2013-03-30

手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ) : 穂村弘

『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』 穂村弘

 人が不用意に触れてしまうだけで瀕死の火傷を負ってしまう魚だか蛹だかの話を聞いたことがあるような気がする。

 まみという女の子も、不用意な何かに触れられると熱を出したり、火傷をしたり、死にそうになったりするんだろうか? 熱っぽくて、粘膜質っぽい女の子は、生よりも死を実感したがっているように見える。

 甘い甘いデニッシュパンを死ぬ朝も丘にのぼってたべるのでしょう


 それは・・・、好きなものも食べられなくなったり、死なない為に好きな食べ物も自粛したりして生きた末に訪れる死とは全く異質な死なのだけど。

 そんな少女性に宛てて書かれた手紙(歌)。




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2013-03-23

告白 : 町田康

『告白』 町田康

 町田康がしばしば描く「考えることは理路整然としているものの、行動が無茶苦茶な男」の極め付きのような博徒・城戸熊太郎。

 プリミティブな河内弁しか言葉を持たない熊太郎は、やたらと思弁的なその頭の中を正しく言語化することができない。複雑すぎる思考が言動の足をひっぱるため、熊太郎はどんくさい。適切な言動としてアウトプットされない思考は内に向かって渦巻き鬱屈した挙句、あるいは奇矯な行いとなって溢れ出し、あるいは虚無的な思念となって蟠り、思考と言葉と行動が一直線である村人たちの中で、熊太郎は孤立する。合理的な思考の末にとったはずの行動が不合理な結果ばかりを招き、遂には大量殺人者と成り果てる熊太郎。

 明治26年赤阪水分村で起きた事件「河内十人斬り」を題材に、言葉にはならなかったものを凝視し、言葉にしようとした町田康の試み。


 自分の(脳内の)言葉が世間に通じないことに苦しみ、自分の言葉を理解せぬ世間を阿呆だと思う人は世の中にごまんといて、結果として何一つまともなことのできぬ熊太郎に寄せられる共感も少なくはないだろう。森見登美彦『四畳半王国見聞録』の主人公がもらす『一人でいる時はこんなにステキな俺なのに、なぜ他人が目の前にいるとヘンテコになるのであるか!』という心の叫びも、何か熊太郎の姿に重なるのである。


 思考と言葉と行動を一直線にするには、言葉にして実行できることしか考えぬか、思考を正確に言語化し行動として実現する知力・胆力を持つか、思考と言動の間の微妙な(あるいは大幅な)ズレに鈍感になる等するしかなく、そうやって(むりやりにでも)一直線になった思考・言葉・行動は、米や野菜や便利な道具や、先進的な技術や人々の胸をうつ芸術・文芸を生むが、言語化されず行動とズレつづける思考と、それでも思考と合一しようとるす行動は、・・・ただ一人、自分以外誰も読まぬ文学を生む。 

 人は社会的に共有される価値のためだけに生きているわけではないだろうけど・・・・・・「『誰にも読まれることのない文学』的人生」って・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だめなんじゃないのか? いや、そもそも耐えられるのか、それに?




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2013-03-16

甲賀忍法帖・改 : 浅田寅ヲ/山田風太郎

『甲賀忍法帖・改』 浅田寅ヲ/山田風太郎

 未完であるのがホントに惜しい。

 次期将軍の座をめぐる徳川家内紛の代理戦争として、甲賀・伊賀の各精鋭が異形の技の限りを尽くして相闘う。 

 とにかく、浅田寅ヲ氏による忍者たちの造形がねぇ♪ 「それは、どちらのインディーズブランドの?」的デザインのコスチュームに包まれた、美しく鍛えあげられた蠱惑的な・・・、あるいは驚異の形状変化を見せる肉体。美しい顔を覆い隠すマスク。

 バイオレンスにちょこっと添えられるユーモアの塩梅も良いし・・・、甲賀選抜vs.伊賀選抜の凄絶な忍術戦と、弦之介と朧の愛の結末までを、独特な空間・スピードの描写力、見えないものを視覚化するセンス、抜群の原作アレンジ力を持つ浅田寅ヲの手で描いてみせてほしかったな。





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2013-03-09

君がいない夜のごはん : 穂村弘

『君がいない夜のごはん』 穂村弘

 「食」にまつわるエッセイ集。

 自分の味覚に確信が持てない。美味しい食べ物をだいなしにしてしまう逆ソムリエとでも言うべき言葉力。自分が関わると見る間にぐだぐだになっていく食べ物。「食」に対する自分の不甲斐なさをとめどなく語る穂村氏であるが、何かを食べることのほんわかとした幸せ感は伝わってくるのだ。砂糖入りの甘い麦茶、布団の中でかじる菓子パン、半分だけめくったラップの隙間からのつつき食いなんて、世界一幸福な「食」ではなかろうか。

 しかし、巣の外に一歩でると、そのあまりに無防備な「食」の幸福は様々な危機や罠に遭遇する。どんどん巨大化していく危機、巧妙化していく罠に、穂村氏は恐怖しながらも必死の応戦を!


 ご自身の惨憺たる?「食」との戦いっぷりを見ているのは、残酷なくらいに執拗で精巧で冷静で強靭な歌人の目なんだろうに・・・と思う。「うさうさ」とか言ってウサギを撫でて見せてもダメだぞ・・・と思う。でも、その怯えっぷり、戸惑いっぷりは本物なんだろうなぁ。アンバランスな人だなぁ。魅力的で困る。

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2013-03-02

夜の写本師 : 乾石智子

『夜の写本師』 乾石智子

 魔道師たちの書庫を埋める、世界中の文字、草花の名前、岩石の成分、国々の歴史、数々の魔法・・・ありとあらゆることを記した膨大な蔵書。書物を使って発動する魔法。写本工房の棚に所狭しと並べられ、作業台に広げられた様々な種類の皮や紙、インク、羽ペン。精巧に書写されるひとつひとつの文字。施される装飾。作中に息づく書物の気配にドキドキする。


 右手に月石を、左手に黒曜石を、口には真珠を含んで生まれてきたカリュドウ。月と闇と海~三つの品はカリュドウが背負った永きにわたる因縁のしるし。

 カリュドウは彼の誕生に立ち会った女魔道師エイリャのもとで成長する。が、まだ幼く自分が何者かを知らないカリュドウの目の前で惨殺されるエイリャ。自分が灼熱の闇に焼かれ、満たされ、染まっていくのを感じながら、エイリャを殺し、その力を奪った大魔道師アンジストへの復讐を誓ったカリュドウは、魔道師とは異なる魔法~記された文字の力を操る「夜の写本師」の修業を積む。


 暗い海のざわめきと月の光、闇の色彩の中、たっぷりと装飾的な言葉で紡がれる魔法と呪いと力と命の長い長い因縁の物語。物語を紡ぐ言葉の濃厚さに比べ、主人公カリュドウをはじめ登場人物たちの影がやや薄い・・・か? しかし、怨みや呪い、復讐といった暗い感情だけでなく、力強い生命力を湛えて描かれる闇と、その闇を背負いながら絶えることなく続く人の営みこそが、この物語の主人公か・・・という気もする。




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