2016-01-23

海峡―この水の無明の真秀ろば : 赤江瀑

『海峡―この水の無明の真秀ろば』 赤江瀑

 海峡-陸と陸を隔てる潮の流れ。往来する人の渡る通り道であると同時に全くの異界でもある海の世界。こちら側とあちら側を分けて流れる水。

 海峡の町に暮らした赤江氏が幻視する「海峡」の姿。「海峡」のもたらす様々な想念や妖しく人を誘い込む幻の光景の断片。

 赤江氏の小説は魔的なもの、逢魔の感覚に満ちている。その魔の精髄、その在り処が赤江氏には「海峡」として目にうつり、耳に聞こえるのだろうか。

 夜、無人の磯を歩くと海峡が得体のしれない生き物の気配を帯び、指先にその搏動を伝える肉体を持ったと感じる瞬間があるという。

 その(海峡の)肉体の一端にわたしもわが肉体の一端で直接触れていると感じるこの奇妙な現実下の一刹那は、不意の感応現象がもたらす理解であるだけに、常ならぬ、怪奇なる昂奮を呼び起こす。

 流れる水が肉体を持ったと感じる一刹那は深夜の磯の無人の時間と闇が与えてくれるほんのわずかな間に消える神秘な幻想体験にすぎないけれども、わが人体とは異なった怪奇なる生体と肌を接しているという鮮やかな自覚はしばらく消えない。


 赤江氏自身の逢魔の体験を生々しく感じさせる文章である。

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2016-01-09

伏―贋作・里見八犬伝 : 桜庭一樹

『伏―贋作・里見八犬伝』 桜庭一樹

 「おまえもな、国に、吊城に、父上と母上に……つまりは世の中に伏せて生きていくんだ。そうやって、意思の力で、大人というものになっていくんだ。」

 人と犬との間に生まれた犬人間「伏」の起こす凶悪な事件が頻発する江戸の町で、懸賞金目当てに「伏」を狩る浪人・道節と山育ちの少女猟師・浜路の兄妹の活劇譚。

 滝沢馬琴の不肖の息子・滝沢冥途が語る、安房の国・里見の里の吊城に生まれた美しく勝気な姉・伏姫と醜く気弱な弟・鈍色をめぐる運命と犬人間「伏」誕生の物語-「贋作・里見八犬伝」。

 犬人間・信乃が語る「伏」の生き様と「伏」誕生の森への旅の果て。

 絡み合う因果の糸。人と「伏」~狩るものと狩られるものをめぐる物語。

 二十年足らずの寿命を生きる自由で気軽で狂暴で孤独で美しい、人の姿をした獣~「伏」。「伏」とはつまり我々が大人になるときに自ら手にかけて殺す自分の中の何ものか・・・哀しく愛しい人身御供・・・なのだろう。であるから大人である道節はためらいなく「伏」を殺すが、少女である浜路は「伏」に止めをさせない・・・どころか「伏」としばしの交感の時を過ごす。

 愛しいなにかを殺して大人になるための、大人になった後も自らの中の獣を「物語」として生かしておくための御伽噺。




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