2010-06-30

エセ竜馬かぶれ その4 ~ 龍飛騰 : 義澄了

ryuhitou
 1986年の発行だから、もう20年以上も前の作品。発行当時に読んだ時も、画面からはみ出しそうな男たちの勢いに、“面白い!”と夢中になったが、今読んでもやっぱりこれは竜馬モノ、いや維新の群像ドラマの傑作! 

 作者があとがきで「私が竜馬を描くのは、彼をだしにして、多くの人達を描けるからです」と語る通り、中岡慎太郎、武市半平太、勝海舟に千葉道場の若先生、佐那、長州の桂、高杉、久坂、薩摩の西郷はもとより、・・・いやむしろ彼ら以上に竜馬の海軍塾や亀山社中に集まった数多い若者達の青春が描かれる。

 改めて読んでみると『竜馬がゆく』を下敷きにした部分が多いことに気付くが、竜馬を中心に倒幕への流れをコンパクトに再構成したドラマづくり、そして何より、そのドラマの中で、笑い、怒り、泣く、男たちの表情の愛しさ、駆け抜けていく姿の爽快さは義澄了のオリジナルな魅力だろう。

 長州と朝廷の行く末を思い血涙に咽ぶ久坂玄瑞、紋服に白鉢巻、丙寅丸の上で軍扇をふりかざし大口をあけて笑う高杉晋作、各地の戦場を元気に飛び回る池内蔵太、吼える中岡慎太郎、懸命に武市の、竜馬の後を追う岡田以蔵、望月亀弥太、小言屋の陸奥陽之助。 ~ とにかくみんな暴発寸前の若者達ばかりなのだ。大きく流れを変えていく時代の中に飛び込み、沸騰する命を抱えてつんのめるように走っていく。

 竜馬の“男たらし”ぶりが微笑ましく、竜馬の周囲で泣き笑い、パチパチと弾けては花火のように幕末の空を彩って散っていく若き志士たちの、あまりに賑やかで生き生きとした“ありし日”に目頭が濡れる。

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2010-06-26

エセ竜馬かぶれ その3 ~ サカモト : 山科けいすけ

 数年前に出版されたコミックを再編集し、“龍馬ブーム”に便乗して刊行された(オビにちゃんとそう明記してある)幕末4(8)コマ漫画。『竜馬がゆく』と並行して読むと、『竜馬~』の溢れるドラマティックさと、ちょっと気になる啓蒙臭を、ほど好く中和してくれてバランスがいい。

 日本サイズに収まらない視野と知識が“トンデモ”領域に及んでしまった勝先生と龍馬。自分の金○にぞっこんな西郷さん。とにかく人が斬りたい血色の良い沖田。沖田に迫る土方。土方に迫る近藤。いいカッコしたい高杉。用心深すぎる端正なデブ・桂小五郎。ギャグな絵柄になっても、みんな妙にナルシスティック。自分大好きな男たち。


 可笑しいといえば、可笑しい。でも『竜馬がゆく』にも描かれた幕末人たちの無茶苦茶さを思い返すに、高杉のテロリストぶりや、桂のムチャな変装ぶりもあながちマンガ的誇張とは言えないような・・・。幕末、恐るべし。

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2010-06-23

エセ竜馬かぶれ その2 ~ あざ : 茶屋町勝呂

aza 龍馬史上最高の美男子ぶりなんではないだろうか? 

 でかい図体をした龍馬がかわいい。かわいくて、強くて、優しくて、美男子で、そして時々寂しそうな目をする。おりょうでなくとも離れられんわなぁ・・・。

 フェロモン垂れ流しな龍馬は、ずっと見ていたいほど魅力的だけども、お話はどろどろとした情念の世界で・・・日本中をエネルギッシュに飛び回る、胸のすくような龍馬の活躍ぶりは見られない。描かれるのは、おりょうという一人の女にとっての“龍馬”。龍馬の活躍は、置いて行かれるおりょうの寂しさの中に覗えるくらい。

 しかも、物語前半で龍馬は暗殺され、舞台から退場。後半は、龍馬を失ったおりょうと、龍馬を狙っていた刺客「狗」 ~ 二人の人物の、もっぱら心のドラマとなる。こうなってくると、おりょうの情の濃さがけっこうしんどい。

 どんな形にしろ、も少し龍馬を見ていたかったなぁ・・・。せっかく、慎太さんも良い漢なのになぁ・・・ 

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2010-06-19

エセ竜馬かぶれ その1 ~ 竜馬がゆく : 司馬遼太郎

 竜馬に憧れているわけでも、心酔しているわけでも、竜馬を愛しているわけでもないが・・・“竜馬もの”の作品は面白いと思う。この際、竜馬ブームに踊らされてみようじゃないか。まずは、“竜馬もの”のバイブルのようなこの長編から・・・。

 司馬遼太郎がこの小説を書くまでは、坂本竜馬ってそれほど愛される存在では無かったという話も耳にするので、(と言っても、私はシバリョー以前の竜馬を知らず、何とも言えないが・・・)、おそらく発表当時、同時代の志士たちと比べても際立って斬新な価値観と時代感覚を持つ竜馬という男の存在と、その鮮やかな生き様を描く著者の筆は、奇跡のような幕末史の一幕へと読者の目を開かしめ、その胸を熱く高揚させだことだろうが・・・今となっては、何となく漂う啓蒙臭、ドラマに盛られた著者の主観や見解が少~し臭う。

 とは、言いながら・・・溢れる想いを乗せた著者の言葉には、思わず顔がほころんでしまうようなところも・・・。

 『勝には、妖精のにおいがする。』

 先進的な知識と智恵と共に、江戸っ子らしい軽やかさと悪戯っぽさを持ち、幕臣でありながら、討幕を期する竜馬を可愛がり、多くの人に引き合わせ、結果的に時代の大きな節目を演出した勝海舟。知ってか知らずか、時代の中でそういう役を振られた勝という人物への、著者の深い感嘆が、“妖精”という言葉となって溢れたのだと思うと、微笑ましいと同時に、何か厳粛なものをも感じずにはいられない。


 さて、幕末の風雲の中を“竜馬がゆく”のであるが、物語はすでに誰もが知っている通り。

 序盤・・・武市半平太、桂小五郎ら並んで、剣術使いとして名を馳せる竜馬。剣士としての竜馬の強さは凄まじく、後の激烈な世情の中、命をつないでおれたのは、この剣の腕もあってのことかと思わせる。

 中盤・・・神戸海軍塾~亀山社中の設立と、進むべき道は見つけたものの、手に入れた船を失ってばかりいる、まだ翼を持たない臥竜。

 物語半ばまでは、竜馬の活躍よりも、時流を牽引していく長州の凄まじい狂乱ぶり・暴発ぶりがドラマの中心となる。その悲壮なメチャクチャさには開いた口がふさがらない。よくまあ、この状況に一応の収拾をつけたものだ。
 
 薩長同盟のあたりからの竜馬の活躍ぶりは、人間の域を遥かに超えて神憑り、まさに鬼神の如くである。大政奉還の後、間もなく彼の命が終わったことを思うと、“いかん”と思いつつも、ついセンチメンタルになってしまう。あるいは、竜馬も天が下したいっぴきの妖精だったのか? かなり魔性めいた妖精ではあるけれど。

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2010-06-16

自己流園芸ベランダ派 : いとうせいこう

 『ボタニカル・ライフ―植物生活』に続く、植物との生活エッセイ第2弾。

 前作に溢れていた、こちらまで浮き足立ってしまうような「バタバタ感」は薄れた感じ。40代に達した男の落ち着きなのか、10年を超えたベランダーとしての経験の為か、それとも文字数や文章のフォーマットが定まった週一の連載モノという体裁のせいか。どれもあるけど、それだけでもないような・・・

 相変わらず、植物が放つ魅力に抗いきれず、色々な鉢植えを景気よく買っては、よく枯らす。植物が起こす奇跡のような変化に唖然とする。決して思い通りにはならない植物たちの生に閉口する。植物たちへの残酷な無関心を発揮するかと思えば、一転、身を揉むような心持ちで完全介護体制を敷いたりする。

 一見、未熟な人間と、偉大で奔放で気難しい植物の関係は変化していないように見えるのだけど・・・ やっぱり何か変化してる。せっかく自宅に招いた植物たちとの距離感にひたすら戸惑う、『山賊と攫われてきた美女』のようだった両者の間に、微妙な(一方通行かもしれないけど)信頼関係が生まれているような。

 時に気心の知れた同居人であり、時に傍若無人な闖入者であり、時に手のかかる幼子であり、時にご近所トラブルを起こす隣人であり、時に生活に潤いをくれる美女であり、時に離れていても心の通う友人であり、そして、絶対的に異次元の生命である植物たち。

 命の在り方としては全く異質で、決して踏み込めない領域を保ちつつ、互いに関り合っている植物と人間 ・・・ いとう氏が体得しつつある、植物との間の呼吸のようなものが、驚きと落胆と喜びに満ちた植物との生活を語る文章の中に、どこか内省的な落ち着きとなって漂っているのかも。

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2010-06-12

ボタニカル・ライフ : いとうせいこう

 ベランダー(※)の一人称は「俺」である。
  ※ベランダで植物を育てる都市生活者。広々とした庭で植物を丹精するガーデナーとは一線を画す者。

 「俺」は植物を愛でる“いい人”でもなければ、植物たちにとって優秀な育成者でもない。『山賊が美女でもかっさらってきたかのように不器用に、そしておどおどと植物を見つめる』無骨かつ未完成な自分の在り様を「俺」という一人称で表明する。

 都会暮らしのベランダの上で、鉢植えたちのわがままな王であり、同時に下僕でもある「俺」。気が付いたら植物たちに夢中な日々を、ハードボイルドな諧謔味をもって綴ったベランダーの手記。


 植物と暮らす日々の驚き、不測の事態を前にした戸惑い、奔放な植物達への苛立ちと妬み、自らの無力さ、こみ上げる感動、降りそそぐような悦び ~ 何より魅力的なのは、それらのことを一気呵成に書いていく言葉のリズム。ほとばしる言葉の疾走感に、あっと思う間もなく“ぶぅんっ”と意識を持っていかれている。そして、『ノーライフキング』で、現実と小説の区別がしばしつかなくなってしまったように、『見仏記』で一緒に旅したように、今回もまた、せっせと鉢植えの世話をするいとう氏の背中をずっと見ていた。

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2010-06-09

アタとキイロとミロリロリ : いとうせいこう

 アタちゃんは2歳の女の子。

 私は、小さな子どもと一緒に暮らしたことはないけれど・・・突然くるっと回ってみたり、大っきな声を出してみたり、何かをじ~っと見ていたり、よくまわらない舌で止まらないおしゃべりを始めたり・・・ちっちゃな子がアウトプットするものって何だか突拍子もなくて、そのアウトプットに到る回路を想像しては、不思議に思う ~ 「ん~ この子の中は今、いったいどんなパラダイスな状況になっているんだろう?」って。(頭の中にパラダイスがあるのは、小さな子に限ったことじゃないかもしれないけど・・・)

 そんな、アタちゃんの中のパラダイス ~ ママと一緒に、ネコのキイロや携帯ラジオのミロリロリを連れて遊びに行く昼の公園と、お家の中でぎゅっと目をつむると見えてくる“夜の公園”での色んな出来事。

 大人にも見える“本当のこと”しか起こらない昼の公園でも、アタちゃんはキイロとお話ができるし、ミロリロリはアタちゃんに歌を歌ってくれる。“本当のこと”は入ってこれない、アタちゃんにだけ見える“夜の公園”では、シャボン玉になって飛んでいったアタちゃんのタマシイをキイロが追いかけていたり、ミロリロリとウサギのチロに囃されながらキイロが初めてのすべり台に挑戦していたり。

 昼の公園の出来事も、夜の公園で起こることも、アタちゃんの世界では全部本当のこと。でも、アタちゃんにはちょっとだけわかってる。大好きな“夜の公園”と、もうすぐお別れすること。アタちゃんは大きくなって、みんなが小さくなっていくこと。
 
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2010-06-05

鬼神の血脈 : 榊原史保美

 文楽界の名門・松上一門の内弟子~魔的な魅力を持つ美貌の人形遣い久竹澄生が一門からの独立を発表したその夜、松上家の御曹司九四郎が惨殺された。現場に残された“オニ”の血文字はダイイングメッセージなのか。

 刑事・片平壮介が殺人事件の捜査を進める同じ頃、双子の弟・雑誌編集者の成見有介は大分・二上山に鬼神信仰を守る一族の里を取材していた。それぞれの調査を進める壮介・有介兄弟の前に妖しくその姿を見せる“鬼”。

 メインキャストには冴え冴えとした美貌の青年達が惜しげもなく投入され、さらにその美青年達が皆、古典芸能の名家や巨大企業の御曹司だの、かつて栄華を誇った旧家の直系だのというのだから、色んな意味で「ぅっわ~」と・・・こみ上げてくるものに胃のあたりを押えてしまう。 

 その信仰故に弾圧され、凄惨な悲劇に見舞われ続けてきた一族の妄執が、事件の背後におどろおどろしく蠢く ~ 伝奇的な雰囲気は十分なのだが、事件の鍵を握る人物たちが初めから限られた人間関係の中に見えていて、事の真相にほぼ最短距離で到ってしまうストーリー展開は、ミステリーとしての意外性も、主題である鬼神の姿をゆらめき立たせるための語りとしても少し弱いのではないかと感じてしまう。

 ただ、物語終盤で明かになる鬼神の正体 ~ 自らと同じ姿を持った半身に焦がれ続ける美しい鬼、多くの生贄の上にただ自らとその半身のみで完成された世界を夢見る二人で一体の神であるもの ~ は、「耽美」の名にふさわしく圧倒的に残酷で甘美なものだった。 

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2010-06-02

蘭陵王 : 田中芳樹

 そのやさしげな美貌は、戦場にあっては味方の士気を下げ、敵からは侮られるため、恐ろしげな鬼面をつけて戦ったという猛将・蘭陵王。若く美しく高潔な蘭陵王・高長恭の活躍と、それ故に皇帝から憎み疎まれ迎えた悲劇のお話。

 それにしても、中国はネタの宝庫・・・というと言葉が悪いが、正史を読むとそこに膨大な物語が広がっているんだろうなぁと、その果てしなさにちょっとクラクラしてしまう。

 血に煙り、屍に埋もれた戦場と、乱れ、腐敗し、ただ自壊への道を堕ていく朝廷の中にあって、美しく、強く、気高い蘭陵王の姿はひときわ輝くが・・・あまりに堅い男すぎて面白味に欠ける気も・・・。

 皇族でありながら隣国のどんな武将・知将も敵わぬ強さにあれだけの美貌・・・もうちょっとダークなとことか、崩れた部分があったりすると、さらに魅惑度アップなんだけどなぁ。

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