2012-12-29

猫とあほんだら : 町田康

『猫とあほんだら』 町田康

 こういうことを書くと、きっと沢山の反感を買うだろうと恐いのだけども・・・どんなに可愛いくても、「ペットは畜生だ」と思ってしまう。

 だって、飼い主たちはものすごく愛情を注いでいるつもりのペットでも、傍からはご主人様の快楽のための奴隷にしか見えなくて、“残酷だなぁ~”と思うことがあるし、ペットを家族の一員と言わんばかりに遇している方の家におよばれして、犬猫と一緒に食事をするのは不快だ。

 ペットって「畜生」だからこそ、人間は飼い主としての責任と良識と愛情を持たなくちゃいけないんだと思うのだけど・・・。

 良質な猫エッセイを書く人の視線とか心性って何とも不可思議なんだよなぁ。なんで、近づいただけで「シャーッ」と威嚇し、さわれもしない生き物に、あんな慈愛と新鮮な敬意をもって接することができるんだろう。猫を家族の一員として人間と同列に置くでもなく、単なる愛玩物として扱うのでもなく。猫にしたって、たとえ飼い主のくれるエサが無くては生きていけなくても、なぜか「畜生」にはならない。そこには、「猫との暮らし」という不思議なものがある。




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2012-12-22

妖説太閤記 : 山田風太郎

『妖説太閤記』 山田風太郎

 今年の六月に観た歌舞伎『時今也桔梗旗揚(ときはいまききょうのはたあげ)、武智光秀(明智光秀)が小田春永(織田信長)への謀反を決意する「本能寺馬盥の場」・・・本能寺に入った春永に、中国攻めの最中の真柴久吉(羽柴秀吉)から献上された「馬盥に轡でとめた錦木」の生け花。出世した今も、春永の馬の口取りであった頃の忠誠心を、そしてそこから取り立てられた恩を忘れないというメッセージを込めた贈り物。

 この久吉の臆面もない全力の媚び、そのいやらしさには心底引いた。光秀を苛め抜く春永も、あまりの屈辱に春永への怨念を抱く光秀も、結局は久吉に踊らされたのではないか・・・と身震いしてしまうほど、その場にいない久吉の存在感は嫌な感じだった。

 
 久吉=秀吉に対するそんなダークな印象を抱いてしまっていたせいか、「妖説」と銘打って語られるおぞましいこの秀吉の生涯こそ「真説」なのではないかと思えてならない。 

 明るさと愛嬌の陰に隠した奸智と、どす黒い策略で権力の階段を一歩一歩登っていく・・・己の惨憺たる人生を思う「猿」と呼ばれた男の胸にあるのは、ひと目見た織田家の市姫~天上のものに等しい美女を手に入れたいという燃えるような欲望。浅井長政、織田信長、明智光秀、柴田勝家・・・錚々たる武将たちが、コンプレックスと欲望にまみれた秀吉の狂夢に触れ、破滅していく。

 腹の中に権力と女への欲望とコンプレックスを煮えたぎらせ、友や主君を陥れる姦計を練りながら、愛すべき男の皮をかぶり、奇妙に歪みながらもあっけらかんと明るい・・・奇怪極まりない秀吉の姿が、作者の切れ味鋭い語りによって、まぎれもない真実になっていく。世界にハマる快感を存分に味わわせてもらったが、秀吉の姿に重ねて太平洋戦争時の日本を見ている作者の目には何かヒヤリとする。




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2012-12-15

我、本懐を遂げんとす―忠臣蔵傑作選 : 縄田一男編

『我、本懐を遂げんとす―忠臣蔵傑作選』 縄田一男 編

 元禄十五年十二月十四日、赤穂浪士の吉良邸討入り。「その日」を待つ男たちの思いを描いた作品を集めたアンソロジー。

 本伝として、堀部安兵衛と細井広沢の交流を織り込み、討入り当夜から浪士の切腹までを描いた山手樹一郎「師走十五日」、列伝として、山田風太郎「蟲臣蔵」(大石内蔵助と田中貞四郎)、中山義秀「中山安兵衛」海音寺潮五郎「あさき夢みし」(神崎与五郎)、邦枝完二「江戸の雪」(間信六)、神坂次郎「虱の唄」(武林唯七)、赤坂好美「雪の音」(吉良義周)、また、異聞として柴田錬三郎「浅野家 贋首物語」、そして隆慶一郎の随筆「時代小説の愉しみ」を収録。

 秀吉の朝鮮出兵の際、捕虜として日本に送られた明の武人を祖父とする武林唯七の「虱の唄」は、異国人の血を蔑むもののいる中で、見事な“さむらい”になると誓って生きたその悲壮ともいえる生い立ちと、湯につかりながら祖父に教わった「虱の唄」~かなしみ、苦しみを耐えた異国の男が歌った唄~を口ずさむ、本懐を遂げた唯七の死を前にした静けさ、そして、吉良邸に討入り人を斬ったという唯七の猛々しく逞しい体と寂しげな眼差しを見つめる湯殿坊主の少年の激情の対比が劇的で美しい。

 一方、扇子売りに身をやつし上杉家の動向を探る神崎与五郎が、ふとしたことで関わりあった女に惚れられ想い乱れる「あさき夢みし」や、姉の婚家に居候し無念を噛みしめながらその時を期す間新六の「江戸の雪」は、女に惹かれ乱された心も、恩ある人たちへの不義理も、迷惑行為の数々も、大望を成就する「その日」にすべて晴れやかに清算される・・・そんな甘い感傷が感じられてちょっと嫌だったな。

 そして最近は、“嫌味な敵役”であってほしかった吉良方の物語にも心ひかれるのだ。理不尽な災厄に見舞われた上、幕府による過酷な処分によって貶められた吉良義周の悲憤と、「あの夜」以来耳をはなれない降り積もる雪の音を描く「雪の音」は静かに燃えるような物語だ。

 吉良の側から描いたものといえば、前に書いた皆川博子の『妖笛』や、史料をもとに吉良側の被害状況をつぶさに描いた杉浦日向子の「吉良供養」『ゑひもせす (ちくま文庫)』収録)も読みごたえのある作品。

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2012-12-08

妖笛 : 皆川博子

『妖笛』 皆川博子

 元禄十五年十二月十四日深夜、本所吉良邸を襲った凶事。祖父であり養父でもある上野介の首を取られ、自らも深手を負った吉良家当主左兵衛義周は、この時十八歳。

『浅野内匠頭家来ども、上野介を討ち候節、その方仕方不届に付き、領地召し上げられ、諏訪安芸守へお預け仰せ付けられ候なり』

 網をかけた駕籠で罪人のように諏訪へと送られた左兵衛は、幽閉の日々の果てに一管の鉄笛で自害して果てた。 


 家老の左右田孫兵衛とただ二人、左兵衛に付き従い諏訪での日々を共にした近習・山吉新八。

 理屈に合わぬ赤穂浪人たちの暴挙。評定所の理不尽な沙汰。あの夜、主を守って戦うでもなく逃げ隠れしておきながら、今、左兵衛に対して厚かましいほどの馴れ馴れしさを見せる左右田孫兵衛への嫌悪と苛立ち。はらわたの煮える思いを噛み殺し、ほとんどものも言わぬ左兵衛を見つめる新八の中で、あやしく膨らみ、歪み、乱れ、また、暗く秘される思い。

 新八が空耳に聞く笛の音・・・孫兵衛が吹くと優婉な音色を発して左兵衛を慰め、また左兵衛自身がその唇で幾度となく奏で、そして・・・左兵衛の頸骨を打ち砕いた鉄笛の音。

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2012-12-01

たむらまろさん : ユキムラ

『たむらまろさん』 ユキムラ

 「坂上田村麻呂」・・・歴史の授業中、征夷大将軍という肩書とあいまって、凛々しく雄々しく猛々しく・・・古代の、というよりむしろ異世界のロマンをかきたてるその名前だけで、ちょっと好きになってしまいそうだった。

 こういうコミックが存在するってことは・・・そんな少女の淡い想い、っつぅか妄想ってのは割と普遍的なものだったのか、それとも、かなりピンポイントなところを狙いすまされたのか・・・。

 有能な上司?に鼻面を引き回され、デキる友人に助けられ、とぼけた部下に足をひっぱられながら、呪いと怨霊に怯えすぎな帝のお世話に日々手を焼くたむらまろさんの日常を描いた宮廷コメディ。

 田村麻呂が心を寄せる蝦夷のアテルイ、モレも後半に登場。人間ではないアテルイと相棒モレ、良いコンビです。そして男前。田村麻呂とアテルイの切ない決別・・・その後の苛烈な運命を予感させます、コメディなのに。

 これ以上お話しが続くと悲しいことになっちゃうので、ここで終わってくれてよかった。





【2015.11.26追記】
この『たむらまろさん』続いていたっ↓

 

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