2014-07-26

長州シックス ― 夢をかなえた白熊 : 荒山徹

『長州シックス 夢をかなえた白熊』 荒山徹

 「夢をかなえた白熊」だの、「ひょっとこ葉武太郎」だの、「腰撫で襦袢」だの、なんか人をくったような副題が並んでるのを見ると、嬉しいんだか、イラつくんだかわかんない気持ちになって、「う~ん、荒山、荒山」と唱えてしまう。

 欧州への密航留学生「長州ファイブ」には知られざるもう一人の同行者がいた。毛利公の落とし胤だという彼、白石阿定(しろいしくまさだ 通称シロクマ)がロンドンでかなえた夢とは?・・・「長州シックス 夢をかなえた白熊」

 富山藩から英語習得のため江戸に派遣された潤間寅之祐。彼の必死の体当たり英語修行と〝あの事件”との意外な関係。・・・「ウルトラ・ダラー 幕末英語教育事始」

 蛤御門の変で両手両足を失った足軽の葉武太郎は、いつしか「軍神」と崇められ・・・「シュニィユ ひょっとこ葉武太郎伝」

 身につけた者を辛抱たまらん気持ちにさせる「腰撫で襦袢」をめぐる奇妙な仇討譚とそれに熱狂した人々・・・「トゥ・バ・ビヤン 腰撫で襦袢伝奇」

 「五箇条の御誓文」はなぜ四条でも六条でもなく「五条」でなければならなかったのか・・・「ファイヴ・アーティクルズ 維新の魁」

 「ファイヴ・アーティクルズ」は「五条」という一点に奇想を盛り込みつつも、天誅組の乱の顛末を語る硬派な歴史短編だったが、それ以外の四篇についてはいつもながら、あんまりなネタの投入に「そんなバカな!」とクラクラしてしまう。しかし、どれも〝うまいことできてる”んである、嘘と史実がごちゃまぜになった幕末小話として。

 幕末という動乱の時代にも人がそれぞれものを思い、ものを食い、日々を暮した日常はあったはずで、ちょっと馬鹿馬鹿しくもあるこれらの話の裏に、そんな浮世の有様を思うと何だかしんみりしてしまう。

 激動の幕末を彩る大事件の陰に語られる・・・おもしろうてやがてかなしき法螺話。




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2014-07-19

どこかにいってしまったものたち : クラフト・エヴィング商會

『どこかにいってしまったものたち』 クラフト・エヴィング商會 

 「硝子蝙蝠」「記憶粉」と、『探偵青猫』に登場するアイテムがいきなり二つ続いたものだから、……ちょっと興奮した。『青猫』では、「硝子蝙蝠」はここに記されているような不思議機械ではなく、美を愛する怪盗の通り名になっているのだけど。

 『青猫』を描いた本仁氏も、このクラフト・エヴィング商會の不在品目録を見てたまらない気持ちになったんだろうか? 実在したのかどうかもわからない品々。ただ、残された断片からそのものを思うだけで何かうっとりとした、たまらない気持ちになる。思えば、孤島の城に住む怪盗、純情で惚れっぽい刑事、粋な女衒、異才の少年贋作師に、優雅でスマートな貴族探偵が大活躍する『青猫』の物語も「どこかにいってしまったものたち」の一つなのか・・・。

 月光をあつめて撃ち出す光線銃。グラスに流星を溶かして味わうシロップソーダ。水蜜桃の食べごろを調査する猿型機械。「あるひとつの夜を忠実に記録し再生する」機械の終わらない解説書。明治、大正、昭和と「不思議な品」を扱ってきたクラフト・エヴィング商會の引き出しに、記録とその断片だけを残して今はもう無い、どこかにいってしまったものたち。見知らぬはずなのに懐かしく胸をしめつける品々。




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2014-07-12

文系のための理系読書術 : 齋藤孝

『文系のための理系読書術』 齋藤孝

 大学卒業後の2年間、プログラマーとして働いていたことがある。大学での勉強も、その年頃のうちにやっておくべき自分探しも、就職活動も真面目にやらなかったために、卒業後に食べてくための仕事がない!ってことになりかけてたところ、当時大量採用のあったソフトウェア開発の会社になんとか拾ってもらったのだ。

 文系出身のなんちゃってプログラマーである私が組むプログラムは、自分でも嫌になるほど日本語の文章に直訳可能なモタモタした代物だったのだけど、理系出身の先輩社員が書いたプログラムはあまりにシャープで、私の頭では日本語に翻訳できなかった。(つまり、日本語の文章で物事を考えちゃう私にはそのプログラムを読むことができなかった。)学生時代には「苦手科目」として目をそらし続けてきた理系の凄さを実生活で味わった瞬間だった。

 そんな「理系」へのコンプレックスに凝り固まった頭に『文系の人のアドバンテージは「本が読めること」』という一言で風穴をあけてくれる本書。文系の人だって「本を読む」という形でなら理系の知識に触れることができる。たしかに著者のこの一言がもたらしてくれた気づきと希望は大きい。

 しかし・・・読み進めるうちに理系の世界に触れられるかもしれないワクワク感よりも、打ちのめされ感の方が強くなってきたのも事実。理系分野で成果を出しつつ文系の人にも解りやすくその世界を文章で解説できる才能の存在を思い知らされたり、「文系の人にもとっつきやすい著者おすすめの理系本」からの引用文がすでに理解できなかったり・・・。

 教科としての数学が苦手だった人でも日常の思考様式として数学を活用することはできると言うけれども・・・ 最近、九九がちゃんと言えなくなってきたんだけど、それでも大丈夫ですか?




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2014-07-05

岸辺露伴は動かない : 荒木飛呂彦

『岸辺露伴は動かない』 荒木飛呂彦

  「リアル」を問題にする漫画家・岸辺露伴が取材中に遭遇する怪異。土と血と木々と水の匂いのする、ちょっと重めの怖い話ですが、露伴先生の折れない探究心が何だか清涼剤的な・・・。「懺悔室」以外では岸辺露伴、かなり動いてますよね。

  「懺悔室」の意外な結末、「六壁坂」の妖怪の奇妙な生態、「富豪村」「密漁海岸」における奇怪な現象、高級ブランド服を難なく着こなす「グッチに行く」の露伴先生・・・どの話にも驚異と奇観があって、すべてのコマがこってりと濃い。各話の扉や「グッチに行く」がカラーじゃないのは残念だけど。

 ただねぇ、面白さとしては文句ないんだけど、実は「六壁坂」の妖怪話、微妙に納得できないのだ。露伴先生の話を信じるならば、妖怪取材の為に露伴先生が買った山に、今も大郷家の人たちは住んでるってことですよねぇ。土地の富豪でしかも妖怪を匿っているような大郷家の人たちが? 他人の土地に? 何か変ではない? あの話は、破産しちゃった上に妖怪にも出会えなかった露伴先生のくやしまぎれの創作だッッ・・・て思っちゃダメ?




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