2012-07-28

開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU― : 皆川博子

『開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU― 』 皆川博子

 不法に入手した妊婦の屍体を解剖中、治安隊員に踏み込まれた外科医ダニエル・バートンの解剖室。慌てて妊婦を隠した暖炉の中から、次々に現れるあるはずのない屍体~四肢を切断された少年と、顔を潰された男。
  
 治安判事の要請を受けて、外科医バートンとその若き弟子たち~容姿端麗なエド、天才細密画家ナイジェル、痩せっぽちのアル、肥満体のベン、おしゃべりなクラレンス~信義と友情に篤いバートンズが解剖室の屍体の謎に挑む。やがて浮かび上がる詩人志望の少年ネイサン・カレンに仕掛けられた悪意の罠と恐るべき思惑。 

 18世紀のロンドン。意気揚々たる科学の徒であるバートンズ。一方で、解剖学が激しい偏見に晒されてもいた時代。虚飾にまみれた上流階級の暮らし。下層の人々が嘗める悲惨。煤煙に覆われ、裏通りはごみと汚物に塗れ、真実と正義が金と権威で買われる街で、無力さに苛立ち、打ちのめされながらも、己の若い才能を恃みに、汚れた都会を生きる若者たち。

 バートンズの活躍と、盲目の治安判事サー・ジョン・フィールディングの推理、観察によって暴かれる嘘。

 二転三転しながら徐々に明らかになる残酷な真実に、街の其処此処からたちのぼる淫靡で倒錯的な匂いをまとわせた、濃厚な味わいのミステリー。だがそれ以上に、汚濁の巷に身を浸しながらも、汚されることなく輝く若者たちの姿が鮮やかで切ない青春小説。




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2012-07-21

新選組血風録 : 司馬遼太郎

『新選組血風録』 司馬遼太郎

 有能だなぁ、山崎烝。

 何かとうるさい土方のおつかいをこなしてぬかりがない。『燃えよ剣』でも、総じて活躍はデカいが問題行動も多い新選組幹部たちの中で、その確実で緻密な仕事ぶりが随所で光っていた山崎烝。その有能さ・・・ちょっと好きになりそうだったぞ、山崎烝。

 副長のご機嫌を損ねて粛清されちゃう隊士、女を愛した隊士、男に溺れる隊士、隊に入り込む長州、薩摩の間者、近藤、沖田が身に帯びた虎徹、菊一文字 ~ 日々血が流れる動乱の京で、新選組隊士たちが起こし、関わり、或いは巻き込まれた、激烈ながらもどこかさらさらとした可笑しみが漂う、妙に味わいのある大小の事件、その顛末。

 それらの事件のほとんどで土方の意図に添う“仕事”をしている監察・山崎烝。嫌味なくらい有能だな、山崎烝。「池田屋異聞」で描かれるその陰湿な一面に、芽生えかけた私の淡い思いは萎んだが、その陰湿さも有能な男にはいいアクセントだ、山崎烝。


  

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2012-07-14

燃えよ剣 : 司馬遼太郎

『燃えよ剣』 司馬遼太郎

 『まあ、小説に書くしか仕様がないか。』

 うぉぉぉぉ~ん! カッコいいよぉ、シバリョー! 描かれる土方歳三のドラマにもさることながら、作中、突然つぶやかれる作者のこの一言に・・・感動したのだ。

 時代の転換点。理屈や常識では割り切れない力によって突き動かされていく歴史。その中で、“運命”としか思えないような役割を演じる者たち。新しい時代へと大きくうねる流れの中に、ただ激しく時流に逆らう近藤や土方のような人物を生み落とし輝かせた・・・そんな不思議を起こす歴史というものへの作者の感動。

 合理的な分析ではむしろ真実味から遠ざかってしまう、そんな「なんだか変な、筋のとおらない、もやもやとしているくせに一種活性を帯びたもの」を前に、『小説に書くしか仕様がないか』とつぶやく作者の姿に、ビッキーンと痺れてしまう。

 幕末というこの上ない時と舞台を得て、思想も政治も関係なく「喧嘩」に生涯をかけた土方歳三の生き様。

 土方ひとりに焦点がしぼられているため、幕末の志士たちや新選組隊士たちの群像ドラマとしての面白さは薄いように思えるものの、砲弾と銃弾の雨を前にしてギラリと刀を抜き放つ土方の背中には、“いくらなんでもそりゃムリだろ”とつっこみたくなりながらも、やっぱり胸がすくというか、ハートが震えるというか・・・。


 

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2012-07-07

新選組始末記 : 子母澤寛

『新選組始末記』 子母澤寛

 今年は、これまで敬遠してきた新選組モノを読む!と決めたのだけど、いきなり異色作品『サンクチュアリーTHE幕狼異新ー』でスタートを切ってしまったので、改めて大定番で仕切り直し。

 これまで真っ白だった私の頭の中の『新選組』の項にやっと、ざっくりしたあらましが書きこまれました。浪士隊の京入り~壬生での新選組誕生。寄集めの男たちが幕府の一組織として存在を大きくしていく過程、その活躍の数々と血なまぐさい内紛。鳥羽伏見の戦に敗れて江戸に逃れ、甲陽鎮撫隊として甲州城制圧に向かうがそれもならず、遂に下総流山で近藤が捕えられ、板橋にて斬首される。その顛末が数々の史料や書簡、当時生存していた関係者たちの話を交えて、わかりやすく構成、記述されている。

 実は『燃えよ剣』と『新選組始末記』のどっちを先に読もうかと迷っていたんだけど、こちらを先にして正解。

 
 幕末という時代や、新選組の存在自体がすでにドラマチックなのだし、ここに収められた関係者たちからの聞き書きも、繰り返し語られるうちに多少の演出が加わったりしたかもしれないが・・・ 新選組に屋敷を貸していた八木源之丞氏の次男・八木為三郎翁の思い出ばなしは、まさに小説や芝居以上に・・・。

 八木家の餅つきにひょっこりとやってきた副長助勤・安藤早太郎。「餅の合取りはうまいもんだぞ」と羽織を脱ぎ、股立ちをとって餅の合取りをする安藤を見ていた伍長の林が「八木さん、安藤は手をよく洗いましたか」というくだり・・・ 実は安藤は、芹沢鴨一派・野口健司の介錯をしたところ。

 「この男がね、今、野口さんの介錯をしましてね・・・」
 「林、よけいな事をいうな、折角忘れているものを―――」

 
 新選組の光と影をひとつのフレームに切りとったような・・・これがドラマや芝居のワンシーンとして演じられたものではないなんて・・・ むしろそんな風にさえ思ってしまう。




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