2015-04-25

高杉晋作の「革命日記」 : 一坂太郎

『高杉晋作の「革命日記」』 一坂太郎

 高杉晋作が残した六つの日記~海軍修行のため軍艦丙辰丸に乗って江戸に向かう航海日記『東帆録』、文武修行のため江戸から北関東、信濃、北陸をめぐった『試撃行日譜』、世子小姓役を命じられての勤務日誌『せつ御日誌』『初番手行日誌』、上海視察の記録『遊清五録』、脱藩の罪で投ぜられた野山獄での獄中記『投獄文記』~を現代語訳で紹介。序章として「高杉晋作小伝」と巻末に略年譜が付されていて、それぞれの日記が書かれた時の晋作の置かれた状況や心情を思いやる助けとなる。

 これまで、高杉晋作の評伝などを読んで、「何しろまぁ、日記の続かない人だなぁ・・・」と思っていた。その日記の続かなさっぷりも高杉晋作という人の一端を感じさせるようで面白くもあった。熱しやすく冷めやすい激情型という面もあったのかもしれないけど、きっと晋作は嗅覚の鋭い人で、続けて意味のあることと無いことの見切りがスッパリとしていたんだろうなぁ。

 嗅覚の鋭さといえば、たった二月ほどの上海滞在で日本の置かれている危うい状況を理解した晋作の感覚のキレも並大抵じゃない。初めて訪れた外国での二ヶ月なんて、ぽやっとした人だったら物珍しさと戸惑いとわけのわからん興奮と体調不良だけで過ぎちゃうくらいの時間じゃないか? きっと。

 自分のこれまでの行動と千々に乱れる思いをひたすら反芻し内省し自らの忠誠心を研ぎ澄まそうとしているかのような『投獄文記』も凄まじいけれど、読んで「なんかいいな」と思うのは、著者も「もっとも好き」という世子小姓役としての萩での勤務日誌『せつ御日誌』だ。

 御殿での作法を習い、細々とした儀礼をこなし、親戚づきあいも密で家族思いな晋作の折り目正しい勤務ぶりを読んでいると、改めて「晋作っていいとこの孝行息子だったんだよな」と思う。

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2015-04-18

高杉晋作の手紙 : 一坂太郎

『高杉晋作の手紙』 一坂太郎

 晋作の遺した書簡の中から『晋作の生涯を語るさい避けて通れない手紙、人柄をよく伝える手紙、時代を象徴する手紙など』百通を収録。多少読みやすく整理はされているのでしょうが、返り点が振られているだけで書き下し文にはなっていないので、高校時代の漢文の授業を思い出しながら四苦八苦して読む。現代語訳もついていないので、読めない部分は適当に想像で補いながら読み飛ばすしかないのだが、なまじ現代語に訳してあるよりも晋作の生に近い言葉を読んでいる気になれて良い。

 晋作の評伝や小説の中で目にしてきた『僕一つ之愚父を持ち居』『拙者は御割拠も真之御割拠が得意也~うはの進発は聞も腹が立なり』の一文を、書簡の中で晋作自身の言葉として読む生々しさ。『弟事は死でも乍恐天満宮の如く相成、赤間関之鎮守と相成候志に御座候』~死を覚悟して書いたのであろう大庭伝七宛ての手紙の鬼気迫る感じ。死んだら墓前に芸妓を集め三絃でも鳴らしてくれという軽口がまた何とも涙ぐましくて。

 認められているのはいつも忠義のこと。ころころと変わる藩の態度に幾度も辛酸を嘗め、命の危険にさらされてまでも変わらなかった藩と、藩主・世子両殿への忠誠心は健気というか可憐というか・・・

 自負心の強そうな晋作のこと、久坂玄瑞などにはライバル心剥き出しな言葉を書き送ってりしているのではないかと思っていたが、自己主張はするものの、同志を敬い、立て、自身はずいぶん遜っている様子。武士のマナーとしてそのようにしているのかもしれないが。

 著者の言うように桂小五郎にあてた手紙などは甘えているとも思えるようなフシが見て取れる。誤解されることの多かったであろう晋作だが、これと思う人物には自分を認めてほしいという気持ちも強かったのかもしれない。根本のところではけっこうな甘えったれだったのかもしれないなぁと思う。

 そう思ってみると、妻マサに宛てた手紙で繰り返し武士の妻としてのありようを説いているのも、何も堅苦しい訓戒ではなくて、自分の誇りを託せる妻への信頼と愛情の言葉であると同時に、自分のことを理解してほしい、自分の思うような妻であってほしいという甘えであるような気もして・・・。



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2015-04-11

幻色のぞき窓 : 山本タカト

『幻色のぞき窓』 山本タカト

 初めて目にしたのは何時、何処でだったのか・・・山本タカト氏の妖艶で仄暗い絵に惹かれている。

 ・・・惹かれている、のだけど、日々何事もなく過ごすことを第一に考え、まがりなりにも陽光の下で平穏に平凡に暮らしている私如きが、「山本タカトの絵が好きだ」などと言うのは憚られる気がして、これまで画集を買うことを躊躇ってきた。それでもやはり憧れは止み難く、「これは画集ではなくて、半分はエッセイだし・・・」と自分にもよくわからない言い訳をしつつ、初めて山本タカト氏の本を購入した。

 氏の住まう鎌倉の風景やそこに二重写しにたちのぼる幻視の光景、吸血鬼や両性具有、髑髏、球体関節人形などへの嗜好を語る言葉は衒いなく静かで何気ない。吸血鬼や髑髏や少女人形・・・そういうものたちのことを「好き」と言って良いのは、このように気負うことも身構えることもなくそれを口にできる人たちだけなのだ・・・と思う。

 以前から、薄目を開けた睫毛の間に様々なものを見てきた。


 いちばん羨ましく思うのは、この「様々なものを見てしまう目」である。

 自然の生命力を感じさせる複雑怪奇な形で生い繁る森の木々、海の向こうや山の端から射す日の光の粒、海岸に打ち上げられた海藻類、鳥や魚の死骸、骨片、薄暗いトンネル、夜の闇・・・現実の鎌倉の風景の先に、氏の目にはこの世ならぬものたちの姿がありありと見えるのだろう。

 もしも、そのような「目」をもらう取り引きができるのなら・・・と想像してみるが・・・、何事も起こらない平穏と平凡から抜け出すのが恐い私には、その取り引きに乗る意気地はないだろうと思う。



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