2015-01-31

トーベ・ヤンソン短篇集 黒と白 : トーベ・ヤンソン 冨原眞弓・編・訳 

『トーベ・ヤンソン短篇集 黒と白』 トーベ・ヤンソン 冨原眞弓・編・訳

 現実と幻想の間のような風景・ヴィジョン、制御を離れて縦横に広がり膨らむ幻想・妄想、偏屈で孤独な芸術家、強すぎるこだわり、思い込みのためにともすると現実から浮き上がってしまう人たち、不器用で風変りで不愉快な余所者、どこかぎくしゃくとしたコミュニケーション・・・ 

 終わり方によってはすごく嫌な読後感になりそうな短篇群。しかし、最後に示されるあっけないほどの和解、控えめな理解、共感によって、ほっこり、爽やか・・・とはいかないまでも、哀しみと、諦めと、寛容と・・・何とも、こう・・・複雑な気分にさせられる。

 先日読んだ『エドワード・ゴーリーが愛する12の怪談-憑かれた鏡』の解説によれば、巻末に収録された「黒と白 エドワード・ゴーリーにささぐ」に描かれる、白木とガラスに囲まれた明るすぎる自宅を逃げ出し、古びた別荘に籠もり夢中で怪奇小説の挿絵を描く画家の姿は、『憑かれた鏡』のための仕事をするエドワード・ゴーリーからイメージを得たものであるらしい。



FC2 Blog Ranking
スポンサーサイト

theme : 読書メモ
genre : 本・雑誌

2015-01-24

エドワード・ゴーリーが愛する12の怪談-憑かれた鏡 : エドワード・ゴーリー編

『エドワード・ゴーリーが愛する12の怪談-憑かれた鏡』 エドワード・ゴーリー編

 このブログへのコメントで紹介して頂いた一冊。どんより曇った冬の日に読む怪談も乙なもの。

 禍々しいものが棲みつく曰くつきの家、呪いやまじない、つきまとう亡霊、不吉な夢、謎の影、恐ろしい言い伝え。どれもクラシックな味わいのある12の怪談。各作品の扉をエドワード・ゴーリーの挿絵が飾り、白と黒で描かれたの深い陰影に、じくじくと暗鬱な気分、不吉な予感がしみだしてくる。

 因縁や真相めいたものを語ることなくポンと放り出された怪異に震える。雨模様の湿って陰鬱な町の様子、森や岩場に蟠る闇、郊外の丈高い草が生い茂る丘や林の木々をざわめかせる風・・・描かれる風景の不穏さにも気分がざわめきます。

 しかし、超常的な怪異そのものよりも、怪異に関わる人たちの異様さの方が恐い。自分から嬉々として幽霊屋敷に乗り込んでおきながら、振り切れた怖がりっぷりを見せる「空家」のジュリア叔母とか、「信号手」の男の沈みっぷり、「判事の家」に棲むものの度外れた邪悪さ、「古代文字の秘法」カーズウェル氏の逆恨み具合と恐るべき偏執ぶりとか・・・。




この本を紹介していただいたリネさま

ゴーリーの挿絵や翻訳の良さもあるのでしょうが、とても雰囲気を楽しめる短篇集でした。
ありがとうございました。

FC2 Blog Ranking

theme : 読書メモ
genre : 本・雑誌

2015-01-17

異性 : 角田光代・穂村弘

『異性』 角田光代・穂村弘

 角田光代さんがご自身の体感として書いている感情や感覚、女性にみられる傾向などが、なかなか私の中には見当たらない場合もあり、やっぱり「男性は○○」「女性は☆☆」っていうふうに単純に割り切れるものじゃないよなぁ~とは当然思う。角田さん、穂村さんのお二人も、なにか結論めいたことを語るわけではない。ただ、女性である角田光代さんと男性である穂村弘さんが互いの話を受けて問い、語り、自問するその言葉に、「うっわ、そうなんだ?!」 「なるほど、そういうことか!」と驚いたり、膝を打ったりすることがある。

 ひとつには、「おごり/割り勘」問題。「おごってもらうのが当然と思っている女」「割り勘女」「おごるのを当然とする男」「割り勘男」。そもそも、なぜそのような差異が発生するのか? それぞれのタイプの生態は? そこに容姿の美醜は関係するのか? 単なる運か? 四者の間の関係性は? ご自身の体験、身近な人たちの言葉、態度を反芻しながら、「おごり/割り勘」問題の諸様相をひもといていくくだりはスリリングでさえある。ことは、私が思っていたような「女性の自立心の問題」なんてつまんないものではないようである。
 
 そしてもうひとつ「目からウロコ」であったのは、男女の「所有感覚」の差異について。男はある対象を見たり、思い浮かべたり、名前を唱えるだけで、それを「所有」することができる。そうかぁ・・・、そうなのかぁ・・・。



FC2 Blog Ranking

theme : 読書メモ
genre : 本・雑誌

2015-01-10

ゴロツキはいつも食卓を襲う-フード理論とステレオタイプフード50 : 福田里香 オノ・ナツメ挿画

『ゴロツキはいつも食卓を襲う フード理論とステレオタイプフード50』 福田里香 オノ・ナツメ挿画

 とにかく、オノ・ナツメさんの描く表紙が目に飛び込んできた。

 「数多くの物語の中で、慣用句のように繰り返され、多くの人に判で押したように同じ印象が浸透しているフード表現」=「ステレオタイプフード」50例についてさまざまに語ったエッセイ集。

 この本、各章のタイトルとそこに添えられたオノ・ナツメさんのイラストだけでほぼ完結してるんじゃなかろうか? タイトルを目にするだけで、そういう食べ物にまつわるステレオタイプなシーンの記憶やイメージは次々と溢れてくるし、オノ・ナツメさんのイラストはそんなイメージや記憶をスタイリッシュに彩って、気分を高めてくれる。

 ところが、各章の内容を読んでいくほど、その鮮やかな印象がぼやけてくるのだ。広がるでも、深まるでも、新たな視点を与えられるでもなく、ぼやける。なんでそうなるかっていうと、多分、著者が例として挙げる「ステレオタイプフード」が登場する場面や、その場面に続く展開が、ほんの少し、ホントにわずかに私の頭に沸いてくるイメージや記憶とずれているから。

 例えば、第46章「事件についうっかり目を奪われると、食べこぼす」で列挙される「目を奪われる事件」の例の中に「目の前に現れる宇宙人」「派手に喧嘩するカップル」「世にも珍しい動物」「テレビで流れる予想外の仰天ニュース」があるのに、「とびきりの美人が通り過ぎる」がないのは私としては納得できない。(ちなみに「派手に喧嘩するカップル」に目を奪われて食べこぼすというシーンの記憶は私の中にはない。)「美人」云々については実は次の第47章「美人についうっかりみとれると、調味料をかけすぎる」でとりあげられているのだが、う~ん、やっぱり・・・何か微妙にズレるんである。

 著者は「それが登場する具体的な作品名や前後の場面を明確に思いだすことはできないが、確かに過去に何度も見たという記憶があるフードシーン」を「ステレオタイプフード」と呼んで、具体的な作品名や場面を提示することなく、ただ多くの人の共感をたよりに語っているわけだから、著者との間に共感が薄いと印象がぼやけてしまうのは仕方がない。

 私がもっとも飲み込みづらい違和感を感じたのは、第7章「賄賂は、菓子折りの中に忍ばせる」で、「甘いお菓子」のアイコン性について「かわいくて、たわいなく人畜無害なもの」と「誘惑、欲望、快楽、陶酔」という二つの面を示し、後者の例として章タイトルでもある「賄賂を忍ばせた菓子折り」を挙げていること。

 それはちょっと違う。この場面において、「誘惑、欲望、快楽」を表しているのはやはり「賄賂=小判」そのものであって、「菓子」の役どころはそれを包み隠す「善良で穏当なもの」である。小判を指す隠語「山吹色の菓子」についてもしかり。

 「菓子」そのものを「誘惑、欲望、快楽、陶酔」を表すものとして登場させるなら・・・たとえば、ショーケースの中でお子様や女子たちの視線を釘づけにするケーキや高級チョコ、少女が口のまわりを真っ赤にして頬張るチェリーパイ、美女が思わせぶりな目つきで口にするクリームたっぷりのケーキとか色鮮やかなフルーツ・・・なんてことだと思うんだけど?



FC2 Blog Ranking

theme : 読書メモ
genre : 本・雑誌

2015-01-03

サブカルで食う : 大槻ケンヂ

『サブカルで食う 就職せず好きなことだけやって生きていく方法』 大槻ケンヂ

 「サブカルで食う」・・・自分のちょっとマニアックな趣味や知識をお金にかえて、ユルく自由に生きていくなんてウハウハなことではなく・・・、堅い会社勤めも、アーティストや起業家としての自立も、その日その日の糧を得るためのバイトさえできなくても、なんとか自分のできることで口に糊して生き延びよう、そしてなろうことなら大人になろうという、しょっぱくて切ない話。

 「けっこうしんどいこともあるよ」「いわゆる普通のお勤めをした方が楽かもよ」「やめ時ってのも考えておいた方がいいよ」「『サブカル』以外にもできることあるんじゃないの?」ってポツポツ漏らしながらも、現実を前に途方に暮れる(とは言え、実はオーケンより器用に世の中を渡っているのかもしれない)「サブカルで食いたい君」たちのために我が身を削っているオーケンが、何だか自分の顔をちぎって差し出すアンパンマンに見える。ちょっと伏し目がちで汚れたアンパンマン。

 ああ・・・、私の身体と命を養ってくれたのは父の給料であり、母のごはんだったけれども、私の魂を守り、生き延びさせてくれたのは、オーケンであり、中島らもさんであり、西炯子さんであったなぁ。

 しばらく読んでいなかったオーケンのブログを改めてブックマークした。

FC2 Blog Ranking

theme : 読書メモ
genre : 本・雑誌

プロフィール

やぶからねこ

Author:やぶからねこ

FC2ブログランキング

FC2ブログランキング

ブログランキング
にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村 漫画ブログへ
カテゴリー
最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
検索フォーム
カレンダー
12 | 2015/01 | 02
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
魂に喰い込んでます
月別アーカイブ
Powered By FC2ブログ

Powered By FC2ブログ
ブログやるならFC2ブログ