2013-10-26

楊貴妃になりたかった男たち <衣服の妖怪>の文化誌 : 武田雅哉

『楊貴妃になりたかった男たち <衣服の妖怪>の文化誌』 武田雅哉

 もう少し「楊貴妃になりたかった男たち」のキモチなり、文化的背景なりを掘り下げたりなんかするのかなぁ~と期待したんだけど、ちょっと違った。中国における古今の異装者=「服妖」たちが、ひたすら採集、列挙されている。

 軍装の少女。奇抜な髪型、ファッションに興じる婦人。女装で悪事をはたらく野郎。襤褸をまとう貴公子。同性愛ブームと美少年たちの女装。男(女)にしか許されないことをするために、職業上の必要から、追手から逃れるために、ご主人様のお戯れで、ただ止むに止まれるおしゃれ心の迸りによって・・・様々な事情により、または純粋に色々な嗜好や欲求を満たすため「服妖」=ファッション・モンスターとなる男女。

 「服装の乱れは、心の乱れ、ひいては社会の乱れ、さらには国が亡びる前兆・・・」なんていう嘆きをよそに、いつの時代にも「異装」を愛する人々はいたようで・・・。

 ある服装に付された属性を、その衣服を身に着けることでひととき我が物にする。その恍惚感は・・・わかるような気がします。




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2013-10-19

石田三成 ソクチョンサムスン : 荒山徹

『石田三成 ソクチョンサムスン』 荒山徹

 「大変! ハングギドラだわ!」

 「ゆけ、臘鷺守(ロウロス)!」


 滅びゆく百済の王によって、後宮女官三千人の命を生贄に封じられた百済復興の霊力。百済復興の宿願を受け継いできた近江百済党首領・石田治部少輔三成は朝鮮の地でその封印を解き、霊力を得て魔人となる。

 霊力をもって関白秀次を、太閤秀吉を操り、己の野望を押し進める三成の前に立ちはだかるは、古代より「百済復興阻止」の使命を受け継いできた柳生一族。柳生石舟斉宗厳五男・宗矩は徳川家康の懐に入り三成を牽制し、四男・宗章は果心居士との厳しい修行の果てに時空を超えるタイムマシンを駆る! 『何? 今度は遡りすぎたというのか? し、しまった!』

 飛鳥時代、戦国時代と頻繁に場面が転換するため、せっかく盛り上がってきた興奮が寸断されてしまうことはあったのだが、海を渡ってきた「百済復興」の執念を軸に、壬申の乱と関ケ原の戦を結びつける伝奇的な語りの勢い、そしてそこに「柳生」を絡めてくるタフさにはまいった。

 随所にみられる“あらびき”な感じが、荒山作品のクセになる魅力であるが、物語冒頭から引っ張り続けてきた驚異的な「霊的兵器」の存在を、関ケ原のあの歴史的場面に結びつけた幕切れは、殊に味わい深かった。


※文庫版タイトルは『柳生大作戦』となっています。



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2013-10-12

犬狼都市 : 澁澤龍彦

『犬狼都市(キュノポリス)』 澁澤龍彦

 大学生の頃、街をぶらぶらしていて、『犬狼都市』と大きく書かれた映画だか芝居だかのポスターを見かけたのだ。一緒にいた友人はそれを見てやけに鼻息を荒くしていたようだったが、私はその時はあまり興味をひかれず、“荒廃した町でギラギラした流れ者たちが牙を剥きあうヴァイオレントな作品なんだろう”とかぼんやり思っただけだったのだ。ただ、「原作:澁澤龍彦」という文字は目について、“澁澤龍彦がヴァイオレンス小説を???”と、以来、ず~っと何だか喉に小骨がささったような感じで、気にはなっていた。

 「犬狼都市(キュノポリス)」は、ファキイル(断食僧=常に空腹を満たされない者)と名付けたコヨーテを愛し、硬質な宝石の内部でアヌビス神の血をひく犬狼貴族との聖なる交合を果たす美しい少女の幻想譚であり、もちろんヴァイオレンス小説などではなかった。三カラットものダイヤの輝きをくすませてしまうほどの美少女、魚類学者の父、若く豊麗な継母、淫靡で残酷な食事・・・。どこにも「日常」というものが見当たらない・・・何か絶対的な世界。

 その他、陽物崇拝の甚だしい少年皇帝の熱狂が描かれる「陽物神譚」、生きた女の肉体を前にした幽霊船の亡者たちのプライドと苦悩が哀れで滑稽な「マドンナの真珠」

 10代の後半、日常を遠く離れた世界に魅せられ、澁澤龍彦を読み耽った時期があったけれども、日常性の一切を排除した、あまりに純粋で強い文体は、今となっては読み続けるのがちょっとしんどい。でも、この絶対的な幻想世界を語る文体の強さは、気負いや衒いとはまったく無縁であって、そこにあるのはただ自然な「確信」。澁澤氏にとっては、むしろ「日常」の方こそ、不自然なものだったのだろうか。

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2013-10-05

歌舞伎ワンダーランド : 須永朝彦

『歌舞伎ワンダーランド』 須永朝彦

 『私、そういうこと話し始めると・・・止まりませんよ♪』

 っていう、猿之助四十八撰『新・水滸伝』の軍事オタクな女戦士・青華の台詞を思い出すなぁ。

 幻妖や異世界に魅かれてしまう質であるらしい著者が、歌舞伎に登場する「御家の重宝」「妖精・変化」「妖術」「魔人」といった、どちらかというと怪しくて、イカガわしいけど、とびきり魅惑的なものたちや、歌舞伎が醸す奇妙なトリップ感の源でもあるような『世界』というドラマの構造について語る言葉は、まさに立て板に水。読者がついて来ようが、来まいが、もう『止まりませんわよ。』って感じなのだ(笑)。

 歌舞伎のあまりに理屈を無視した展開に呆れ、あっけらかんとしたご都合主義に唖然とし・・・、『歌舞伎はもともと(略)戯曲的完成即ち文学的達成を目指さなかったから、部分的には燦然と輝くところがあっても、全体の論理を統べる文学的精神などは無きに等しい』と承知しているとは言いながら、アヤシげな「御家の重宝」が登場するたびに興味津々でワクワクを抑えられない様子の著者が、(失礼かもしれないが)可愛いというか、愛しいというか・・・。

 ああ、江戸吉原のモテ男・助六が実は源平時代の仇討兄弟・弟の曽我五郎時致で、源氏の宝刀「友切丸」を探索中であったり、蘇我入鹿の御殿に江戸時代の田舎娘が迷いこんでたりする世界にドプンとハマって、美しく妖しい夢幻に溺れたい。


 郡司正勝氏との歌舞伎の幻想性をめぐる対談の中で、歌舞伎においては、ただ幻想的なものだけが描かれるのではなく、夢幻的なものの中に非常に日常的なものが同居していることが指摘されている。なるほどなぁ・・・と思った。そこから生まれるんだろうなぁ・・・あの妙な、ちょっと目眩のするようなトリップ感は。




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