をかけた大勝負。

 「改暦」という国の一大事業によせて、玄妙なる天地の運行、数理の美しさ、それらに魅せられ真摯に挑む人々の姿が描かれる。時と人と縁と才能に恵まれて、天と地と時を相手にした勝負に自分を発揮し尽くし、事を成就させるとともに、長年夢見た自分だけの居場所〝春の海辺”に至った春海。かなり理想化されたエンターテイメント小説だとは思うけど、「世界」と「人」の美しさにこれでもかと泣かされる作品だった。

 ・・・ただ一方で、新しいものを理解せず、変化を受け入れず、旧いものへの愛着を捨てられないものへの作者の態度があまりにそっけなく、冷たく感じられるのには少し寂しい思いがした。


 北極出地の旅の場面をはじめ、映像がありありと浮かんでくる作品だったので、映画も見ようかな・・・とキャストを調べたら、孤高の算術家・関孝和役が猿之助さんだった。見ねば。

 

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