2011-09-24

柳生大戦争 : 荒山徹

『柳生大戦争』 荒山徹

 所謂元寇~二度にわたる元の日本遠征に従って敗れ、異国の海に沈んだまま未だ成仏できない自国の兵士を弔うため危険を押して日本へ渡った高麗の高僧の話から書き起こし、「檀君神話」誕生の秘密を語る第一章。時が流れ~第二章からは徳川三代将軍家光の時代。「檀君神話」の秘密を握る柳生が絡んで日朝はつばぜり合いをくり広げ、大陸では野人と蔑まれてきた女真族の国・後金~清が力を強め、中華の国・明を滅ぼさんとうかがっていた。歴史の混乱の最中、柳生の剣士たちが海を渡る。
 
 壮大かつ重厚な歴史物語にでもなりそうなところへ、ストーリーの腰と読者の顎骨を揉みまくる破壊的なネタ ~耳じゃないトコを持っていかれちゃう琵琶法師・芳一とか、乱れる家光とか、柳生友矩の美少年キラーぶりとか、チョイキャラの名前チンドンゴン・ソヨンジュン・パクビョンホンにも“!?!”ってなった~ をガンガン放り込んでくれるところが・・・やっぱり、スゴイ! 面白い! 荒山徹! どんな状況にあろうとも、ほげっと鼻毛でも抜いてそうなキャラクターながら、ひょいと核心をつく柳生十兵衛も素敵。

 日本~朝鮮半島・中国の歴史に関して啓蒙的なものも含みながら、やはり基本はエンターテイメント。あまりの面白さにヒーヒー言いながら読んだ。




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2011-09-17

鼓笛隊の襲来 : 三崎亜記

『鼓笛隊の襲来』 三崎亜記

 赤道上に発生した戦後最大規模の鼓笛隊が列島を縦断する。本物の「象さんのすべり台」が建つ郊外の分譲地の公園。家のどこからも辿り着けなくなった二階の窓に見える夫の姿。そこにあるのに誰にも見えていない校庭の中の家。「日常」の裂け目を押し広げる奇想の短編集。

 自分の持っている記憶が本当のことで、それが不変であるとは限らないということ。隣にいる人と同じものが見えているとは限らないということ。世界の秩序はぐるりと変わってしまう可能性があるということ。そこにあるものが見えず、ないものが見えることがあるということ。・・・それは色んな人が言っている。いろんな本で読んだ。でも、私はまだそこまで追い詰められてはいない。だから本当にそうなのかはわからない。でも、やっぱり・・・それは、そうなのかもしれない。

 直視するのは怖ろしく、とりあえずは直視する必要もなく、ただ視界の端を何となくよぎる~そんな日常の中の異物・不穏。「日常」の危なっかしさにさらされる作中の人物たちの、諦めと強さの混ざった不安定な心持ちに、さぁ~っと皮膚をなでられたような・・・感じ。




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2011-09-10

ペンギン・ハイウェイ : 森見登美彦

『ペンギン・ハイウェイ』 森見登美彦

 小学四年生の「ぼく」が住んでいる郊外の街には、コンクリートで四角く区切られた土地にレゴブロックで作ったような家が並び、まだ家が建っていない空き地では草が風になびいてサバンナのようだ。「ぼく」が通う歯科医院の待合室は宇宙船の発着所のようで、「ぼく」と仲の良い歯科医院のお姉さんには謎が多い。

 そんな「ぼく」の住む街にある日突然ペンギンが現れた。しかも、そのペンギンたちは、歯科医院のお姉さんと関係があるらしい。日々世界について学び、将来きっとえらい人になるであろう「ぼく」は、ペンギンの謎について研究を始める。


 田圃のあいだを縫い雑草の茂る空き地を通過して小学校の裏の小さな藪まで続く道や、川を渡る鉄橋の脇についた作業員用のものであろう金網製の通路、そこから先には歩いて行ったことのない道の向こう~もう随分昔、小学生の頃に見たそんな風景が脳裏をよぎる。小学生の頃の私は、「ぼく」のように世界の果てについて思いを巡らせることはなかったし、色んなことについて自覚的ではなかったけれども、当時の私は、多分「ぼく」が見ているのに似た、一つ一つがとても瑞々しい「世界」を見ていた。それは今の私が見る風景とは何か決定的に違う。

 「世界の果てを見るのはかなしいことでもあるね」


 そんな瑞々しい世界のただ中にいる「ぼく」をまぶしく眺めた。




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2011-09-03

恋する物語のホモセクシュアリティ : 木村朗子

『恋する物語のホモセクシュアリティ―宮廷社会と権力』 木村朗子

 中世の宮廷物語に、それほど男同士、女同士の関係が描かれていたなんて。

 本書を読んでみようと思ったのは、実は『平家物語』を読んだことがきっかけで・・・。『平家物語』では、男と女の関係よりも、男同士の関係の方がベタベタしてるというか・・・何だか男同士の関係への執着の方が強いんじゃないか?と感じられたので、その訳の一端でもわかるかな?と期待して読んでみたのですが・・・


 帝の子を産むことが権力の奪取に直結する宮廷社会。しかしそこには、男女の差に先立って階級差が存在し、性の関係においては「子を産む/産まない」ではなく、「権力を生む/生まない」ということが問題とされる。そのような「権力を生む性」のシステムを持つ宮廷社会の中に描かれる様々なセクシュアリティ。そこではセクシュアリティは個人のアイデンティティに関わるような固定されたものではなく、システムのどの位置に配置されるかによって、その機能、意味に流動性を持つ。

 ・・・う~ん、実は私、「ジェンダー」「セクシュアリティ」という言葉を字面では見たことがあっても、その意味するところをきちんと体得できていないのだ。つまり、私にはピンとこないことが多かったってこと。 

 本書で試みられたのは、宮廷社会を舞台にした物語に描かれた様々なセクシュアリティをとりあげて、男女/男同士/女同士の関係とそこに垣間見える欲望について、なんらかの結論を導き出すということではなく、「ジェンダー」や「セクシュアリティ」にまつわる研究のフィールドに、「男/女」の別や「ホモ/ヘテロ」の差を個人のアイデンティティーに関わって固定されたものとしてとらえない新たな視点を持ち込むことであったようだ。




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