2013-01-26

見仏記6 ぶらり旅篇 : いとうせいこう・みうらじゅん

『見仏記6 ぶらり旅篇』 いとうせいこう・みうらじゅん

 『見仏記』を読むと無性に旅支度をしたくなる。お二人の後について一緒に歩いてるような気持ちになる。今回もやっぱりそう。だから、この「ぶらり旅篇」読んでいる最中には、所用で大阪まで来ていたことを幸いに、奈良まで足をのばして、本篇にもお二人の旅の様子が記されている興福寺と東大寺を訪ねてきた。


 特に訪ねる場所を定めず、行き当たりばったり、興味の向く先にふらりと向かうごぶらり旅。心のままに歩いても、何かに導かれるように出会うべきものに出会っていく、または事物がお二人にシンクロする・・・いや、お二人の方が周囲にシンクロしていっているのか。

 自由度が上がった旅は、静かな共感に満たされ・・・しかし・・・お寺との連絡や情報検索のためにしばしば取り出される通信機器・・・「スマートフォン」という単語に、何か妙な力みが感じられて(私の思い違いかもしれないけれど)、“あ、いとうさん、トシとったんだな。”と、なんだろう・・・温いような、さびしいような、可笑しいような、ちょっと、どうしたらよいのかわからない気持ちになる。

 旅の終わりにいとう氏が胸の内でつぶやく言葉。

 御堂の外から経が聞こえてきた。子供の声も聞こえた。お賽銭の音が絶えなかった。人間はそうやって現れては消えるのだ、と思った。点滅のようなものだ。


 「点滅」という言葉にひかれて、陽平君(岡野玲子『ファンシィダンス 4』)の台詞が思い出される。

 ほら! パチンコ屋のネオンサインあるでしょ あのピカピカ光ってる…
 電球は動かないで一つずつ順番に光ってるダケなんだけど
 流れてるよーに見えるでしょ

 ぼくもそうです ぼくも一瞬のぼくの連続です


 二人が言ってることは、それぞれ別のことなんだけど・・・。・・・一つ一つ別々の個体の点滅がそこここで行われることで連続して見える流れのようなものが生まれる・・・。

 いとうせいこう氏と陽平くん、私の好きな二人の言葉がつながりあったようで嬉しかった。




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2013-01-19

うつぼ舟1 翁と河勝 : 梅原猛

『うつぼ舟Ⅰ  翁と河勝』 梅原猛

 これも、夢枕獏の『秘帖・源氏物語 翁‐OKINA』からの流れで読んだ1冊。秦氏と「翁」の関わりについて興味がわいて・・・。

 
 うつほ舟に乗り、播磨の国坂越の浦に流れ着き大荒大明神となった秦河勝・・・世阿弥の『風姿花伝』に記された一文に誘われ、梅原猛氏はまたも長い旅に身を投じる。『風姿花伝』や金春禅竹の『明宿集』が猿楽の租であり「翁」であると語る秦河勝の姿を追い、能の根源にあるものを探る旅へ・・・。

 河勝の怨念と、神となった河勝がもたらした繁栄の跡を残す、河勝最期の地・坂越の大避神社の祭『船渡御』。滑稽で猥雑で奇怪な神・摩多羅神が祀られる、河勝ゆかりの寺・広隆寺の奇祭『牛祭』。大避神社、広隆寺に共通してみられる十二という数字へのこだわり。三人の翁が舞う奈良豆比古神社の「翁舞」と、その「翁舞」の起源とされる、業病を患った春日王と二人の皇子・浄人王、秋王の伝承。「白い翁」と「黒い翁」。「翁」=「宿神」であると語る『明宿集』の言葉。「シュク」の意味するもの。談山神社に伝わる「摩多羅神」と呼ばれる翁面。酒・性・笑い・熱狂~摩多羅神に見られるディオニソス的特徴。

  
 「翁」をめぐる梅原氏の旅は、さながら夢枕獏が描いた光の君の神仏をめぐる冒険の如く・・・秦氏や世阿弥、能楽に関する遺跡、伝承の地を訪ね、また文献にあたって集められた、様々な物語を感じさせるこれらのパーツから、梅原氏の目には能という芸能の根源にあるもの、そして秦河勝から世阿弥へとつながる何等かのヴィジョンが幻視されているのであろう。しかし、集められたこれらのパーツに関して、どのような検証がなされたのか充分に示されているとは思えないところもあり、氏が見ているであろうヴィジョンに同調するのが難しい。これは論考として仕上げられたものというよりも、思考のもとになるアイデアを記したノートのようなものなのではないだろうか? 

 それでも、「能と世阿弥に憑かれた」梅原氏は思考が迸るままに書かなければいけなかったのだろう。詳しい検証を後の人たちに託してでも、自分の頭の中にあるものを書き留めておかなくてはいけないとでもいうような切迫感に満ちた書。




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2013-01-12

精霊の王 : 中沢新一

『精霊の王』 中沢新一

 夢枕獏『秘帖・源氏物語 翁‐OKINA』読了後のモヤモヤ(光の君が神仏巡りの果てに出会う精霊の王「翁」とは一体何ものであるか? とか)を解消するために読んだ本。


 幼い頃から、父の書斎の片隅に無造作に転がされていた奇妙な石たちが放つざわめき、精霊の風を受けていた著者は、やがて、柳田国男の『石神問答』でその石の神の来歴を知る・・・

 蹴鞠の名人藤原成通卿のもとに現れた「鞠の精」の話から語り起こし、著者は、芸能が行われる場にその回路を開く特殊な力に満ちた空間の存在を示す。さらに、室町時代の能楽師・金春禅竹が芸能を守護する特殊な「力」「空間」にまつわる思想を著した『明宿集』の記述を織り交ぜながら、能には「翁」として姿を現わすその「空間」に住む神=宿神の正体を探っていく。

 シャグジ、ミシャグジ、シャクジン、シュクノカミなどの名で呼ばれ祀られた神の痕跡、それを伝える神話や伝承を訪ね、立派な社や寺に祀られる神仏よりも古く、国家という権威の誕生以前に存在した「古層の神」とそこに息づく「野生の思考」が掘り起こされる。 


 「翁」といえば、あの髭を生やした老人の面、または髭を生やした柔和なおじいさんという姿かたちをもつ実態としてのイメージしか抱けなかった私にとって、「翁」とはすべての根源となる「空間」 ~その「空間」は具象の世界の背後にあって、「現在」として現れていない「過去」と「未来」を内包し、そこでは「無」が「有」へと転換し、「有」が「無」へと帰っていく~ であり、その「空間」に満ちた「力」 ~秩序の中で安定しようとする世界を揺り動かす破壊的なまでの創造の力~ であるというアイデアは全くの驚きであった。

 このような「翁」の在り様をイメージしつつ夢枕獏氏の小説を読んだならば、さらにスリリングに光の君の冒険を楽しみ、興奮できたかもしれないなぁ。




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2013-01-05

秘帖・源氏物語 翁‐OKINA : 夢枕獏

『秘帖・源氏物語 翁‐OKINA』 夢枕獏

 光の君が奏でる楽の音につられて姿を現わす妖しきものたち。精霊とも、鬼とも、神とも呼ばれる、普通の人には見えないそのものたちを、木や、石や、水や、花といった自然のものと同じように感じ、見る光の君。血の色が透けて見えそうな白い肌と紅い唇、その口もとに浮かべた笑み。何となく、岡野玲子氏の描く『陰陽師』安倍晴明の姿を思い浮かべる。


 賀茂祭見物の折の車争い以来、高熱を出し臥している葵の上に憑いた悪しきもの~高野の高僧の手にも余る憑物を祓うため陰陽師・蘆屋道満が呼び寄せられる。道満の術によって葵の上の中から現れた正体不明の憑物は、光の君を試すようにある謎をかけて消えてゆく。
 
 謎の答えを求めるべく、蘆屋道満に導かれ、夏焼太夫、虫麻呂、青虫、三人の呪師の手を借りて、都から唐、そして遥か西域の神々の世界をめぐる、冷ややかに美しい光源氏の大冒険?!

 冒険の中で語られる、人に祀られた神や仏の来歴、秘密、そして、そのスピーディな展開は充分に刺激的ではあるのだが、光の君一行の眼前を過る神仏の姿 ~ 牛頭天王、賀茂祭の猪頭、都の大路を行く百鬼夜行、弥勒菩薩を祀る太秦寺に秘された神、獣の頭を持った異国の王子の神話は、次々と流れゆく車窓の風景のようで、「京極堂の蘊蓄」の長大さに慣れてしまった身体には、何だかあっさりしすぎて物足りなくも感じられる。

 また、蘆屋道満に導かれた光の君が最後に対面する「翁」~本作品のタイトルでもあり「全ての精霊の王」と総括される「翁」がいかなるものであるのか、その肝心のところが理解できないというか・・・上手くのみこめなかった。

 ・・・と、読後モヤモヤしていたら、中沢新一氏が「石神」「翁」について考察した、タイトルもズバリ『精霊の王』という本があることを知った。また、秦氏(本作で光の君と神仏めぐりの旅をする蘆屋道満は秦氏の血をひく)と「翁」の関わりから攻めるなら、梅原猛氏の著作に『うつぼ舟Ⅰ  翁と河勝』というのがある。このあたり読んでみよう。




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