2014-11-29

フォグ・ハイダ - The Fog Hider : 森博嗣

『フォグ・ハイダ The Fog Hider』 森博嗣

 『ヴォイド・シェイパ The Void Shaper』シリーズ4作目。峠道で盗賊に襲われるゼン。ゼンを凌ぐ腕をもつ盗賊の用心棒・キクラ。キクラをつけ狙う侍の一群。霧の立ち籠める山中でゼンが戦う。

 前作『スカル・ブレーカ - The Skull Breaker』で、ゼンの在り方、佇まい、人との関わり方が変わり始めたと感じた。今作は、その物語の『転』を受けての新たな『承』というところだろうか。

 ひたすら「私」という存在について思考し、合理的な答えを見出そうとするゼンの中で、「私」というものは世界の中にポツリと存在するものから、世間の様々な関係、思惑の中に在るものへと変わってきた。同時にゼンはまた理屈では割り切れない「感情」というものを知る。ゼンの無垢な思考に経験からもたらされたものが加わっていく。答えを求めて剣を振る。剣がもたらす生と死の中に身を置く。


 ところで、『スカル・ブレーカ』に登場した侍・チハヤが今作ではゼンと行動を共にし、共に戦う。陽気で豪快でちょっと大雑把な感じのするチハヤが、実はゼンと同じくらいに腕が立ち、ゼンに劣らず思索的な男であることが判明して・・・。参った、いわゆる「思わぬギャップにドキドキする」ってやつか。俄にゼンより気になる存在になってきた!



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2014-11-22

ゲニウス・ロキ 異形建築家阿修羅帖控 : 田邊剛

『ゲニウス・ロキ 異形建築家阿修羅帖控』 田邊剛

 横分けの短髪、丸眼鏡、白シャツ腕まくり、サスペンダー、チョッキ、革のブーツ、外出時にかむっているのは山高帽かパナマ帽か?ツバの広いちょっと変わったデザインの帽子・・・帝大教授にして妖怪ハンターの異形建築家・伊東忠太の容姿・服装が私の妄想どおりで嬉しい。まさに「見たかったものを見せてもらった」という感じ。

 ただ、画の書き込みは凄いんだけど(書き込みが凄すぎて何が描かれているのかわかりづらいくらいに)、ストーリーの書き込みの方がもうちょっと・・・。地霊、神獣、怨霊、妖怪、精霊・・・忠太が相対する「この世ならぬものたち」が一体どういう存在のものであるのか・・・とか、それらを阿修羅帖に封印するさいに使っている術や道具がどういう理屈で作動しているのか・・・だとか。オカルティックな現象に対しての説明があっさりしすぎ(もしくは皆無)で、いまひとつ興が乗らない。

 ウソでもいい、本当らしい蘊蓄で私をすっかり丸め込んでほしかった・・・と思うのは、京極堂の流儀に染まりすぎているせいかなぁ。

 あとね、建築家としての側面ももっと生かしてほしかったな、とか。建築家としての仕事をしているのは第一話だけだもの。(第2話も建物が関わる話ではあるけれど)

 とは言いつつ、第4話「妖怪百鬼夜行絵巻」で、大学の新年会を抜け出し付喪神たちと交わって楽しそうにしている忠太の姿は愛しくて、「続編があるといいなぁ」とか思います。



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2014-11-15

伊東忠太を知っていますか : 鈴木博之編著

『伊東忠太を知っていますか』 鈴木博之編著

 今思えば随分貴重な体験なのだけど、学生時代に所属していたクラブの催しで伊東忠太の設計による兼松講堂を何度か使わせていただいたことがある。講堂内を一人でうろついているときに、内階段のあたりで視界の隅に何だか変な鳥がいるのにギョッとして振り返った・・・というのが伊東忠太の怪物との出会いだったのだ。以来、忠太の怪物が気にかかる。(しかし、以前のエントリーにも書いたと思うけど、このあたりの記憶は多分にファンタジー化してしまっていて、「夢だったのかも知れない」と思うこともある。もう一度、兼松講堂を訪ねて事実を確認したいものである。)

 本書は2003年に開催された展覧会『建築家・伊東忠太の世界展』を記念して出版されたもの。明治期に国家の要請を受けて建築史を体系化し、美術としての建築の概念を構築した建築史家であり、玄人はだしの腕を持つ絵師であり、アジアからインド~中東~欧州と建築を調査しながらの大旅行を敢行し、妖怪の棲みついた奇妙な建物を造った建築家・伊東忠太の多様で多面的で奇怪な全体像に近づくべく色々なアプローチがなされている。その学者としての思想や個人的嗜好について、建築作品について、妖怪趣味について、世界旅行の記録、手書きのフィールドノートや受講ノート、設計図の図版など。

 近代化する日本の建築をひっぱっていく立場にあって、合理性や機能性では割り切れなかった伊東忠太の「私的全体性」を象徴するのがあの「妖怪」なのか・・・。

 残念ながら、建築の知識が全くない私には内容をちゃんと理解するのが難しく、「妖怪」+「調査の為の世界旅行」で、どうしてもインディ・ジョーンズ的な姿を想像してしまう。もっぱら忠太の怪物が見たい私には、怪物たちの写真がいっぱいの『伊東忠太動物園』の方が面白い。


『伊東忠太動物園』感想・・・http://neconohitai.blog71.fc2.com/blog-entry-521.html



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2014-11-08

魔風海峡―死闘! 真田忍法団対高麗七忍衆 : 荒山徹

『魔風海峡―死闘!真田忍法団対高麗七忍衆』 荒山徹

 槇えびしさんの『朱黒の仁』をきっかけに、中村彰彦『真田三代風雲録』、柴田錬三郎『柴錬立川文庫』と読んでみた真田モノ。荒山徹で止めを刺します。

 太閤秀吉の死が間近に迫るなか、豊臣家存続のため石田三成の命を受けて任那日本府の埋蔵金を持ち帰るべく海を渡る真田幸村と十勇士(の内の七人)。それを阻まんとする徳川家康の差し金で朝鮮に送り込まれた服部半蔵とともに悲運の王子・臨海君と朝鮮忍者・檀奇七忍衆も任那の黄金を狙い動き出す。

 ストーリーはもう・・・サブタイトルの通り。任那の黄金をめぐって延々と繰り返される、幸村率いる猿飛佐助、霧隠才蔵、百合鎌之介、根津甚八、筧十蔵、海野六郎、望月小六郎ら真田忍びと、臨海君を頂く檀奇七忍衆の死闘。物語の緩急とかおかまいなしにアクセル踏みっぱなしな感じで、なんだかとてもガチャガチャしてる。これがデビュー二作目とのことだけど、本作に比べるとその後の作品で描かれる戦いは荒唐無稽、無茶苦茶な展開に見えて実は随分洗練されていたんだなぁ。

 檀奇七忍衆の操る「それはもう忍法の範疇じゃないだろう?」というレベルの忍法が幸村一行を襲い、戦いは酸鼻を極める。荒山作品における戦闘はどんなに凄惨、無惨であっても、そこに漂う可笑しみが読んでるこちらの救いになっていたんだけど、本作にはそういう救いもない。

 わずかに可笑しいといえば、荒山作品らしく美形が安売りされているところか。しなやかな獣の如き野性的な美青年である佐助、貴族的で秀麗な才蔵、他人の顔に化ける忍術の副作用でとんでもない美貌に変じてしまった甚八、朝鮮側にも裏花郎の美童・沙羅骨忽覩、肌も瞳も唇も鼻も眉も女性美の極みにある伽耶婦人。美形といえどもこれだけ安売りされればちっとも有り難くないところが何とも・・・(佐助だけは何か特別な感じはするけどね)。

 真田幸村と十勇士が主役だろうと思って読み始めたのだけど、主役というには幸村のキャラクターがいまひとつはっきりしない。任那の黄金を狙う動機にしても、臨海君一味に比べて真田側の方が弱い・・・よなぁ。

 あれ?

 幸村は主役じゃなくて臨海君へのあて馬だったのか! 



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2014-11-01

柴錬立川文庫 : 柴田錬三郎

『柴錬立川文庫』 柴田錬三郎

 せっかくだから、も少し真田モノを読もう。続いては幸村の下で猿飛佐助に霧隠才蔵、三好清海入道らが活躍する『柴錬立川文庫』を。

 「猿飛佐助」「淀君」「真田大助」「後藤又兵衛」「木村重成」「山田長政」等のタイトルで語られる小話がつながり、モザイク画のように「大坂の陣」に至るドラマが描かれていく。

 霧隠才蔵や三好青海の、主に忠誠を尽くすなんてのには程遠い自己主張の激しいはねっかえりぶりが愉快。大坂城中の女を夢中にさせたという幸村の美丈夫ぶりや、古今に冠絶という木村重成の秀麗な容姿、異国人である才蔵の蒼い瞳に、三好青海のこれまたきれいに整った顔。忍、荒武者、兵法家たちの死闘、激闘に、裏の裏をかく化かし合い、多少悪趣味なエロティシズム。劇画的な面白さ満載の上に、話と話の隙間にさらに妄想をたくましくする余地もありそうで楽しい。

 ひとクセもふたクセもある猛者たち~真田十勇士を従える幸村はしかし、智謀に長け、鬼神の如き戦いぶりを見せる名将というよりも、戦の行く末、世のなりゆきを冷たい目で見つめる虚無的な男で・・・。

 この虚無的な幸村と、心優しく善良な気性の佐助というとりあわせが絶妙で、絶対に明るい結末には向かわないドラマの中で、さらさらとした佐助の明るさが無性に切なくなります。人を殺すことを嫌う佐助が大坂夏の陣の激戦の中で何十もの人を斬ってめずらしく興奮の面持ち・・・という、ほんの数行の描写は切なさの極み!


 ところで、私は子供の頃、この『柴錬立川文庫』を原作としたNHKの人形劇『真田十勇士』をけっこう楽しみに見ていたらしい。「山川草木敵味方~」「空は輝く南無八幡」等、小児のボキャブラリーには無いはずの主題歌の歌詞を部分的に覚えている。ストーリーの方はほとんど記憶にないのだけど、なぜか幸村の嫁選びのエピソードだけは良く覚えている(といっても、これが本当に『真田十勇士』の記憶なのかどうかビミョウなんだけど)。

 花嫁候補として集まった女たちに「笑ってみせろ」という幸村。一人は面白くもないのに笑えぬと言い、一人は咲きこぼれる花のように艶やかに笑い、もう一人は上手く笑えず涙を浮かべながらも健気に笑顔をつくってみせる。幸村は華やかに笑ってみせた美女に心惹かれながらも、一生懸命笑顔を作ったあまり美しくない女を妻に選ぶ。
 
 このエピソードを見て私は子供ながらに「幸村ってすごく嫌な男だ」と思ったのだった。男に対する嗅覚は子供の頃の方が今よりも確かだったかもしれない。




 ここでも、やっぱり後藤又兵衛はかっこ良かった。

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