2012-02-25

マイ仏教 : みうらじゅん

『マイ仏教』 みうらじゅん

 諸行無常 諸法無我 色即是空 すべてのものは変わりつづける。不変の実態をもつものなどなにもない。

 『さよなら私』を読んだとき、「自分なんて見つけてるひまがあるのなら、少しはボンノウを消そうとする『自分なくし』のほうが大切じゃないでしょうか?」という言葉を、たくさんの「自分探し」を経てきたみうらさんだからこそ言える、良く生きていくための“生活の智恵”くらいに考えていた。それで“やっぱり「自分探し」もしないうちから「自分なくし」なんて言っちゃいけない。”なんて思っていたのだ。

 でも、みうらさんのいう「自分なくし」って、そんなレベルのものじゃなかった。「ご機嫌とり」で修行し、「そこがいいんじゃない」をお念仏とする、みうら流の仏教実践法を説く、情けないほどに優しい言葉の行きつく先には、かなり怖いヴィジョン ~ 諸法無我・・・それこそ那由多だの恒河沙だのいう単位の広大な因果の海に溶けてただよう個ではなくなった「自分」・・・そんなヴィジョンが見える。

 自分の心をがんじがらめにして苦しめるさまざまな欲望を捨てるのではなく、良いことも悪いことも色んなことを欲望してしまう「自分」をなくしてしまおう。・・・それでは、その修行が成就した暁には人ではないものになってしまう。・・・まぁ、仏教は仏になることをめざすものかもしれないけど、まさかみうらさんは成仏をめざしているわけではないんだろう。だから、人として生まれて生きていることと、一切の執着を捨てようとした釈迦の生き方とのギャップに悩んだりするんだろう。

 仮にお釈迦さんが結婚生活も子育てもキープした状態で、悟りを得たら、その後の仏教も大きくかわっていたかもしれません。



『さよなら私』感想 http://neconohitai.blog71.fc2.com/blog-entry-429.html


 

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2012-02-18

「でっけえ歌舞伎」入門 ― マンガの目で見た市川海老蔵 : 樹林伸

『「でっけえ歌舞伎」入門 マンガの目で見た市川海老蔵』  樹林伸


 私にとって、歌舞伎を観ることと漫画を読むことはほぼ同じ。歌舞伎を観ている時の感覚や生理は、漫画を読んでるときのそれとすごく近い。“歌舞伎は現代演劇よりもむしろ漫画の方に近いはず。もっと歌舞伎の世界と漫画の世界が近づくといいのに~”とずっと思っているし、“漫画の世界にある才能を活用しないなんて、歌舞伎はどうかしてる!”とちょっとイライラっとしてもいる。

 だから、海老蔵さんが新作歌舞伎のシナリオを漫画原作者に依頼したというニュースを目にした時は、“やってくれた!”とワクワクソワソワした。残念ながら、その新作歌舞伎『石川五右衛門』を観ることはできなかったんですけどね(だってチケット一般発売日には3階席は全部売り切れてたし、それ以上の席を取るのは経済的に無理だったんですもの)。

 本書は『石川五右衛門』のストーリーづくりを担当した樹林伸氏が、歌舞伎と市川團十郎家代々の歴史に関するざっくりした解説を盛り込みながら、新作歌舞伎製作の現場での出来事、体験、想いを記したものだけど、例えば、猿之助丈が「スーパー歌舞伎」創造の過程を語った『スーパー歌舞伎―ものづくりノート』のような舞台づくりのテクニカルな部分の記述はなく、普段から歌舞伎を見ている人にとっては、既に知っているような一般的な内容がほとんどで物足らないかもしれない。じゃあ、歌舞伎を観たことがない人がこの本を読んで歌舞伎に興味を持つだろうか?というと、それもちょっと・・・どうかなぁ。だって、歌舞伎を好きになるには、良い舞台を生で体験して、どデカイ衝撃を受けるしかない、と思うから。

 ・・・と言って、この本がつまらなかったという訳ではなく ~何が良かったって・・・この本に記されたような歌舞伎製作の現場があったこと。海老蔵さんが『そういう(おもしろいストーリーを作る)人材は、マンガやアニメ、ゲームなどの、今いちばん勢いのあるエンターテインメントの現場にいるんだと思っています。』と言って行動をおこしたこと。歌舞伎の長い歴史と、そこに培われてきた力を理解し、信じ、十分に敬意をはらって参加してくれた漫画の世界の才能があったこと。


 

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2012-02-11

太宰治集 哀蚊―文豪怪談傑作選

『太宰治集 哀蚊―文豪怪談傑作選』 太宰治/東雅夫 編

 「お伽草子」から「舌切雀」と「浦島さん」が収録されている。「舌切雀」の冒頭部分に、「お伽草子」の一篇として当初は書くつもりだった「桃太郎」のお話を断念したいきさつが挿入されているのだけど、何かねぇ・・・ここ圧巻。この部分を読んでいると、胸がきゅうきゅうしてたまらなくなり、いまさらながら「太宰ってモテただろうなぁ~」と思う。

 鬼ヶ島の鬼は“征伐せずにはおけぬ醜怪極悪無類の人間”であり、それは“恐怖”より“不快感”をもたらすもの~“人の肉体よりも、人の心に害を加えるもの”でなければならず(← 物質的な悪事をなすことよりも、ひとを嫌な気持ちにさせることは、そんなにもひどい悪だというのだ)、“われ非力なりと雖も”と悪辣な鬼を退治すべく敢然立つ桃太郎は無敵のヒーローではなく“からだが弱くて、はにかみ屋で、さっぱり駄目な男”として描かれるはずだった。しかし・・・。いやしくも「日本一」の旗を持つものを自分は書けぬと・・・ここからは、あれよあれよという間に暴走する「私の桃太郎物語」計画放棄の弁。

 私はここにくどいくらいに念を押しておきたいのだ。瘤取りの二老人も浦島さんも、またカチカチ山の狸さんも決して日本一ではないんだぞ。桃太郎だけが日本一なんだぞ。そうしておれはその桃太郎を書かなかったんだぞ。


 怜悧、自傷、善、自虐、ユーモア、虚勢、残酷、優しさ、困惑・・・ぎゅうぎゅうに詰まっている。そして、そのどれからも離れたところに、心がポツンといる。
 
 太宰の描く怖いものは、ポツンと漂って幽霊のような自分の、人の、世間の姿。




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2012-02-04

幸田露伴集 怪談 ― 文豪怪談傑作選

『幸田露伴集 怪談―文豪怪談傑作選』 幸田露伴/東雅夫 編

 若い頃見た映画というのは強烈に刷り込まれているもので、私の中の明治・大正の文学者のイメージには、映画『帝都物語』(原作:荒俣宏、脚本:林海象、監督:実相寺昭雄)で活躍する彼らのキャラクターがガッツリかぶっている。泉鏡花はタロットをめくる玉三郎さんで、寺田寅彦は地下都市構想を熱く語る寺泉憲であり、幸田露伴は魔人・加藤に奇門遁甲の陣で挑むオカルティスト・高橋幸治なんである。

 んでまぁ、そのイメージを抱いたまま、この『幸田露伴集 怪談―文豪怪談傑作選』に突入。

 怪談、奇談、ダークファンタジーに東洋オカルトうんちく。漢籍の知識が随所に織り込まれた、最近ではあまり出会うことのない、異様に一文が長い文体には悩まされたが、かまわず読み続けていると、あるいは近づき、あるいは遠のき、自在にゆらゆらとゆれる語りのリズムに心地よく脳が馴染んでくる。怪しいもの満載ながら洒脱な語り口~すっきりとした香気漂う読後感。


 

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