2014-06-28

アルモニア・ディアボリカ : 皆川博子

『アルモニカ・ディアボリカ』 皆川博子

 外科医ダニエル・バートンの解剖室に現れた不可解な屍体をめぐるミステリ『開かせていただき光栄です』の続編。アル、ベン、クラレンスらバートンズに詩人志望のネイサン、盲目の治安判事ジョン・フィールディングとその助手アンが再び登場。『ベツレヘムの子よ、よみがえれ アルモニカ・ディアボリカ』・・・胸に暗号を記された天使の如き屍体の謎に挑む。

 先の事件から5年・・・決して明るいとは言えない時代、汚れた街の中でも意気揚々としていた若者たちも、消えることのない痛みと苦さを抱く大人になった。「アルモニカ・ディアボリカ」・・・謎の言葉と屍体が秘めた真実を追う中で、アルたちは先の事件以来姿を消したかつての仲間ナイジェル・ハートの凄惨な過去に触れる。

 正直に言って、『開かせていただき光栄です』と比べても、ミステリとしての緻密さには欠ける気がする。アルたちの前に次々と現れる事件の関係者たちの登場ぶりは唐突というか都合がよすぎる感じがするし、盲目の判事サー・ジョンの推理によって進む事件の解明も少々強引なのではと思えてしまう。

 ただ、『開かせていただき光栄です』が鮮やかな青春小説だったように、この作品がミステリ仕立てで描こうとしたのは、誰かの幸せを願う人の心の哀しさ、美しさ ~ 愛する人の為にその身と心を犠牲にしつづけたディーフェンベイカー氏、公平な捜査と判決のために尽くすサー・ジョン、ナイジェルのために罪を犯したエド、そのエドに寄添おうとしたクラレンス・・・その「献身」なのではないだろうか。


『開かせていただき光栄です』感想・・・http://neconohitai.blog71.fc2.com/blog-entry-577.html




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2014-06-21

朱黒の仁~壱~ : 槇えびし

『朱黒の仁』 槇えびし

 本屋の店頭で見かけた表紙絵の色合いに惹かれて購入。そういえば、この作者の作品、前にも一度表紙買いしたこがある。『きみにあげる。』という、こちらはBL作品。静かで艶めかしい色合いの表紙絵に気持ちがざわざわして、何か目がはなせなくなったんである。

 さて、あらためて『朱黒の仁』。真田信之、幸村兄弟の死に様を描くという。困った、真田幸村のことってあんまり知らない。子供の頃に見たNHK人形劇『真田十勇士』がうっすら記憶にあるくらいか。

 九度山に配流となった幸村のもとに大阪城の秀頼からの使者が訪れる。大阪城入城を決意する幸村と、九度山で育ち武士としての父・幸村と自分自身を知らない息子・大助の戸惑い。

 幸村入城を喜ぶ秀頼の前でその胸の内を吐露する幸村の涙。この作品のテーマとも重なる場面か。幸村の胸にある武人としての切ないまでの熱く激しい想い。激情を秘めた幸村の、そして父の激情を受け継ぐ大助の戦いが、どこか静謐さを湛えて描かれる。

 ところで、一巻発売から随分たっているのに続きの巻を見かけないなぁ・・・と思って調べたら、掲載誌の休刊などで何度か連載が中断していた様子。が、作者のブログによると今月から「Nemuki+」で連載が再開し、コミックも改めて1、2巻が来月発売されるとのこと。

 続きを読む前に、真田氏に関する予備知識とかちょこっと入れとこう。




「Nemuki+」版↓



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tag : 真田幸村

2014-06-14

廃墟少女 : 尚月地

『廃墟少女』 尚月地

 廃墟と少女、幻覚とおじいさん、アングラ芝居のセットのような住処と少女と青空、森と帽子と花と青年。

 レトロでちょっと病的に美しい意匠が山盛り。だけど、耽美的、退廃的かというと必ずしもそうばかりではなく、あくまでも意匠として楽しもうというような軽やかさもある。サイコサスペンスかと思うと、切ないまでの純粋さを描いた作品だったりする。

 しかし、あのごちゃごちゃした廃墟の機械や構造物を描くのが楽しいっていう作者の言葉には心底驚く。私には苦行にしか思えないんだけど。




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2014-06-07

世界中が夕焼け 穂村弘の短歌の秘密 : 山田航・穂村弘

『世界中が夕焼け―穂村弘の短歌の秘密』  山田航・穂村弘

バービーかリカちゃんだろう鍵穴にあたまから突き刺さってるのは
               『手紙魔まみ、夏の引っ越し(ウサギ連れ)』


 鍵穴に頭から突き刺さった人形。山田航氏はこの一首から、鍵穴に人形を突き刺すことによってその扉を開けようとした人物の狂気とも言えるほどの強い意思と、その狂気への作中主体(まみ)の共感を読みとっている。

 通常の方法では開かない『未知の空間』への扉が、リカちゃん人形の首でなら開くかもしれないと思うその切迫感にはゾクリとする。だけどやっぱり、鍵穴にリカちゃん人形を突き刺す人のヒリヒリ感よりも、鍵穴に人形を突き刺しかねない人が、それでもちゃんと鍵穴には鍵を差し込んでいる痛々しさの方が私は好きなのだ。

 ・・・などと思いながら読んでいたが、穂村弘氏がこの歌に込めた情景はもっと壮絶なものであった。バービーもしくはリカちゃん人形は誰かの手で鍵穴に差し込まれたのではなく、その扉を開けるべく自ら命懸けで鍵穴に飛び込んだのだ。歌われたのはそのミッションに殉じた彼女たちの姿。

 何と言うか・・・穂村氏の抱えている欲求は、私が思っているのよりもはるかに強いと、いつものことながら思い知らされる。私の欲求なんて精々“世界の中にいる自分を肯定したい”というとこであるが、穂村氏は世界に呑み込まれない個を希求する。

 穂村氏は、神のような絶対的なものや、世界という無限の広がりを持つものに対して、「夢に出てきたガールフレンドの髪型が中途半端」であったり、「一億年後の誕生日が曇り」であったりする今一歩残念な感じだとか、ドラマ性の無さこそが『個としての人間の尊厳』であるという。
 
 「ちっともドラマチックじゃないこと」や、「世界よりも圧倒的に小さくて有限であること」を武器にしてまで世界に抗いたいという穂村氏の欲求の強さにただ絶句する。

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