2014-01-25

利休にたずねよ

「利休にたずねよ」 監督:田中光敏

 中谷美紀の美しさったら、もう。地を擦るような身のこなし、年老いて腰を曲げて歩く姿にさえ漂う気品、壮絶な美しさ。利休の心にかなう完璧な妻であり続けた彼女のプライド。

 利休・・・何と勝手な男であることか。勝手に美しいものを見つけ、勝手にそれに殉じてしまった。彼の傍にあって、満たされない思いとつき合わされ続けた妻や秀吉は・・・。利休は誰のためにも決して自分の領域を汚すことがなかった。

 利休を見ている間は彼がどういう人物であるのか、何だかよくわからなかったのだが、ラストの大森南朋演じる秀吉の表情を見て、「ああ、利休はそういう人だったのか」と、ようやく利休という人物の一端に触れたような気がした。


 武野紹鴎と与四郎~團十郎さんと海老蔵さんの対話のシーンには、胸と目頭がどうしようもなくなっちゃいましたねぇ・・・。

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theme : 映画感想
genre : 映画

2014-01-18

十~忍法魔界転生~ : せがわまさき

『十 ~忍法魔界転生~』 せがわまさき

 冒頭~死屍累々たる原城での天草四郎の魔界転生シーンから、“この人までが?!”と思われた名だたる剣士、剣豪たちが次々と魔界に堕ち、2巻までで敵の編成が完了。3巻~ついに主人公・柳生十兵衛の登場である!

 完全に妖怪化している森宗意軒にはちょっと脱力してしまったのだが(しかし、あの「指」の造形には“ううむ、ナルホド!”と唸らされた)、山田風太郎『魔界転生』の漫画化作品としての完成度、原作の再現度の高さは、ほぼ完璧なのではなかろうか。原作よりもやや強調された四郎の稚気、アクマっぷりや、紀州の三人娘の三者三様になんかこう・・・たまらん!感じも原作の世界に華を添えて・・・。

 しかし逆に、その原作再現度の高さが唯一の不満でもあるんだよなぁ。いかに原作が『魔界転生』という偉大な作品であるとはいえ、漫画は漫画で独立した別の作品としても楽しみたいという気持ちがあって、原作から逸脱した何かを期待してしまう。




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theme : 漫画の感想
genre : 本・雑誌

2014-01-11

魔界転生 : 山田風太郎

『魔界転生』 山田風太郎

 いや、もう、何といっても興奮したのは前半の山場 ~ 紀伊大納言頼宣転生のための忍体として見込まれた我が娘らを柳生の里へと逃すべく、闇夜を必死に駆け抜ける三人の老剣士の姿。美しい三人の娘を守り、裸馬に鞭をくれ、嵐をついて闇の中を疾駆するは、老いてなお紀州藩最強を誇る、田宮平兵衛、関口柔心、木村助九郎。背後には、蹄の音も禍々しく追い来る六騎の魔剣士。うぅぅぅ~ これから何が起こるのか、なんとなく分かっちゃいるけど、早く! この先を見届けたいと逸る気持ちに、ページを捲る手が追い付かないっ!

 次に息を呑んだのは物語終盤・・・ほんの数ページの登場ながら、黒々とした毒気をまきちらし、頼宣を恐怖させ、その野望と意地を完膚なきまでに圧し拉ぎ去った老中・松平伊豆守信綱のただならぬ迫力、その怪物ぶり。

 
 ヒーロー・柳生十兵衛ももちろん規格外なんだが、この二つのシーンが放つ圧倒的な闇の暗さ、禍々しさの前では・・・ 絶対に守るべき娘三人に、小さな子供まで一行に抱えて、時には姑息な手もつかいつつ大汗をかいて魔界転生衆と対決する十兵衛が「ふつうにいい人で、良識的なおじさん」に見える。と、いうか、魔人、怪人たちに対して、十兵衛だけが人間らしいのよね、多分。

 足手まといの娘と子供の命を守りつつ、魔人と化した荒木又右衛門、柳生宗矩、宮本武蔵ら転生衆を斃し、紀州藩を救う~託された仕事の絶望的な厳しさの割に、戦いの悲愴さにおいても、最初からその無惨な死に様が透けて見えてる柳生十人衆に負けてるような気がする。そんな十兵衛にせめてロマンスの一つでも・・・と思う。確かにロマンスはあったのだが、鈍い十兵衛はまったく気づかない。あぁ・・・。

 でも・・・、戦いの度に迷い、動揺し、慌てふためく「ふつうのおじさん」十兵衛の内なる欠落が、転生衆を斃す毎に深くなっていくさまが、なぜか色っぽいんだよなぁ・・・。




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theme : 読書メモ
genre : 本・雑誌

2014-01-04

ハーモニー : 伊藤計劃

『ハーモニー』 伊藤計劃

 体内にインストールされた「WatchMe」によって人は常に監視され、身体的、精神的に害悪となるものは全て未然に除かれる。わたしの一部であるはずのものをわたしの外部にゆだねることで、誰もが健康で優しくあることができるように調整された社会に抗うべく、自殺を企てる三人の少女。彼女たちの企ては失敗し、不協和音を内包した社会は、更なる完璧なハーモニーを奏でようと動き出す。
 

 わたしは物理的に存在するのか。わたしは記述された存在なのか。わたしが「わたし」であることに、「わたし」がわたしを駆動することに疲れた時、例えば「諸法無我」という言葉は魅惑的に響く。しかし同時に、わたしという身体的限界、「わたし」という意識の限界の内にあるわたしは、その言葉を恐れる。

 わたしの絶えざる問いの中にあった「諸法無我」の境地が、化学物質とテクノロジーによって社会にもたらされ得るものになったとき、世界の無数のわたしには何ができるのか。

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