2011-03-30

聖母の部隊 : 酒見賢一

『聖母の部隊』 酒見賢一

 “敵”に村を襲われ両親を殺されたぼくたちの前に現れたきれいな女の人は、自分を“お母さん”と呼ばせて、ぼくたちにこのジャングルの中で戦う技術を教え込んだ。(「聖母の部隊」

 「地下街」「ハルマゲドン・サマー」「聖母の部隊」 三つの中・短篇を収録。(ハルキ文庫版にはもう一つ短篇が追加されているらしい)

 これは、男の子向きの作品でしょうか・・・。世界の終わりに、強気で甘えん坊な女の子から延々責めたてられた末に「ほんとは、あなたが、好きだったの・・・・・・」と告げられても、嬉しくも悲しくもないし、“敵”がうようよするジャングルで、極限状態の中“お母さん”と共に戦い抜いた少年達の恍惚なんてとてものこと理解も許容もできそうもない。

 歩く殺戮兵器のような二人のエージェントが、平和な日本の地下街に潜む“悪の巣窟”の掃討戦を繰り広げる「地下街」・・・コレは虚構か現実か、プログラムミスだらけのゲームの中か、それとも閉ざされた部屋の中で夢見る誰か妄想なのか・・・ 読み進める毎に、ヒザが“かっくん”となりつつも、これが一番楽しめた。だって二人のエージェントの無茶苦茶な設定が、ねぇ。

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2011-03-26

シティ・マラソンズ : 三浦しをん・あさのあつこ・近藤史恵

『シティ・マラソンズ』 三浦しをん・あさのあつこ・近藤史恵

 ニューヨーク、東京、パリ・・・沢山の人々が暮らす街。大都会の風景の中を、それぞれに“走る”人。

 スポーツ用品メーカーのWEBサイトに掲載された作品ということで、事前にそういうオーダーがあったものか、三作品とも、『競技生活に見切りをつけ新たな生活をはじめたものの、何か消化・昇華しきれない思いと喪失感を抱えるかつてのアスリートが、“走る”という行為に改めて触れることで、これまで見えなかった世界を感じ、驚き、新たな息吹を吹き込まれる』~という判で押したような展開で、驚きには少々欠ける。

 しかし、“走る”肉体を、“走る”ことを介して生まれる人と人の繋がりを、シンプルに、純粋に“美しい”と感じさせてくれる点ではさすがなのだ。特に、(『風が強く吹いている』のイメージがまだ強く残っているからかもしれないが)三浦しをんの書く“走り”はのびやかで、美しく、感動的だ。

 ・・・とか何とか・・・“走る”どころか、電車のホームの階段を駆けあがっただけで、その日一日具合が悪くなってしまうような私がこんなことを言うのは、我ながら嘘臭いというか、白々しいというか、薄っぺらいというか・・・何とも後ろめたい気もする。

 でも、だからこそ私にとって、“走る”ことを愛し、“走る”ことが幸福とつながっている人類の存在というのは、畏敬の念を抱いて見上げる決して届くことの無い領域のお話で、夢と驚きと祈りと祝福と、それをすべて包み込む美しさに満ちているのだ。


 

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2011-03-09

流水桃花抄―橋本治掌篇小説集 : 橋本治

『流水桃花抄―橋本治掌篇小説集』 橋本治

 『流水桃花抄』・・・この美しいタイトル! きっと流麗な言葉で紡がれた繊細可憐な世界が・・・と期待をしていたのだけど、そこには「マタンゴを喰ったな」とかいう小品が収められており、「マタンゴ」を「またんご」と書くと更に気持ち悪い・・・とか書かれているのだ。

 意地悪くて支離滅裂で毒々しいけれども他愛なく、ありえないけど妙に生々しい、やけに鮮烈なイメージを放つ小品群。人を食ったような不思議世界に、“何だ、コレ?”と首を傾げ、目を凝らした瞬間、奇想の落とし穴にズボっと足をつっこんでいるのだ。

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2011-03-05

のぼうの城 : 和田竜

『のぼうの城』 和田竜

 石田三成率いる圧倒的大軍に小勢で立ち向かい唯一落ちなかった城~総大将はでくのぼうの“のぼう様”。

 “忍城は落ちない”と分ってるから安心して読める。ってこれ、いいことなんだかどうだかよく分らんけど。地の文も武将たちの話す言葉も、とても現代的にくだけているので、時代がかったトリップ感を味わうことはできないけれど、損得勘定なんて蹴っ飛ばして心のままに立ち上がる“も~、馬鹿ばっかり!”な男達の戦ぶりは爽快で格好良い。(“のぼうマジック”によって、武将たちの自己満足に、いいようにまきこまれてしまった領民は気の毒だが。)

 ストイックな猛将~“漆黒の魔人”・正木丹波、豪快で腕力先行な柴崎和泉、小生意気な若造だけど実は頑張り屋~毘沙門天の生まれ変わりな僕ちゃん・酒巻靭負。それぞれにキャラのいい忍城の武将たち。“漆黒の魔人”が咆哮し、朱槍を横殴りに一閃すると敵方の首が一気に五つも宙に飛ぶというアニメ的な見せ場も・・・嫌いじゃありません。

 これ、実写映画よりむしろアニメの方がいいんじゃない? 萬斎さんの“のぼう様”はもの凄く楽しみではあるけど。

 ・・・“のぼう様”・・・晴れ晴れと終わるお話の中で、彼だけが・・・最後まで得体が知れない、そんな一抹のどす黒さを残すのよねぇ。何事にも不器用で、ぼんやりとした顔をして、領民には迷惑がられながらも慕われ、自己主張の激しい武将たちをもなぜか惹きつける“のぼう様”。穏便に開城するという道もあったのに、彼の純粋すぎる一言が戦の口火を切ってしまう。

 ただ心のままに振舞う赤子なのか、人を人とも思わぬ悪魔なのか ~どちらでもあるし、どちらもあたらない・・・。誰も“のぼう様”を理解していないのに、誰もが“のぼう様”の思う通りに動いてしまう。到底、底の知れぬ男。


 

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2011-03-02

ゴドーは待たれながら : いとうせいこう

『ゴドーは待たれながら』 いとうせいこう

 待ち続けるウラジーミルとエストラゴン。待たれ続けるゴドー。

 『問題は……誰が……いつ……どこで待ってるかということなんだが。』

 “待つ者”がいなければ、“待たれる者”は存在しない。待っている人は本当にいるのか。約束の時は過ぎてしまったのか。それとも、今この時も待たれているのか。行かなければ。しかし行ってしまえば、もう“待たれる者”ではない。 
   
 『待つ者が死に絶えてしまった後の救世主』『果てしない宇宙の中に、たった一人で暮らしている神』

 宇宙そのものである者は何も見られない。
 絶対の存在はなにも認識できない。
 つまり……馬鹿同然だ。


 俺は一体誰に待たれているのだ。待たれている俺は誰だ。待たれている俺には“待つ”という希望さえ無い。

 進むべきルートの一つ一つが不可能性に塗り込められていく。逃げ場の無い袋小路。ぐるぐる繰り返される自問自答。問えば問うほど可能性は消されていく。どこにも行けない。何も起こらない。自縄自縛。

 ・・・しかし、実はこれは非常に巧妙な騙し絵なんじゃないかと思いたい気もして・・・ 何か一つ、見落としてるんじゃないか。とても決定的な何かを。見落としているその一点さえ見つけることが出来れば・・・ 「な~んちゃって!」とすべてが冗談に変わるんじゃないか・・・ とか・・・




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