2015-03-28

ラピスラズリ : 山尾悠子

『ラピスラズリ』 山尾悠子

 「冬眠者」をめぐる連作。

 3枚の古びた銅版画から物語は始まる。深夜営業の画廊~夜の闇の中ににぽつんと浮かんだ時間と空間。ひどい睡眠不足で赤い目をした店主の語りに、視線は描かれた情景の中へと沈んでいく。

 人形に見守られて冬の間を眠りつづける「冬眠者」。春に目覚め、秋にはたっぷりの栄養を蓄え、また冬の眠りへ。長い、長い時間繰り返される営みの中に兆すもの~眠りを脅かす火、血、疫病。何かが臨界点に達しようとする気配。そして訪れる混乱と崩壊。

 続く物語は更なる終末の気配を漂わせて語られる。ひたひたと海に浸食されていく廃市。エネルギーを失い静かに停止していくかに見える世界。眠りを見守る人形も朽ち果て・・・。ひとり目覚めてしまった少女は死んだ者を思いながら熱くて甘い苺のジャムを煮込み口にする。遠い幻想の中に語られる物語に何か非常に生な感情が宿る。

 そして、春の物語。名もない若者が目にした祝福。


 読みやすくはない。厚い霧の向こうにみるもどかしい夢のような幻想の世界。しかし確信に満ちたつよい言葉が放つ力で世界はしっかりと編まれている。



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2015-03-21

魔女の世界史 女神信仰からアニメまで : 海野弘

『魔女の世界史 女神信仰からアニメまで』 海野弘

 「魔女」のイメージのビジュアル化とデータベース化が進んだ19世紀末、フェミニズムの活動が「魔女」と結びついた1970年代、ファッション・文芸・音楽・映画・アニメ…様々な文化の中に「魔女」の姿が見られる現代・・・大きく三つの時代に注目し、受けつがれ拡散する「魔女」の遺伝子をたどる。

 本書の中で「魔女」と呼ばれているのがいかなる女たちなのか、実ははっきりとわからないまま読み進めた。「魔女」~“ある時代や文化における既定の枠組みを逸脱した(する)女たち”とでも思っておけば良いだろうか?

 女とは元来何らかの枠内にとらえることのできない「魔女」なのか、それとも、張り巡らされた枠組みを破るために女たちは「魔女」になるのか? というのは気になるところだが、いつまでも「枠」から逃れつづける、決してつかまえることのできない女というのは魅力的であるにちがいない。 

 第4章にはあまりに多様に広がる現代の「魔女」の世界を眺める上で、著者が注目するキーワードが列挙されている。アートやファッション界の実在の「魔女」たち・・・ココ・シャネル、フリーダ・カーロ、マドンナ、レディー・ガガ、人形、パンク、ティム・バートン、ゴス、魔法少女、アガサ・クリスティの名探偵ミス・マープルの衣装はヴィクトリア朝ゴスの究極ファッションであるとか・・・なるほど、この中のどれか一つに注目するだけでも、充分に深くて刺激的な楽しみが得られそうだ。



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2015-03-14

日本〈聖女〉論序説  斎宮・女神・中将姫 : 田中貴子

『日本〈聖女〉論序説 斎宮・女神・中将姫』 田中貴子

 女性に備わった生命を産む力ゆえに女性を神秘な存在であるとする見方、聖性や神秘性は女性に本来的に備わったものであるという考え方に疑問を呈す。

 聖女たちの「聖性」は女性が本来的に持つものではなく、あくまでも社会的、文化的要請によって女性に付与されていったものであるという考えのもと、女性薬「中将湯」にその名を残す中将姫の物語、天皇家と神を結ぶ斎宮たちや、中世の苦悩する女神たちの物語を読み解く。

 物語の中で中将姫が女性ゆえの苦悩を負わされていく過程、天皇家を神を結ぶものである斎宮たちのありかたが時代によって変化していく様子、苦悩する神がなぜ女の神として現れるのかなどを検証しながら、社会的、文化的枠組みのなかで物語の語り手、また物語を受容した人々が「女性」に注いだ視線がいかなるものであるかを明らかにしていく。

 
 この論考中一番の不思議は、最初の数ページ目にあらわれる、少女の頃の著者が(ツムラの)バスクリンを使った風呂に入りながら、母と会話をするくだり。「(ツムラの)中将湯って何」という著者の問いに母がこたえた「血の道の薬」という言葉に幼い著者が感じたショック。

 「聖性」や「神秘性」が社会的・文化的枠組みの中で女性に付与されたものであるなら、それらと表裏一体の関係にあるような女性の「悪業」「けがれ」といったものも文化的な産物であると考えることもできると思うのだが・・・。だとすると、「血の道」といわれてもわけのわからない子供であった著者が感じた『頬に赤黒いものをべたりとなすりつけられたような不快感と、自分とまったくかかわりのない言葉ではないという、漠然とした恐怖』とは何だったのか。



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2015-03-07

『ホビット 決戦のゆくえ』設定画集

 気が付いたときにはもうどうしようもなく好きになってしまっていた、ということはあるもので・・・。


 昨年末、映画『ホビット 決戦のゆくえ』を見た直後は、「面白かったけど、期待したほどではなかったなぁ~」くらいにしか思っていなかったのだ。

 それが、お正月を迎えるころになって・・・ふと目の前をトナカイ(と思っていたがヘラジカらしい)、つづいて太い眉毛がよぎるようになり、「あれ?」と思ったときにはもう寝ても覚めても闇の森のエルフ王・スランドゥイルのことが頭からはなれなくなっていた!

 白金の豊かな髪、優雅な物腰、ノーブルな太眉、鹿、二刀を振るっての鬼神の戦いぶり、不敵な微笑み、傲然とした冷たい表情とその下に隠した愛情深いハート。ああ、もう、スランドゥイル王、闘いの時にはあんなに獰猛な武闘派エルフの王のくせに、あなた、なんでそんなに傷つきやすいんだ。

 「もう一度、王を見たい」「ああ、まだ足りない」・・・と、同じ映画を繰り返し見ることなんてほとんどない私が、スランドゥイルのために4回も劇場に通ってしまった。

 映画公開も終わった今、止まらないスランドゥイル愛を持て余しているっ!!! DVDを入手するまでの間(プレーヤー持ってないのにDVD買う気満々)何か王を思うよすがが欲しい・・・というわけで、本画集を購入。

 結構な大判だし値段も張るし、収納場所もお小遣いも乏しい私にとっては悩ましい買い物だったのだけど、届いた画集にはお値段以上の価値があった。実際に映像に使われたものだけでなく、映像には映らない部分のディティール、世界観を構築していく過程をスケッチやイラスト、デザイン画で見ることができ、そこに注がれた愛情、熱意、おしみなく出されたアイデアに感動する。

 何より嬉しかったのは、デザイナーたちによるスランドゥイル王の妄想戦闘シーンのイラストが収録されていること。映像化はされなかったほどの超人的な戦いぶりが素敵すぎる。添えられるデザイナーたちの言葉も熱い。

 映画にはレゴラスとタウリエルの参戦に加え、戦闘に備えて甲冑に身を固めたスランドゥイルが登場し、観客は怒りと凶暴さをまとい、輝くような真のエルフ王の姿を目にすることができます。


 ピーターから、スランドゥイルの戦闘シーンを大渦巻きのように見せたいというリクエストがありました。彼を「死の渦巻き」に見立てようというわけです。そこで彼の周りに舞い散る雪を動かして、戦いながら突き進む彼の剣が閃光を放ちながら雪と血の渦を巻く様子を描きました。


 こうした(スランドゥイルの戦闘シーンの)アイデアは現れては消えていきましたが、心の目ではこれらが上映されているところを見ることができました。





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