2014-10-25

真田三代風雲録 : 中村彰彦

 槇えびしさんの『朱黒の仁』を表紙買いしてしまったものの、私、真田幸村については「『大坂の陣』で凄かった人」という程度のホントうっすらとした情報と感想しか持っていない。まして、幸村以前のことなんて何も知らない。

 『朱黒の仁』を楽しむためにも真田氏に関するものを何か読んでおこうと思ってまず手に取ったのは『真田氏三代―真田は日本一の兵』という評伝だったのだけど、これはちょっと硬派すぎてちっともページがはかどらない。で、「やっぱり小説にしよう」と読み始めたのがこの『真田三代風雲録』

 武田信玄に仕えて頭角をあらわした幸隆。数多の戦国大名たちを制圧した秀吉と家康の力が拮抗する中、真田家を存続させ戦い抜いた昌幸。『大坂の陣』で凄まじい闘いぶりを見せ、その名を不朽のものとした幸村。

 それぞれに鋭い戦略眼と豪胆さをもった傑物として描かれて、アツい気持ちで読み進めることができるのだけど、あまりフィクショナルに物語をふくらませた感じはなく、戦国時代の勢力図の中での真田氏の立場、三代にわたる戦いぶりをざっくりと眺めるにはちょうど良い小説だったかも。

 それにしても、『戦国BASARA』で幸村が武田信玄にくっついているのはなんでだろう? っていう、まぁどうでもいいっちゃどうでもよかった疑問も解けてすっきりした。なるほど、真田氏って武田家の家臣となって後世に名を知らしめた一族だったのね。ホント、そんなことも知らないレベルだったのです。

 へへへ、あとは『朱黒の仁』の完結を楽しみに待ちますか。

 ちなみに私が表紙買いしたのはこちら↓角川版ですが、



掲載誌が変わったため、現在は新装版で弐巻まで出ています。



 『朱黒の仁』でも、『真田三代風雲録』でも、後藤又兵衛がかっこ良いです。





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tag : 真田幸村

2014-10-18

リテラリーゴシック・イン・ジャパン 文学的ゴシック作品選 : 高原英理編

『リテラリーゴシック・イン・ジャパン 文学的ゴシック作品選』  高原英理編

 「リテラリーゴシック」~「文学」の形をとって具現化された「ゴシックなるもの」。中世風の怪奇趣味に彩られた「ゴシックロマンス」の枠組みにとらわれず、「暗黒」「不穏」「残酷」「耽美」「可憐」を重要な要素とし、『人間の持つ暗黒面への興味』『恐怖や残酷さへの思惟』から生まれた短篇作品を集めたアンソロジー。

 日本文学における「ゴシック」の黎明期の作品として泉鏡花、他。猟奇と怪奇を語る戦前ミステリの中から乱歩、横溝、小栗虫太郎。『血と薔薇』の一群から澁澤、三島、塚本邦夫、中井英夫、他。60~90年代の幻想文学から須永朝彦、葛原妙子、赤江瀑、山尾悠子、古井由吉、皆川博子、久世光彦、他。そして、乙一、伊藤計劃、桜庭一樹、京極夏彦、小川洋子、大槻ケンヂ、編者である高原英理らによる「ゴシック」の現在。

 錚々たる名前が連なる中で、石の都の廃墟と化した世界で愛の内に閉じて歩き続ける二人の男女と二人を囲んで行軍する死の群れを語る、絵画的あるいはある種の舞踏的な山尾悠子の『傳説』~美しくも恐ろしげなヴィジョンをともなって想念が自在にうねる古井由吉『眉雨』と続くあたりが圧巻だった。

 実は古井由吉の『眉雨』は収録作品中いちばん訳のわからない作品だったのだが、いちばん酷く私を引っ掻いていったのもこの『眉雨』だった。

『いよいよ間近に迫った事態を、実現するよりも先に、現実よりも生々しく聞き取り、聞き奪って、阻止する。身の内の恐怖を、血のにおいよりも濃く煮つめて凝固させ、その中に敵の来襲を封じる。』

『厄災の到達をぎりぎりまで、見ることの恐怖、見る側の恐怖の力によって押し留め、その猶予の間に、寄せる敵勢の源にあるはずの、攻めの恐怖を鼓舞する熱狂に、なろうことなら、ひとすじの太い視線の針を立てる。』


 恐れること~恐怖する力を極限まで高めることで、恐るべきもの、厄災の到来を阻止するという着想に震えた。

 世界と自分自身の奥底にある暗がりを見つめ続けるものだけが「ゴシックなるもの」を作品として取り出すことができる。暗がりを見つめ続ける熱狂と、暗がりにあるものを見極め、暴く明晰さ。その明晰さが残酷・・・であるような気がする。


 ところで、本アンソロジーのおかげで気になっていた謎が一つ解けた。

 以前、こちらのエントリーにも書いたのだけど、梶井基次郎の「Kの昇天」について私は「Kが月へ登っていった後の浜辺には、Kの義眼が残っていた」という妙な記憶違いをしていた。

 なんでそんな記憶違いを? と思っていたのだけど・・・

 海辺の別荘に病身を養う青年、月、砂浜・・・そんな共通するイメージのせいで、「Kの昇天」と横溝正史の「かいやぐら物語」が綯交ぜになっていたらしい。「かいやぐら物語」の最後に描かれる月光を透かしたガラスの義眼が、私の記憶の中でKの義眼になっていたのだ。



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2014-10-11

じつは、わたくしこういうものです : クラフト・エヴィング商會

『じつは、わたくしこういうものです』 クラフト・エヴィング商會

 「月光の密売」「極小音楽の作曲」「大切な時間の保管」「「ひらめきランプの交換」「大変ことになってしまったワインのコルク栓のレスキュー」・・・等々、不思議な仕事を生業とする人たち。それぞれの仕事道具を手にした姿や独特なアイテムの写真とともに、仕事との出会い、こだわり、仕事上のちょっとしたコツなど、仕事師たちへのインタビューを収めた架空のお仕事図鑑。

 多分この世のものではない仕事が存在する世界にうっとりと酔いたいと思うけれども、「不思議な仕事たち」の幻想性と、その仕事師としてポートレートにおさまっている人たちの「現実にちゃんとしている社会人的存在感」の強さが何だかそぐわない気がして、上手くハマれない。むしろ、巻末に収録された「じつは、わたくしほんとうはこういうものです」~この本でモデルをつとめた人たちの本当のプロフィールを、それぞれの方の顔写真と見比べながら読む方が味わい深かったり・・・。

 そんな中で、冷たい水をたたえた塔の守り人「冷水塔守」は、その仕事を「任務」と呼ぶ女性仕事師の佇まいと、水の塔を守るという仕事の異次元っぽさが妙にマッチしてその不思議な感じが心地よかったのだが、「冷水塔守」星加見子に扮しているのは小説家の小川洋子さんだった(「じつは、わたくしほんとうはこういうものです」を読んで気づいた)。

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 一読したときにはちょっとギクシャクして充分にこの世界を楽しめなかったんだけど、一度巻末のタネ明かしまで読んで再度読み返すと、もう少し柔らかに「ああ、いいな」と感じられるところが増えた。「白シャツ工房」の仕立て屋さんにはいつかお会いできるといいなと思う。



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2014-10-04

百鬼園百物語  百けん怪異小品集 : 内田百けん 東雅夫編

『百鬼園百物語: 百けん怪異小品集』  内田百けん 東雅夫編

 巨大な鰻が濠の水の中から街の往来へずるりと這い出してくる・・・この奇妙な光景が頭をよぎる度に、「これは夢か何かで見たんだったかなぁ」とぼやぼや思ったりしていたが・・・そうか、内田百けんの「東京日記」で読んだ場面だったんだ。

 そもそも私は水中の生きものに何か生理的な恐怖でも抱いているものか、ゆったりと山間を流れる川の淵のようになったところを何となく眺めていたら、川底に5メートルはあろうかという正体不明の魚の影がいくつもゆらめいているのが見えてゾッとしただとか、近所の川を泳いでいる魚たちが寄り集まって群れになったかと思うと巨大な山椒魚のような姿になって這い出してきたとかいう夢をよく見る。うちの近所の川を泳いでいる50センチくらいのわりと大きな鯉だかなんだかよくわからない魚を見ても何か気味悪いな~と思う。

 いつ読んだものかすっかり忘れていたけど、百けん先生がさらりと書いてみせた夕暮れの東京のシュールな光景は、恐ろしい水中生物の夢をよく見る私に、もう一つの悪夢の光景としてやきついちゃっていたのだ。でも、怪物めいた水中の生きものを夢に(現実でも)見て背筋を走る“ゾォ~”という感覚は恐怖であると同時になんとも言えない快感であるような気もしている。


 日常の風景の先にとんでもないシュールをあまりに平然と描いてしまう百けん先生の剛腕はやっぱり凄まじい。シュールの流入で現実が危うくなったその上に、その剛腕ぶりと表裏一体であるかのような百けん先生のこれまた並はずれた怯えが伝染してきて、何とも落ち着かない心持ちにさせられる。

 一つ一つの作品がつながり、重なりながらより妖しく怪異が醸成されていく・・・百物語の形式にこだわって編まれた小品集。



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