2012-08-25

UN-GO 因果論 : 會川昇

『UN-GO 因果論』 會川昇

 坂口安吾の『明治開化 安吾捕物帖』を原案としたアニメ『UNーGO』の劇場版~テレビ版に先立つ物語「因果論」のノヴェライズ。本当はテレビ版を見たいのだけど、DVDを借りに行くにもなかなか腰が重くて・・・とりあえず、こちらを先に。

 近未来の“戦後”日本に、相棒の因果を伴って帰国した“探偵”。折しも世間を騒がす新興宗教団体「別天王会」で起こる信者連続不審死事件が、かつて自らが、内戦状態のK国で体験したある出来事に関わっていることを知り事件の真相に挑む ~ 探偵・結城新十郎誕生の物語。

 テレビ版『UN-GO』『安吾捕物帳』も、すべて見た・読んだわけではないので、『安吾捕物帳』が原案としてどのくらい生かされているのかよくわからないんだけど、ここで誕生する結城新十郎~自分と世間の心を見失って、自分探しで海外を彷徨い、その果てに真実を求め続ける探偵となった青年~というのは、『安吾捕物帳』において、洋行帰りの颯爽たる紳士探偵という肩書で数々の怪事件を解決していくその活躍に比して、なんとなくその人物像、人となりが分かりづらかった結城新十郎という人物のひとつの解釈かもしれないなぁ・・・と思う。

 因果が「歌う会」の人たちから引き出して見せるミダマ~人が心に奥底に隠した真実~は、あまりにステレオタイプで逆に嘘っぽい気がするけど、“言葉とは違う心もあるけど、それが本当なわけじゃない”って由子も言ってるしねぇ、まぁ、それでいいのかな。




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2012-08-18

明治開化 安吾捕物帳 : 坂口安吾

『明治開化 安吾捕物帖』 坂口安吾

 作品紹介や解説を読むと、「文明批評をきかせた」とか、「(小説の舞台である)維新後と(小説が発表された)敗戦後の世相を対比させ・・・云々」という言葉が出てくるのだけど、勝海舟の台詞にそれらしいものをチラと感じるくらいで、私にはどのあたりが「文明批評」で「戦後の世相」なんだかよくわからなかった。

 でも、そういうこと抜きに読んでも、本命の探偵・結城新十郎による事件解決の前に、今は氷川で隠居暮らしの勝海舟が正解をちょっぴり外した推理を披露するというのが面白いし、新十郎に勝手にくっついて出かけては事件に首をつっこむ両隣の住人、剣術使い・泉山虎之介と戯作者・花廼屋因果のうざったさと憎めなさの加減も絶妙で、何だかほっこりする。みんなどんだけ心眼をはたらかせたいんだか。そして勝海舟はあんなに瀉血ばかりしていて大丈夫なのか?

 新十郎はじめ、虎之介、因果、海舟ら探偵側の人物たちが、何かしらの屈託は感じさせるものの、さらりと明るいのに対して、事件はどれも陰鬱で、真相が明かされるほどに重苦しさ、物悲しさが増す。その気分を、しめくくりの勝海舟の負け惜しみとそれを神妙に拝聴する虎之介のちょっと微笑ましい姿が救ってくれるのだが。




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2012-08-11

第2図書係補佐 : 又吉直樹

『第2図書係補佐』 又吉直樹

 読書界の救世主・アイドルとして、業界の期待をずっしり背負わされていた感じのする又吉さん。「国語の便覧」という言葉を、「いいとも」か何かで本の紹介をする彼の口から聞いた時、何だか青酸っぱく懐かしい気持ちがこみ上げ、食道のあたりが“きぅっ”とした。

 『尾崎放哉全句集』『夫婦善哉』『何もかも憂鬱な夜に』『巷説百物語』『江戸川乱歩傑作選』『蛍川・泥の河』『香水 ある人殺しの物語』『あらゆる場所に花束が……』『人間失格』『リンダリンダラバーソール』『パンク侍、斬られて候』『異邦人』・・・どの本も、もしかしたら他人には理解されづらいかもしれない又吉さんのパーソナルな体験、思い出、妄想にしっかり結びついて又吉さんの中にしまわれている。それは誰のものとも違う又吉さんだけの本との結びつき。読書量に見合うだけの体験と思いの量・・・“ああ、すごく豊かな読書をされてきたのだなぁ”と羨ましい。

 又吉さんて・・・アイドル、救世主というよりも、読書界においてはもっときっと無垢で充足した存在。・・・・・・読書の森の妖精?




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2012-08-04

まさかジープで来るとは : せきしろ・又吉直樹

『まさかジープで来るとは』 せきしろ・又吉直樹

まさかジープで来るとは


 まずはシンプルな驚き。次いで、思わず漏らす失笑と同時にこみ上げる嘲りとも、憧れとも、尊敬とも、畏れともつかないこんがらがった感情。「ジープ」があけた風穴を抜けて、引き出された色んな想いが広がっていく。人は「花」や「月」にだけでなく「ジープ」にまで、様々に物想うようになったんだなぁ。

 じわりと内省的な共感を呼ぶ言葉が多い中で、タイトルにもなっているこの句は、ジープという車両の底抜けのワイルドさのせいか、何か、パカンと“開いた”感じがする。

 ここに収められている言葉たちが、自由律俳句なのか、それともリズムにのった自虐的なあるある、もしくはシュールな一言ネタなのか、それはよくわからないけれど、「ネタ」か、「詩」「句」かを分けるのは、この“開いた”感覚なんじゃないかと思う。

 言葉によって呼び起こされるものが内向きな共感に留まらず、喜びにせよ、悲しみにせよ、怒りにせよ、羞恥にせよ、恐怖にせよ、驚きにせよ、そこに“開かれた”何かが感じられた時・・・何かちょっと、ふるえる。




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